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347話:夜戦ドクトリン 5

「来たか兄弟! ここが俺たちの雌雄を決する闘技場となるフィールドだ」

「ほんと。景色の良い場所ですね」

「はん。余裕のある言葉を言えるくらいには勝つ自信があるようだが。そうもいかない」


 ここはトラス構造で出来た鉄橋の上部だ。綱渡りに近く細長い丈夫を手すりなしで互いに向き合って会話をしている状況だ。そしてロッソ兄さんはサングラスをかけており、自身が別人である事を証明しようと俺に喋りかけていた。


「それでロッソさん。あなたがここまでの場所で殴り合いをしたいだなんて。なにか策でもあるかと勘ぐりたくなるのですが?」


 とあからさまな感じに探りを入れてみる。すると。


「ない」

「ないだって??」

「そんな小細工などこのバトルフィールドには無用の著物だ。バゥンティーハンターが互いに向き合ってリボルバーを抜き。相手に銃口を向けて引き金を引くように。俺たちもその仕来りにならい。拳を前に出して互いのパワーをぶつけ合う。それこそ俺が望む決着だ」

「それで。そのお前の気持ちはよく分かった。だが兄さんは。いや、言うまでもないか」

「ふん。そうだ。俺の中で眠る主人格からは好きにしろと了承を得ている」


 いや、もうそれ面倒くさいと言っているのと同等じゃん。兄さん。ちょっとはそこの別人格のロッソさんを見習ってほしい。いや、それが彼らのメンタルバランスの取り方なのか。そんな気さえ感じる。


「では説明しよう。この場所が示すとおり。ここで足を踏み外して地上に落下すればどうなるか分かるか?」


 まあ……地上。つまりこの鉄橋の下にはあるモノがあって。


「爆弾の爆発に巻き込まれ。なおかつ鉄橋のがれきの下敷きとなるだろ。みたさ。お前がハッタリをかましてた訳ではないって見るためにもな」


 あんなのどこで入手したんだよと思うレベルの爆弾が鉄橋の下部に仕掛けられていた。しかも一つ一つに時限信管がついており。


「あれは時間で爆発するのか?」


 と質問すると。サングラスを指でくいっとあげる仕草をして。


「当然。時間で起爆する。そしてどちらかが地面におちれば爆発するようにセッティングした」

「はあ。衝撃を受けて起爆する機能もついているっていうわけかよ。大したものだな。俺が橋をあるいてても爆発しないように仕掛けてたんだ。あんた本当に天才だな」

「これも俺が成せる技だ」


 と話の区切りがついたと直感的に感じる。


「はん。そろそろ頃合いだな兄弟。こい。先制は譲ってやる」

「後手に回ってなにができるんだよ?」


 互いの拳を相手に向けて構えをとる。互いに言い残した言葉はなかった。そのフィーリングを互いに感じた直後。俺は前足となる左を前に出して、距離にして5メートルになる距離をステッピングで間隔を詰めていく。そして。


「はぁっ!!!!」

「ふん」


 まず俺が仕掛ける。狙いは相手の顎にフックをヒットさせることだった。しかし。


「…………」

「どうした兄弟?」

「なぜ一歩も後ろに下がらないんだ?」

「当然。貴様のやることなど分かる。俺と主人格は一心同体だ。お前と主人格が組み手をしている時。俺は眠ってはいるがこの主人格が見聞きしている感覚は俺にも伝わってくる」

「ようするに共有しているから手の内は分かってると」

「そうだ」

「ならこれはどうだ?」


 すかさず俺のモンスターテイマーの力で衝撃波を発現させると。


「そうきたか! お前の隠された力。なるほどそういうものか」

「なに全部理解したみたいな物言いをするんだよ」


 ルドガーの操る風の力で発現した衝撃波が見破られたとでも?


「いいや。理解はしてないさ。俺とお前とでの間に知識と経験の差があるとわかったからさ」

「……なに?」


 つまりなんだ。俺は人に対する戦い方を知らなさすぎるとでもいいたいんだろうか?


