369話:引きこもり聖竜は驚嘆する。 3
--レフィアさん。無事であって欲しい……な……。
彼女の病気の進行が予想よりも早く、人としていられるのも数えて後2時間が限度だった。それだけ彼女の罹る吸血病に対して持つ耐性の低さが窺える話だ。
『安心しろ。我が来たからにはこのものの体に巣食う病を解いて見せようではないか。見る限り、傾向摂取による感染が原因だとわかってあるから対処法はある』
具体的にどのようにするのかと聞くと、ヴラドは俺たちを部屋から追い出させて。
『こういうのは女の秘密というものじゃよ』
「あ、えっ?」
人差し指を立てて唇に添えると、ヴラドは片目を瞑り悪戯な表情で部屋のドアを閉めてしまった。
--かれこれ2時間か。そろそろ終わってもいいだろ。
体感的に長いようで短い待ち時間を部屋の前で立ち続け、腕に身につけていた腕時計を見ていろんな事を思い、俺はレフィアさんの元気な姿が見れる事を待ち望んでいた。
『終わったぞい』
ふと扉が開いたので前を見ると、医療服姿をしたヴラドが口元のマスクを外して第一声に治療を終えたことを伝えてきた。
「どうだった……」
『うむ、安心せい。いまは面会謝絶で安静にしておくのじゃ。彼女の身体的な状況もあるからの』
――身体的な状況ってどういう事だ……?
と聞かされて首をかしげつつ次の話に移る。
「病気は完全に治ったと思っていいんだよな? アルシェには報告しておかないといけないんだ」
ネメシスの重要ポジションであり、最高峰の戦闘能力を持つ彼女の復帰が望まれている状況だ。
『それも大事な事じゃが。まずはこの病の根源を探らなければならぬ。お主の思い当たる出来事などがあれば話してもらいたい』
じっと竜の眼差しを送る彼女に対して、俺はできる限りの事を話していった。
『そうなるとラパンという者が怪しく感じるわけじゃな。だが、ただ単に料理を楽しんだ割りにはお主と患者であるレフィアでの差がありすぎる。お主の身体をいちど改めなければならぬの』
「えっ、今から?」
『うむ、ここでは話の都合がわるくなる。隣の部屋で二人きりになろうではないか』
「あ、えっと」
そのまま彼女に腕を捕まえて、俺は隣の空き部屋に連れ込まれてしまった。
次回の更新予定日は1月14日です。よろしくお願いします。
 




