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349話:偽装の恋愛遊戯

「はぁ、退屈ね本当」

「すみません」

「ねえ、室長から命令でって。あんたと恋愛ごっこしながらデートしてこいって命令されたのは良いけど。命令だから張り切っておしゃれとかおめかししてあげたのになによこ、の、ざ、ま!」

「す、すんませんレフィアさん……あはは」


 童貞歴で数えた方が多い自分には。レフィアさんみたいなお姉さんキャラ的な女性を相手にデートだなんて経験値ゼロの自分には無理でした。


「ったくエスコートするのも下手くそだし。周りの客に見られて恥ずかしかったわ。逆に目立つじゃないの。バレたらどうするつもり?」


 普段のスーツ姿のレフィアさんとは違い。彼女の装いは、つばの広い白の帽子と目元を隠すように黒いサングラスをかけ、シンプルな緑黄色の落ち着いたワンピース姿だった。


 彼女が待ち合わせに指定してきたいつもの時計塔で出会った時に思わず。一体どちら様ですかと言って目を疑った。

 そんな事をしては当然のことだと後悔し、案の定に彼女の機嫌を損ねてしまい、その場で腕立て伏せの命令を受けて自分を戒めることになってしまった。

 女の変身って侮れない。がさつな姿のレフィアさんしか知らなかった。でも今は思う。


「美人だから余計に目立ちそうですねー」


 って、半分冗談交じりに言い返した。本当に綺麗な人なんだな。


「とりあえず後で私と組み手を小一時間ほどしてもらうから」

「あぁ、組み手ならリリィとで物足りてるのでノーサンキューです。こう見えて経験はある方だとおもいますよ」


 って思いながら日頃の扱いに対する仕返しをしてやると。彼女は瞬間湯沸かし器のように顔を真っ赤に染めて。


「ばっ! ち、違うっての……ばか…」


 さすがに年上のお姉さんキャラを維持してきたか。もっとアニメで見るような激しい言動で叱咤されて殴る蹴るの暴行をと予想してたが。なんか違ったしおらしい反応に嗜虐的な感情を抱いてしまい。


「はは、まあそのときはリリィが組み手とかしてくれると思うのでよろしくお願いしますね」


 俺はノータッチだ。リリィなら上手いこと組み手をして受け流してくれると思う。今の俺は他力本願な考えで乗り切るしか他に余裕がなくて非常に困っている。


「さぁーいらっしゃい、いらっしゃい! おいしい洋食屋はここだよー! よってらっしゃい見てらっしゃい!」


 ふと、遠くから女の客引きの声が聞こえてくる。商業施設を歩く人たちの声で埋もれてはいるものの、良く聞き覚えたこえがする。


「レフィアさんよければ俺がおごるのであの洋食屋にでも行きません?」

「あら、気が利くわね。ちょうどお腹が空いてたのよ。なるほどね。あの洋食屋っていうの? 月とコウモリっていう名前のお店ね」

「へー、あそこのお店ってそういう名前だったんですか?」

「事前調査は任務の内よ。お店はどんなのがあるのとか。ここの服屋は流行に敏感な女子の穴場だとか」


 俺よりも巧みに情報収集をしてるので負けを認めるしかない。


「それで今から行こうって誘ってくれてる店はここ最近になって出来た料理やなの。なんでも見たこともない一品料理を出してくれたり。コース料理や定食メニューもあって。色んな幅の層に受け入れられつつあるんだって」

「それはいいな」


 言葉では言わない。リリィとまた夫婦で過ごせるときが来たら。今から行く料理屋に連れて家族サービスがしたいな。夜のコース料理とかでお酒をいや。そんな粋な事を考えてないで今はレフィアさんとの恋人ごっこに集中しなければな。こういうのってどちらかと言えばリリィが得意だ。そうやって俺も彼女に心を奪われたんだよな。


「じゃあいきましょカリト。今度はエスコートのやり方間違えずにね」


 とウインクをしてイタズラな笑みを浮かべてくる。売られた喧嘩を買わない男はいないだろ。


「仰せのままに」


 と、過去に教えられた所作でもって。レフィアさんを手を添え合わせるようにつなぎ、目的の料理屋である『月とコウモリ』に向かった。

次回の更新は8月20日です。よろしくお願いします。

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