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337話:遠い記憶で綴られる昔の思い出話 5


アップデート情報

2023年8月8日 全体の文章を見直し、読みずらいと思われる文章や表現技法を削除し改稿しました。

「あははっ、まあともあれね。君と私がこうして運命的な再会を果たし。再びこうして相まみえる。まるで私の観てきた大好きなお芝居のワンシーンみたい……! ス・テ・キ♡」

「おめでたい事だ。どうしてそう思うんだ?」

「だってこうしてまたあの時に私が感じたトキメキのラブストーリーが始まると思うとこの胸の高鳴りが治らなくて……」


 恋する乙女の気持ちを表現する仕草を取りながら語られる彼女の言葉。本気の恋を感じる。よもや敵対することになってしまった彼女にここまで惚れられるだなんて。


「泣けるぜ」

「えぇ、本当に泣いちゃいそう。しくしく」


 喜怒哀楽の移り変わりがコロコロと移り変わる彼女の感情表現はまるで、何かを彷彿させられる立像的な象徴がある。さらに、


「どうして君は私を困らしてくれるのかしら?」

「……」

「私っていう恋に落ちた乙女がいるのにどうして……」


 と間を開けて頭を垂れると、


「どうして君はボクとの間に想いの結晶をくれなかったの? なんで?」

「っ……」


 見る物をすべて吸い込むような二重な紅眼。その奥底には深淵がのぞき込んでおり、彼女の底知れない心の闇を露わに……。彼女はもう昔のようなフレッシュさあふれる美少女じゃなく。


「まるで吸血鬼……」

「ボクは君の血をもらいに来たの」

「……血だと?」


 まるで俺が想っている通りの。


「その血が未来の糧になるの」

「糧?」

「ええ、そうよカリト君。君の血を取り込むことで。ボクのおなかの中に思いの結晶が宿って新しい命が芽生える。あぁ……なんて幸せなんだろぅ……」


 恍惚ともとれる艶めかしい享楽の表情と仕草。彼女の目に映るものはすべて、彼女の頭の中にいる俺とで紡がれる燃えるようなラブストーリーが流れているのだろう。


 その彼女の姿は。


「ヴァンパイア魔人……」

「あぁ、やっと私の姿を見てくれたぁ……うれしぃ……」


 ラパン。ヴァンパイア魔人が身悶えて喜びの感情を露わにする。と、そう眼にして理解し彼女の成り果てた姿に溜飲していると。


「新人。引き上げるわよ」

「…………」

「しっかりしなさい! 衛兵達が集まってきてる!」

「あらもう潮時? 残念ね……君との再会して話に花を咲かせたかったのに。そうやってふたりの運命は進むのかしら?」

「かもなー」

「はぁ、しらけさせないでビリーム」


 月影でその姿を見えない。ビリームもおそらく彼女のように魔人となって姿を……。手強い相手だった奴がさらに魔薬の力を手にして魔人になってしまったなんていう最悪な事態に。どうするんだよ……。


「まあ、邪魔者が入ってきたし。僕たちはそろそろ新しいお客様のお出迎えをしないといけないから。今日は名残惜しいけれど。君とこのまま夜の遊びをしたかったのが本当のところだけど我慢するね♥」

「いぃ……」

「きも。どれだけビッチで欲求不満なのよ」


 レフィアさんの罵倒。代わりに胸に抱いた気持ちを裏表隠さずに言葉を返してくれて助かる。

だが、そう聞かされても彼女は眉を微動だにしていない。無反応というのか、ラパンは俺にみせてた瞳の色とは違い、表情は変えずともレフィアさんを不快に思う眼差しを向けており。2人の間で交わる視線から目の錯覚なのだろう、火花が迸るのが見えている。えっ怖っ⁉︎


「こ、これ以上は体力的に無理ですし逃げますよ!」


 ハッと本来のやるべき事を思い出して、俺は武装顕現で手に取り出したスモークグレネードを地面に投げつける。そして即座にその場からレフィアさんを連れて離脱した。


 去り際に後ろから。


「また会おうね」


 別れの言葉をラパンがかけてきたが、俺はその言葉に対して何も反応する事もなく走り去った。


 俺とレフィアさんが退却したその日の夜。人賑わう繁華街が衛兵達の鮮血で彩られることに。

 ある物は女の容姿をした化け物に襲われて捕まり、干からびたミイラのような姿になり果てて、ゴミのように投げ捨てられて死に絶えていた。遺体の首筋には鋭い牙で加えられた噛み傷があったという。

 次に、男の容姿をした化け物がその女の隣におり、そいつは不協和音の遠吠えと共に走り出し、持ち前の豪腕と豪爪でその身を削り取るようにして、絶望の表情を浮かべる衛兵達を次々と切り裂いて襲ってきたと生き残った衛兵達の目撃証言によって全容が明かされた。

 どちらにせよ、ふたりの化け物に襲われた者達は皆。筆舌するにもしがたい死に方で戦死していたという。


 この事件は検衛官による実況見分を丸々と書いた今朝の朝刊によって街中に広まり。住人は夜の世界に新たなる魔物がこの街に姿を現したと恐怖し、噂した。

 

 これから彼女たちの手により、罪のない人たちが犠牲者になるだろう……。


「止めないと……この街は終わりを迎えてしまう……」


 身の安全が確保されるまでしばらく隠れ家となるネメシスのアジトで身を潜めることになる。寝室のベッドで横に寝転がりながら、そう物思いに老けて考えをまとめて決意する。


「リリィ。アキト。父さん頑張るよ」


 家族が安心して幸せでいられる街の平和を取り戻すためにも頑張らなければならない。


 俺の新たなる闘いの幕が上がるの感じていた。

 






最近の作者の近況をお伝えします。


某カードゲームにのめり込みすぎてガチ勢になっちゃいました。地元から東京の公式大会に参加したりと、充実とした趣味生活を送っております。楽しすぎるだろ……。



というわけで次回の更新は翌日更新となります。よろしくお願いします。

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