370話:引きこもり聖竜は驚嘆する。4
――俺の身体をあらためるって、ガチじゃん……。
隣の病室は開いていたのでそのまま連れ込まれてしまったのだが。
『ふむふむ、ずいぶんと傷だらけの裸体じゃの……』
予想は的中。俺は今から半裸の状態で、モンスターであり、聖竜である彼女が擬態している人の姿とはいえ女性なわけで。
「あ、あまり触れられるとこっ困るんだけどな……」
『何を申しておるのじゃ? 至って普通の事であろう。触診は一般的な医療術じゃ。知識のある者がこうやってお主の身体を手で触れれば。何故に吸血病に罹ってもあの者のようにはならず。無症状で済んでおるのかがよく分かる筈じゃ』
――だからと言って変な触り方をされるとくすぐったいんだよ。
とは素直に言えないので、俺はその場の流れで気持ち的に我慢をした。が、
『うむ、上半身には異常は見られないの。ならば下半身はどうかの?』
「おいおいおいおいおいおい!!!?」
成り行きに任せすぎてしまい、俺の貞操とかがやばい事になりだしてきた。
――リリィにこんなの見せられないっ!?!!?
俺の嫁以外のヤツに、上半身は許しても下半分は許せなかった。
「俺の下半身に何の用だっての!?」
『単に触診の続きじゃが?』
「どっこ触ろうとしてるかと我慢しながら見てたけどさ。いくら何でも俺の息子をいきなり触れてこようとするのは如何なものかと思うんだけどなっ!?!?」
――あっ、ちょっと拗ねたな。
ちょい不満げな表情をして顔を背けると、ヴラドは鼻をフンと鳴らす。
『何を気にしておるのかはよく分からんが。メスの我に触れられて悦びを感じたくはないのか?』
愛情表現がセンターを越えて場外ホームランをしていた。
そんな彼女の言葉に頭を抱えつつ言い返す。
「あーっ、とりあえず触診とか診察はいいだろ。んで、俺の中で悪さをしている吸血病の治療法はどうするんだ?」
『我とつがいの契りをこの場で交わすか。血の契約を交わすか。どちらがお好みじゃ?』
「はっ?」
思わずして開いた口が塞がらなくなり、その場で思考が停止した。
――……えっ、それはつまりアレをするか、ヴラドの血を使った儀式的な何かをするってことか????
俺も一応は所帯を持っている身だ。大人である事は理解している。
「ちなみに……血の契約って何をするんです……?」
『えらく急に下手に話し出すの。うむ、本当は気持ちの良い方法が最善だと思い、情けの積もりでしてやろうと思ったのだが。どうやらお主は痛い方が好みらしい……』
そう言ってヴラドは俺の前でこめかみに両手の人差し指を押し当てて悩む仕草をとるので。
「……痛いってまさかこの場で戦うなんてしないだろ?」
『そんな事をすればこの街が滅ぶし。アルシェがガチで激昂しかねん。あやつだけは怒らせてはならんのじゃ……』
――あ、普通に戦っても病気は治せるのか。
って、話を聞きながらどちらでも良かったのかと納得して思いつつ耳を傾ける。
『とりあえず血を入れ替える施術をする事になる。場合によっては我の血に適合せず。激しい苦痛を伴った副作用の苦しみを長時間にも渡って受ける事になる』
「失敗したらどうなるんだ?」
『先がわかっておると思うが、死があるのみじゃよ』
「わかった。それでも治せるなら問題ない」
『覚悟は……、その顔じゃと本気のようじゃな……』
――ここで病で死ぬわけにはいかない。なら、優先すべきなのはひとつだけだ。
「ああ、とりあえず何をすればいいのか教えてくれればそれに従う」
『……わかった。ならば我も本格的に立て続けにはなるが。レフィアにもした血液循環浄化法での治療にあたろう』
お久しぶりです。GA文庫の選考で落選したので一段落がつきました。後程、落選した作品を新規で公開しておきますので、お暇なときでも構いません。是非、新作の物語に足を運んでいただけたらと思います。
今後の更新は数日間隔で投稿します。バックで新規の選考用作品を製作している関係でそのようにさせて頂きます。今後とも異世界ハンターをよろしくお願いします。




