319話:討伐クエスト『岩場にて暴れし邪鬼を滅せよ』1
翌日になり、俺はギルドの集会所にあるクエスト受付所を訪れていた。
「お待たせしましたサトナカさん。ご武運を。とはいえ最終の手続きと説明を聞いてから出て行ってくださいね」
「はい。行ってきます」
「人の話は聞いてください」
「…………え?」
「馬鹿にすんな」
「うへぇ」
ご武運をか……。果たして俺は生きて帰れるのだろうか? この狩は確実に討伐をしなければ帰れないクエストだ。失敗は死を意味する危険な狩だ。……勝つぞ!
今回のライオスオーガは中級クラスのハンターでも狩猟のできる個体だと、ギルドの調査で判明した。元々のライオスオーガは最上級クラスのハンターでさえ命がけの戦闘になるという超がつく危険なモンスターだ。その剛腕と力業で数多の目撃してきたモンスターや人間達を屠ってきたという程のいわくのモンスターである。そのためかこのモンスターが認知されることになるのも最近になって分かったということもあって、ほんのつい先月までは最上級から上級のハンターに限定して狩猟解禁をしつつ個体数や生態や危険度をギルドは調査してそのデータを累積していった。そして今日になり中級クラスのハンターまでなら対処のできるモンスターであると判断がおりたのだ。だから俺がそのクエを受けているわけで。
「今回はご本人様のみでの狩猟とさせていただきます。いつものお嬢様がたをお連れしての狩猟もといい。ライオスオーガはお供を連れての討伐には不向きなモンスターであるとギルドではそう判断しておりますのでご了承ください」
個人。ソロでの狩猟のみの許可でしかこのクエストが受けられない。彼女たちは俺が帰るまで街でバイトをしてもらって過ごしてもらう。今度は俺が長い狩にでそうだ。
「それとこれはギルドからのお願いになります。もし危険だと判断した場合は即撤退をしてください。まだ中級クラスのハンターに向けては解禁したてのモンスターであるということもあって」
「調整にいくつか不安定な面があるから。もし中級クラスのハンターには無茶なクエだと思ったら報告しろってことだろ? だったらクエストのタイトルに<高難易度・危険>って文言つけろっての」
「おっしゃる通りです。しかしこれはギルドの長であるギルド長が決裁したことですし」
またアルシェか。
「わかった。これ以上は逆らえないと思うし。とりあえずこの宣誓書にサインするわ」
「ご理解いただきありがとうございます。この宣誓書を書き終えればクエストの実行に移していただけます」
宣誓書。もし何かの不慮の出来事があっても損失に関する有責をギルドは負わないという文章だ。相手が相手なのだから仕方がない。俺も理解した上で挑むから。
「ちなみに現在のそのライオスオーガによる被害はどうなっている?」
「現状死者は出ておりません。奇跡的だと思います。現場にいた民間人達がたまたま村に帰ってお昼休憩をしていたのが不幸中の幸いでした。ただ、先に職場に戻った数名がライオスオーガから逃げるために。道中でころんで怪我をしただけでした」
「そうか。うんそれはなによりだ」
派手な被害があったのかと思ったら拍子抜けした。でもそれがいいよな本当に。俺のいた世界でも獣害による死者はひどい死に方をしてるし。
「さてこんなんでいいだろう。じゃあ俺は支度するのに家に戻るよ」
「お気をつけて」
受付嬢のお辞儀とお供に俺はここを立ち去った。
次回の更新は8月1日です。よろしくお願いいたします。




