308話:廃棄処理施設にて
――へぇ、キミはこのボクの手から離れられると簡単に思ったわけか。
…………はぁ。
――仕方が無いね。ならボクはキミにその辞表を取り下げさせる手札を提示する事にしようかなー。例えばキミの子供を身ごもったリリィとか。
――リリィに何をするつもりだ?
――他にもキミを心から慕っているモンスター達とか。
――おい、一体何をしようと企んでいるんだ!!!!
――ふふふ、それはキミの行動次第で彼女達の運命は変わるわけだ。さあ、時間がないよ。魔獣教団は待ってくれはしない。核は既に発射の準備が進んでいるんだ。
彼女達が人質となっている。こんなの悪夢だと言ってくれよ。
そして俺はアルシェの指定した地下水路に入り込み。そこで用意されていた潜水用の乗り物に入り込んで、事無く処理施設付近に辿り着いたと同時に乗り物から脱出。そのまま水中から這い上がり水面に顔を出して外の様子を覗っていた。どうやらここは処理施設内にある水路の運搬フロアで。ずらりと並ぶ棚には段ボールで固められた資材が保管されているようだ。そして、
(敵がいるな……。ロビア製のカタクニシコフ74Mにグレネード。覆面姿の歩哨が同じ規格の装備で警備に当っているようだ。見た感じ2人だろう)
情報では魔獣教団は銃を使わないと聞いている。恐らく施設内で働いていた警備員が、魔獣教団の信徒達に強要させられる形で協力。外部からの侵入者を防いでいるんだろう。話しかければ協力してくれるかと思ったが、アルシェの言葉を思い出すことになった。
『いいかい。施設内にいる警備員には接触はおろか排除や暴力行為は禁止だ。彼らも本意でやっているわけじゃないんだ。彼らにも家族がいる事をわすれてはいけないよ』
「つまり隠密行動での潜入作戦になるな」
その事もあって、現在の俺は完全な丸腰の状態で敵地に侵入している。有名なステルスアクションゲームのような伝説の傭兵がとった立ち回りを求められることになるんだな。ただ、それでも見つかった時に何も出来ずに殺されるくらいなら。
「いや、ここは逃げに徹して」
あ、そういえば考えすぎて水中に顔を出したままで浮かんでいたんだ。思いだしたおれは四隅に這い上がり、支給されて身に付けていたウェットスーツを脱ぎ捨て水中に投棄し。中に着込んでいた潜入用のスーツに特殊なやり方で切り替えて。準備を整えた。そしてその場で周囲の安全確認を終えた後に膝立ちになってしゃがみ込んで、感情共有の力でアルシェに通信を掛けた。
――こちらカリト。敵核廃棄処理施設に潜入せいこう。これよりオペレーション118の実行を開始する。送れ。
暫くのチューニング音の後に。
――こちらアルシェ。了解した。オーバー。
いや、そこは格好よく話しを繋げてくれよ。こっちは命がけの作戦をするんだから!
――こちらアルシェ。なんだ。二度も立て続けに通信を送るとは非常識な奴だな。
――教えてくれアルシェ。ここには何があるんだ。核心とは聞いている。モンスターの心臓なんだろ? それを廃棄して何に変換しているんだ?
――キミが詮索するような事ではない。キミは私からの指令に従って行動するまでだ。これは決定事項である。
なんかソレっぽいのりで煽ってくるんで。
――核心に関わる何かが秘匿されているのか?
――マンガの読み過ぎだ。さあ時間は既に2時間が経過していて急ぐ案件だ。通信終わり。
「…………」
怪しい……。完全に怪しいぞ。その後。3度目の通信を掛けても彼女は応答しなかった。完全にこちらの通信をシャットアウトしている。だめだな。
「さて行きますか」
静かに立ち上がり、足音を最小限にして行動を開始した。
次回の更新予定日は12月8日です。よろしくお願いします。
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