「その顔。その顔で分かる。お前は対人戦における戦い方が浅い」

「浅いからなんだよ」

「そう。それだ。その考え方がわかる言葉だ! 貴様は互いの拳をぶつけ合う事をしてこなかった。モンスターを狩る事ばかりをしすぎていたせいで覚えていた感覚を失っているのだよ」

「…………」


 論理的に反論ができずにいる。いや、直感的にもだった。否定ができない。


「ならばこの機会に俺と拳で語り合うことにしようか兄弟」

「あ――ぐっ!?!? ……いっでぇ……」


 なるほど。これがロッソさんが言いたい言葉か。頬から伝わってきた衝撃と拳の威力からよく分かる。


『どんな相手でも全力を尽くせ』と。


「やってくれたなぁ……!」

「ほほぅ! いい拳だ。もっと俺に痛みをくれ! 俺を全力で地面に落とす勢いで殴ってこい!」

「うおおおおおおおおおおお!!!!!」


 人なんて拳で殴ったことのない自分が想像していく格闘戦術。ロッソさんやレフィアさんや、リリィを守ってくれているルナさんからみれば素人の格闘技にみえるだろう。だけどこっちは異世界転生者だ!


「ふん!」

「なっ、その技っ!? ぬぬぬ……!」


 地面に背中から伏すロッソさんを唸らせる体術に成功する。見よう見まねでやってみた近接格闘術がヒットした。俺がやったのはなぎ払い『スタンディングダウン』と命名する。相手の衣服をがっしりと手でつかみつつ、立っている状態の相手を足払いをしながら地面にたたきつける感じで勢いに任せて投げつけるという。それらを流れる動作で行って相手をスタンに追い込む。気絶させることができればこちらの勝ちだ。


「貴様の隠された力と技が重なりコンボとなる。いい一撃だった」

「褒めてる場合かよ?」


 ロッソさんが起き上がったので少し下がって構えをとる。つかめるように両手を半開きにしつつ構えをとる。中腰の姿勢は維持したままだ。こうすることでどんな体勢でも技をだせると直感的に感じたからやっている。


「遙か遠くにあると言われている国につたわる。まるでジュードーのようだな」

「柔道だって?」


 なんかこの異世界にも日本みたいな国があるらしい。おまけに俺がいまやっているのが柔道だとロッソさんがそう評価を下してきた。


「俺の知る限り。この戦い方はCQCと呼ばれる徒手空拳」

「不思議な格闘技だと覚えておこう。では再び始めることにしよう。貴様のCQCと俺の拳。どちらが強いか」

「こい」


 いつにもなく前を見据える。不思議と足下が怖くない。まるで地面が広くフラットに感じるのだ。俺の目はロッソさんの弱点に集中している。視線は悟られないように気を遣いつつ相手の出方をうかがいながら受け流しの準備をした。これが決まれば相手は橋から転落する。


「いくぞっはあぁっ!!!!」

「ふぅん!!!!!」

「なにっ!?!?」

「連」

「かはっ!?」

「続」

「二度までもっ?!」

「CQC!!!!!」

「きょぉおおおおおおおおおおお――」

「ダイ」

「ぬぅわあああああああああああああああああああ!!!!!」


 決まってしまった。ロッソさんは俺を呼びながら地上へと落下していき。そのまま爆弾の爆発に巻き込まれて死んだ。いや、正確には生きてると訂正すべきか。


『さすがだ兄弟。この勝負お前の勝ちだ。はやくそこから脱出しろよな。ぬはははははっ!!!!』

「生命力はG並かよ……ったくロッソさんたら……」


 爆発の振動で震える地面を渡り歩き、鉄橋をさっと飛び降りて脱出した。いや、トリのようになって飛んだと言い換えておこう。ルドガーの風の力を借りて空に飛んだからだ。


 こうして俺とロッソさんのサバイバルゲームは俺の勝利で終わりを迎えることになった。

次回の更新時間は8月18日午前0時ころです。よろしくお願いします。(深夜テンションで書いてたので気づいたら日付変わってたのに前話で後書き間違えて書いてたことに気づいた次第です。それでも多くの閲覧数に恵まれて感謝しております。ありがとうの気持ちをお伝えしたいです♥)


・後日談

「はい。これであんたの隠してた力の一端を私も見ることが出来たし満足満足」

「えっ、俺とロッソがガチで戦ってたのってそういう理由で……」

「ええ、そうよ。だって新人が隠している秘密を暴いてやるっておもってたしいいじゃない?」

「えー」


 なんか上手く載せられてしまったようだ。絶対に隠してやる……!!!!

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