334話:遠い記憶で綴られる昔の思い出話 2
時計台から離れて移動し、作戦時間が20分経過した。場所は中流階級の人が集う繁華街にある大通りの名の知れたクラブだ。
「ターゲット視認。周囲にいそうな警備はざっと歩哨が3人っていうところでしょうか」
「不確実だけれどもざっと5人はついていると思いなさい。ほら、クラブの建物の入り口付近を見て。
「入り口付近ですか?」
「そう。ターゲットの背後よ。屋内よりの近い場所にいる男達よ。銃を両手に提げたガードマンが見えるでしょ?」
「あー、あそこにいる軍用のアサルトライフルを持っている人たちですか。人混みで気づく事が出来なかったです」
「勘が鈍ってるんじゃないの?」
まあ、本当にそうだな。つい最近までモンスター相手に狩猟の仕事をやっていたわけだし。人相手に戦うのも久しかったしな。そこについてはレフィアさんがフォローしてくれるはず。彼女に背中を預けておけば問題はないだろう。
「かもしれませんね。なぜって聞かれたらこういいます」
「モンスターとは違って戦いやすい相手だっていいたいのかしら?」
わかってるじゃん……。
「はい。そうですねー」
「良いところもってかれたとか思うんじゃないの」
「うぇ」
「そうふてくされてる場合じゃないわよ。ターゲットが護衛と一緒に移動したわ」
うーん。もうちょっと良い感じに会話が出来たらよかったのだが。いまは仕事中だ。真剣にやれって言われてるわけだしやるか。あまり気乗りはしない。
「ちなみに今回のターゲットって。このエリアを牛耳るギャング組織の一派でしたっけ? 久しい響きの名前ですけど。まだギャング組織って存在してるんですか?」
前世で言うところのヤクザとかマフィアに該当する組織だ。その上に立つ組織がポリスって呼ばれている幹部組織があり。つい最近になってからその組織についての表だった噂話とかニュースなどの情報は耳にしていない。個人的にほぼ壊滅状態なのでは?と、そう思うくらいにはこの街は平和だった。綺麗すぎるほどにだ。
「単純に奴らは身を隠すのが得意なだけ。犯罪組織がどういう形で瓦解しようが。私たちが動いて牙城を崩そうが時間と共に集まって群をなす。裏社会の人間達は弧よりも群を好む傾向にあるの。そして群に身を置いてて身の危険を感じれば弧を好むようになり、そしてまた群に対し好意を抱く。そうやってこの世界は成り立っているのよ」
どうりで人目につかなかったわけだ。自分の想像よりも倍の意思というか思想的な考えがこの街には根付いていて。その者同士で通じ合うネットワークを用いる事で表には出ないように。決して漏らさないように秘密裏に行動をする事を重んじる。
「そうする事で僕たちの様な人狩りや衛兵に見つからない様に暗躍しつづけているわけですか……はぁ」
「ため息をつくくらい世界は広いとでも思っているのかしら?」
「まさにそうですよ。まるで設定がなかったようなモノの見方しかできなかったんですから」
「今のポリスの活動傾向をみてると。子飼いのギャングをフルに使って犯罪活動を行っているっていう論文データが上がってきているわ。あ、ちなみにその論文書いたのはリリィ。彼女の得意分野は声の力による諜報活動。つまり色目つかってあれやこれやと情報を引き出すのが仕事」
そうやって俺もうまく彼女に懐に入られてそのままゴールインしちゃったので返す言葉もないです。将来絶対に俺、嫁の尻に敷かれる旦那になるわ。
「あーっ、将来がちょぉっといやな感じがするなぁ」
「何想像してるのよったく」
っていうやりとりをしながら俺たちは、着実に障害となる護衛達を音もなく処していき。なお、俺は人の血で手を汚したくないので。レフィアさんがかっ攫ってきた護衛を路地裏にて、丁寧に1人ずつ、死なない程度に正拳突きで始末していくスタイルで夢の世界にウーバーイーツしつつ。レフィアさんがその後始末をするといった具合に終わらせていき。
そして残すところあと1人。つまり今回のターゲットに迫る。
「…………」
気配は周囲の通行人に合わせる。相手からはプロの刺客が近くにいる事を悟らせないためにもだ。
「慣れないなぁ」
モンスターを狩猟するときの気配のあり方というか。呼吸のひとつや足の取り方など、細かなすべての動作が失敗につながるという世界に身を置いていたこともあってか、それなりにはそつなくこなせてる感じだった。しかし。
「おい。俺の背後でこそこそと忍んでるの。バレバレだぞ」
バレてたぁ…………。さらに。
「護衛は全滅か……。奴らもおとなしく俺みたいな超人になれたら良いものを。こうやって俺みたいな容姿になればさあ。この世界。もっと楽しむことができるじゃん。そう思わないかネメシスの子犬どもよぉ!」
「有名になっちゃった感じかしら?」
「関心してる場合じゃないですってレフィアさん! 来ますよ!」
そうレフィアさんに受け答えをしてる間も対峙する事になってしまった敵こと。ロベルタポリスのギャング組織のメンバーである幹部。
「ハミルト。おまえ達が地獄に堕ちるのを手伝ってやる名だ。覚えておけ」
その言葉と共にただならぬ黒い瘴気がハミルトと名乗った男を中心に満ち溢れていき。瘴気が満ち溢れていく事に気づいた周囲の通行人が、ハミルトの姿を凝視した後に悲鳴をあげて我先にと一目散に逃げていく。
静けさの漂うこの場に残されたのは俺とレフィアさん。
そして魔人となったハミルトのみとなった。
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