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359話:百鬼龍ヴラドヴァンプ その4

 廃城に立ち入るなり、俺とホワイエットはヴラドヴァンプの洗礼を受けることになった。

 ヴラドヴァンプは俺達の品定めを終えるといきなり不思議な力を用いて話しかけてきた。


『人間よ。貴様はこの我の居城に訪れて何を望む?』

「これは……感情共有の力で俺達に話しかけてきているのか……?」

『竜聖の力で貴様に問いかけている所だ。改めて……おや? そこの幼子は……はて……』

「なっ、なにかなっ??」


 自分よりも大きな体躯を持つ相手を前にして少し震えが止まらないホワイエットを、ヴラドヴァンプがその血に染まった深紅の瞳で眺めてくる。


『久方の客かと思えば人間がふたり……いや。人間を真似た聖竜の幼子の末裔が一頭か……。幼子よ。何故に人間の姿に擬態している?』


――変身能力を見破っただとっ!?


「うーん、ご主人様と一緒に暮らしてるからだよ」

『ホウホウ、それは奇妙な。我ら竜の血統は、七賢竜達で定めた掟により。古来より群を成さず孤高である事を重んじる種族であったが。時代がそうさせたのか。我もこの寂れた城に引きこもるのも潮時か……うむ……』


 気を持ち直したホワイエットが普段と変わらない受け答えで、次々と投げかけてくるヴラドヴァンプの質問に対して答えを返している。


『ほほっ、実に愛嬌のある子竜じゃの。年甲斐もなく話に花が咲いてしまった。して、そこで我らの会話を見聞きする人間よ。貴様はその子竜の主なんじゃな?』

「ああ、そうだ」


 アルシェさんの助言で、ヴラドヴァンプは一度でも臆するような雰囲気を見せてしまえば餌扱いされるんだとか。


――ドラゴンに喰われてチューチューされる想像なんてしたくないよ……。


 という気持ちもありつつ。面を被りながらヴラドヴァンプの対話をつづけていく。


『なるほど。お主の女子がその病に侵されておって。その病を治すのには秘薬を生成するしかなく。我の身体の一部が必要と』

「正直に。アンタを殺そうとか思ってないんだよ。少しでも交渉できるなら穏便には済ませたくて頼みたいんだ……」


――対話拒否からのワンキル展開だけはごめんだからなっ!?


「それであんたの答えが聞きたい」

『答えはノーじゃ』


 即答即決だった。


――じゃあ……覚悟を決めて狩るしかないんだな……。


 敗色濃厚になりつつあるこの会話に何も思い残す事なんてなかった。


『じゃが、ひとつ提案を呑むのであればお主の御願いを聞いてやってもよいぞ。我も血肉を争う事を生業とはせん。もといい、我は七賢竜のそのひとりに君臨する者として。平和を何よりも愛する一介の竜族の長である立場として。お主の提案を受け入れる余地はある』

「へっ……?」

「ご主人! ヴラドヴァンプの皇女様はホワイエットとお友達になりたいって」

「えぇっ、どこでそんな会話で関係が発展したんだよ」

『竜族は皆。掟により、いちど会えば友として関係を築くことが習わしじゃぞ。人間の身体から匂う。札遊びに夢中になっとる竜人の女。砂漠で放浪をするもの好きの竜人の女も。我と同じ七賢竜の一員であるぞ』

「よ、よく分からないが。アルシェさんの関係者だったんですね……」

『否。あの竜人の女はいちど我に矛先を向けてきたうつけ者。というのも数百年の前の話じゃ。今はの。時折あいつが我の城にくるなり、絵札を使った魔術師ごっこ遊びに付き合えと言われる程度には仲良くしておる。昨日の敵は今日の竜人じゃ』


――竜社会とは何かを教え込まれている気がする。


「その話が永くなりそうだから。その……よかったら俺達と人間の世界に来ないか……?」

『それはとても魅力的な案じゃな。ならばしばらくの間はここを留守にしてお主達に付き添うことにしよう』

 

 ヴラドヴァンプは社会科見学を目的に仲間入りを果たすと言ってきた。


――あぁ、とりあえず命だけは助かったしいいか。武器代の請求はどうしようかな……。


 完全に狩りの気分で来たら、こうも予想外な展開になってしまった。


「じゃあ、ヴラドヴァンプ。一緒に来てくれ。俺達の住む牧場にまで」

『うむ、共に行こうではないか』

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