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361話:百鬼龍ヴラドヴァンプからの試練 2

『さて、ここでいいだろう』


 俺達を乗せて降り立った場所をみると。


「山のテッペンにある広場か。人工的な廃墟の建物もあるが、ここは一体どこなんだ?」


 中世ヨーロッパの文明的な要塞城の廃墟が目の前を囲むようにして広がっている。


『ここもまたかつての国の象徴であった場所じゃった建物だ。我が降り立った王国は相当な軍事力を持つ大国としても知られており、周辺国家は恐れを成すばかり。他の領地を我が物にしたいと願う当時の王族は容赦のない侵略行為をしかけるまでに到った。当時の我も空高くからその惨事の有様をみておった。そして死を迎えて天に召されていくモノ達の嘆く声も耳に届いておった』

「そっか、お前がいることで死んでいった人達が無事に天に浮かばれる事になるのか」

『うむ、我がいることで魂は。我の身体を通して出て行くことによりその御霊は曇りない純粋なるモノとなる事で、来世では安泰を約束されるのじゃよ』


 二足歩行で出で立ち、ヴラドヴァンプは頭を垂れ下げて俺達に話しかけてくる。


――それが何のつながりがあるんだ?


『そして気づけば我も見過ごせぬような所業を成そうとする王族の悪行を知る事になった。自然の摂理に反した大量虐殺を試みる実験を我は許せない衝動に駆られ、王城に降り立つことを決意した。神がこの世界に定めた。1度に死ぬことが許されている魂の量を超えた恐ろしい残虐行為を我は。神と出会いし刻に下された使命を全うする事でそれを阻止する事に成功した』

「神、この世界にはそういった概念が存在するのか」

『その口ぶりからしてお主は信じぬ者。あるいはそれを知らぬ者なのか』

「あいにく予備知識がないんだよ」

『神は言っている。ここで生み出されている兵器は人間には到底扱えぬ代物であると。どのような魔物よりも、欲に駆られた人間の方が何倍も恐ろしいのぉ』

「俺は違うと言いたいが。将来はあり得るのかもしれない」


――その為にも備えて自分を磨き上げなければならないな。モンスターテイマーとしてあるべき正義は何なのかを知っていかないといけない。


『ならば尚更お主にかけられている呪いを解くすべを我が直々に教えてやろう。その前にだ』


――それってつまり。俺の探し求めているレフィアさんを蝕んでいる病の寛解に繋がるのでは。


「試練を受けたい。あんたの竜の叡智を俺にくれないか」

『ふん、そうは簡単にお主の望むような結果が得られると思うなよ小僧よ。我は死を操る竜じゃ。どの一撃も死に到る。再挑戦は認められぬ。アルシェはそれを望んでおるぞ。あの小娘が見入った人間の戦士よ。お主は魔物を統べる王になれる資質がある存在じゃ。この竜賢のヴラドヴァンプをひれ伏せるほどの力があるのか。見定めてやろう』


 すかさず俺はホワイエットに号令をかけると共に間を明けて弓を構えるモーションをとる。


「現れよ、神の弓ウーサ!」

『ほう、それは十二獣の英雄がひとりの所有する武具か。どうやら我もお主を侮ってはいかんことを理解できた』


 俺達を威圧するように頭を天にまで上げ、両翼を大きく拡げると共に唸り声を上げて威圧してきた。


「さあ、いくぞヴァンプ!!!!」

『神殺しの弓を操りし者よ。貴様はその力で我を倒せるか』


 一瞬、リリィと息子の姿が頭の中で浮かんだ。


「俺は、愛する人達の為にこの弓でお前を倒す!!!!」

『愛、なるほど。お主にはつがいの存在があって。今の原動力になっていると。うむ、よき考えじゃ。なら証明をしてみろ』


――なんだあの咆哮はっ!?


 黒き瘴気を纏った稲妻でほとばしる極太の破壊光線が自分に降りかかる。


「させないよ!」


――ホワイエット! そうか、アルシェさんが助言していた理由はこうか……!!


 死を操る、つまり闇を主軸にした戦い方をする相手に対し。


「私はご主人を守る為に。一生懸命に戦うんだっ!」


 肩に掛けたバーズーカー砲で放たれる白き破壊光線が相殺する形でぶつかった。


「ホワイエットは聖なる竜の末裔だよ! 闇を打ち払う為にホワイエットがいるんだから!」

『よき主人に出会ったようでなりよりだ聖なる竜の子よ。我もお主を鍛え上げよとアルシェから言伝されておる。いづれその力がこの世界の均衡を崩そうとする存在達を挫かせ退ける竜になれるであろう。聖竜の末裔ホワイエット。この戦いでお主は何を思って戦うか』


 その一撃からの問いかけに対してホワイエットは真剣な眼差しと共に答えを返す。


「ホワイエットは大好きな人の為に戦う竜になる! それ以外なんてあり得ないの!」


 という解答に対して対話をしているヴラドヴァンプはポカーンとしつつ。


『ふぁぁっふぁっふぁっふぁっ!! これは実に奥ゆかしい考えじゃ!!』


 腹の底に響く笑い声をあげた後に、ヴラドヴァンプは襟を正す。


『では、ここからが我の模擬戦となる。心してかかれ』


 鋭い竜の眼光で俺を、そしてホワイエットに送ると共に攻撃を仕掛けてきた。

次回は12月23日の午前0時ごろです。遅くても大体は1時過ぎには更新が終わっておりますので楽しみにしていたください。よろしくお願いします。

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