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350話:偽装の恋愛遊戯 2

【アップデート】全体の文章の改稿と追加を行いました。若干の表現の変更を行いました。


 偽りの恋愛関係って言うこともあり、若干のぎこちなさは隠せずにいる。


 が、それは一瞬にして無駄だと実感した。


「いらっしゃいませー愛しのお客様♥ 運命の再会だねー」

「……」


 俺とレフィアさんは高揚感という名の食欲に身を任せて上手そうな肉の匂いのする店の前に立ち外観を見ていたところ。目の前に客引きの店員が割って入ってきてそう俺の見覚えのある顔と聞き覚えのある声で挨拶をしてきた。


 目の前には魔人のラパンがいる。彼女は人目を気にしてるのか。あのときにあったヴァンパイア魔人の姿ではなく。誰にでも愛されそうな雰囲気のある眼鏡っ娘の給仕服姿の女学生に化けてる。人間の中に溶け込むための擬態だろう。知らない若い男なら告白のひとつはしそうだ。俺も若い部類に入るが立場が違う。決して彼女に気を許したりして好きだとか言ったりはしない。


 だが、仮にそんな愚かな行動をとれば。その行動は後に悲劇の恋になって。命の灯火が消えるのと共に終幕を迎えるだろう。あるいは良くない大人のやりとりに巻き込まれて彼女の愛玩道具にされると思う。マジでそれは嫌だ。


 とはいえ、最初は匂いのこともあって。お腹が空いて口の中が唾液で満たされていた。が、知った人物がこの店の関係者だと知ったら話は別になるわけで。


「あららぁお客様♥ 私との運命的な再会を前にして色んな意味で我慢していらっしゃるのかしらぁ???? お客様ったら困りますぅー♥」

「あぁ……」


 言葉にならない返事で返した。ラパンは俺の反応を見て蠱惑な笑みを返してくる。


「ふふふ、数日ぶり以来だねカリト君。また会えてうれしい♥ 私達の再会って本当に運命的だよね♥ 私も君のことを思い続けて寂しかったわ。行き先にあった教会を血染めにしてね。その祭壇であなたに会いたいって神様にお祈りしたの。まっ、私みたいな魔人の女になんて。神様は祝福だなんて勿体なくてね。代わりに神の使いが後から来て堕落者とか罵ってきたのよ。で、最期は神に成り代わった私がそいつらに天罰を送ってきたんだよ。本当にこの体になってからは……って、あらやだ♥ 私ったらカリト君を前にして気持ちが舞い上がっちゃって自分語りしちゃった♥ これ以上は秘密にしておくね」


 次々と言葉を立て続けに思い返すようにして喋ってくる。そろそろ話を返さないと周囲の客に不振に思われてしまうので。


「とりあえず中で話したいから案内頼む」

「はーい♥ あ、でもその隣にいる泥棒猫は入店お断りよ」

「泥棒猫ですって? なにそれ?」


 含みのある笑みに。ガンをつけて返す泥棒猫ことレフィアさん。ラパンは相変わらず表情を変えずにレフィアさんの反応を楽しみ、口元を黒革のメニューブックで隠して見返す。


「今さっきにぃ、いったじゃない。あなたは私の恋するカリト君に纏わり付く邪魔な猫。こんなに可愛くて愛らしい私の方がカリト君の将来のお嫁さんにふさわしい。私とカリト君の間に入りたがる邪魔な猫ちゃん。それがあ・な・た。うふふ」


 姿勢はそのままに指を指してクスクスと笑っている。いや、さすがにこれは良くないな。


「おい、そうレフィアさんを蔑むな。これ以上の侮辱は許さないぞ」


 と、ムッとした感情を載せて話に割り込んだ。が、


「はぁん、あなたのその大切な人を守りたいというその正義に満たされた視線とその目。そんな視線を向けられてゾクゾクしちゃって。……我慢出来そうにないかも……はぁ♥」


 ちびっ子に良くない甘い吐息混じりの言葉遣いでさらっとかわされてしまった。なんか自分だけが空回りしてる感じがしていていやだなぁ。って、そんな事を思ってると。


「入りましょう新人。もうこちらの素性は割れてるんだし駆け引きとかなしで店の中に入るわよ」

「あら。それは酔狂な事を。入店はお断りって言ったのに」

「酔狂じゃないわ。入店お断りでも入らせてもらう。あんたが私をそこまでけなしてくるんだから逆に私。この店の酷評とかしたくなって心に火がついたわ。馬鹿にしてくれたぶん分かっているわよね?」


 と言いつつ、周りの客に気づかれないようにレフィアさんは、


「あたしを満足させるようなコース料理でもってもてなしなさい。まあ、あんたみたいな恋愛中毒のませガキが大人のお姉さんである私に対して勝てる訳がないから」


 と呷りつつ宣戦布告をした。


 彼女の視線を伝って電流が走る。それを受け止めて返すラパンという構図。


「まあ……。今日は魔人とか抜きにして。今日だけ二人には特別価格で色んなサービスをしてあげるね♥」


 少し推考する考える素振りを見せるラパンだったが。気を取り直し、元の態度に戻って俺たちを店の中に案内すると言ってきた。

 それに対して俺たちは応じる。

 

 店の敷居をまたぐ直前にレフィアさんが。


「あの魔人の動きは注意しないといけないけれど」

「はい」

「周囲の客の様子も随時気を配るのよ」


 魔人が絡んだ店となるとそう見るべきなのか。


「あと、私たちは恋人の間柄だと思われてるみたいだからそこを有効活用しなさい。いいわね?」

「え、あ。あっ、はい」


 目の前の敵を前にレフィアさんがいまどんな表情を浮かべてるのか分からない。


 思うに。仕事をする口調で話してきているから真面目な顔をしてるんだろうな。


「く、くれぐも。本気になって私の事を恋人とか扱わないでよね……」


……はっ? 


 何故かレフィアさんは頬を紅潮として視線を前に俺の握る手をギュッとしてきた。



次回の更新は8月21日です。よろしくお願いします。

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