338話:足跡
――2日後の午後。
「これより『魔人戦線』と名乗る組織の全容を解明するため。ネメシスが今後。どのような方針で活動していくかについて会議を行いたいと思う」
懐かしい顔ぶれが会議室に並び座っている。上座の方にすわるのは今回の司会進行を務める我々のリーダーであるルーノ職長だ。ここ最近は職長室に籠もりきりだったこともあり、俺たち全員。彼がいる事を……忘れていた。まあ、それはともかく。
「ルナさんはどこに?」
「カリト君。ルナ君には君の奥さんであるリリィの身辺警護を任せてる。彼女は元プロのガードマンだ。任せなさい」
それだけの言葉を耳にして心から信頼をルナさんに寄せているのがよくわかる。リリィは俺の次に狙われる可能性の高い準重要保護対象として設定されており。
「本来ならばね。君も最重要保護対象。ネメシスが総力を挙げて命がけで守らなければならない存在だ。どんなに君が肉体的心身的に優れていたとしても。組織の足並みを乱すような事をされては困るから。くれぐれも独断での任務を実行したりしないように。いいかい?」
「もれなくそんなことしたら新人。一昨日にあったあの吸血鬼の女の子に攫われてあれやこれやとお持てなしされて一環の終わりになりそう」
「おいおいレフィア。俺の兄弟をぞんざいに扱うんじゃないぜ。っで、ちなみにその吸血鬼のねーちゃんってどんなかわいい子ちゃんだったんだよおい。あとでトレーニングルームでみっちりと聞かせてくれよな!?!?」
「あはは、多分美少女だった記憶が……」
「なぁっ!? その子はその……デカかった……か?」
なんかセクシーだったのはよく覚えてる。月明かりの中だったので全容はあまり見られていないが。間違いない。俺の知っている知識では『西洋の妖怪に出てくるヴァンパイア・レディ』と呼ばれる姿に変容していた。彼女はその姿になろうと思った際。どんな事を思いながら魔人化したんだろうか。
右では下品な話を聞かされ。その隣で阿修羅のごとく殺気だって俺たちをギリッっとにらみつけてきているレフィアさん。おれ、そんな事で間に挟まりたくないんだよ!
「はいはいそこまでだ君たち」
その言葉と手を鳴らす動作で静粛が訪れる。
「好きだよ君たちのそのアットホームで賑やかなところ。でも今は真剣な話がしたいかなって思っているんだ。最期まで付き合ってくれ」
「了解です職長」「うぃーっす」「ふん。仕方がないわね」
「では満場一致で会議を進めることにしよう。」
会議っていうんだから壮大な何かがあるはず。
「事の発端は一昨日に行われた日常業務である魔人狩りの際に起きた出来事だ」
ルーノ職長にはすべて洗いざらい報告を済ませている。なので彼の言葉から発せられる戦闘についての内容や、邂逅時の敵とのやりとりからなにまでを喋らなければならず。
「以上。女の魔人であるラパンとその従者と思わしきビリームと呼ぶ男の魔人どちらにせよ二人は使者として使わされたとみて良いだろうね。斥候だよ。とても強い斥候を送り出し。あわよくば訪れた先の場所を手中に収めることができればとの考えで動いていたんだろう」
「斥候ですか……。でもなんでその二人が任命されたのだろう?」
「新人。今から斥候の勉強のついでに任務をしない?」
「え、出来るんですか?」
「職長には話してあるわ。いずれ相方がいないとアンタの命がないからね。まったく余計な仕事増やしてくれるものよ」
「これも職長としての務めだと思っているよ」
「ふーん。じゃあ後で新人と二人でブリーフィングをしておくからよろしく」
「いいとも。なんならロッソも混ぜてやりなさい。人数は多い方が良いだろう。」
こうして俺とレフィアさんとロッソさんで組むチームで斥候部隊を編成することになった。
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