285話:雪回廊に潜む主 縁白虎獣 エメラルドタイガー その3
飛びかかってきてのしかかろうとする虎のモンスターの攻撃を横方向へと移動してダッシュで回避する。しかしそれでは不十分な回避行動だった。
――グォオオオオオオオオオ!!!!
背を振り向き虎のモンスターが俺をタゲにして、全身から湧き出ている緑炎の闘気を活性かさせて襲い掛かってきた。
――グォ!!!!
「くっ、素早い身のこなしで。まるでロケット弾が飛んでくるように。似たような突進攻撃をしてくるのかっ!?」
幸いにも寸の所で身をひねって倒れて避けきった。
――グルルゥ!!!!
突進攻撃は壁の奥まで続いていき、闘技場の観客席に激突した後にスッと向きを直してこちらを睨んで唸り声を上げてくる。虎のモンスターに対して銃を向けて装填された全ての通常弾を発砲したが。相手の身体には、致命傷には程遠くて軽い打撲痕が残っただけで。今使っている弾薬だと有効な手段にはならない事をしり、俺は直ぐにマガジンを別の特殊弾が装填された弾倉に入れ替えて差し込んだ所で。
「ご主人。私にまかせろ!!!! おら、ここはあたしが相手だ!!!! バンカーバスターの威力を思い知れぇ!!!!」
いつの間にか闘技場の中央に位置転換し、サンデーが虎のモンスターにヘイトを集めようと、手にしているバンカーバスターライフルを天に向け、そのままの姿勢で威嚇射撃をした。そしてシールドを前に構えて再装填を行う素振りをあからさまに虎のモンスターへと見せつけると。
「ご主人!!!! ここは私が盾になって奴と防戦をしく! ご主人は今のうちに相手の弱点になりそうな弾薬を使って狙撃に専念して!!!!」
「了解。タンク役まかせたぞサンデー!!!!」
「おうよ!!!!」
――グォオオオオオオオオオ!!!!
「へへ、おいでなすったか。あたしはサンドフットドラゴン族のメス。ご主人からはサンデーと呼ばれている戦士だ!!!! ここで出会ったのは何かの縁だ。お前とあたしとで生き死にの攻防戦をやろうじゃないか!!!!」
「おぉ……かっこいいセリフだ……」
シールドを更に大きく広げて展開し、装填を終えたバンカーバスターライフルを持って構えて立つサンデーの姿には惚れ惚れしそうだ。そして遠くでも分かる彼女の闘気に満ちあふれた目に嬉々とした高揚感のある表情が彼女の戦いに対する、彼女が本能でもつ闘志に直結しており、モンスターテイマーの力から伝わる彼女の熱い気持ちが俺に勇気を与えてくれていた。
その言葉を聞き取れたのかは不明瞭だが、虎のモンスターは。
――フン。グォ、グォ、グォ? グッグッグッ! グォオオオオオオオオオ!!!!
なにやら拍子抜けといった態度の後に挑発的な言葉をサンデーに言ったのだろう。そのままその観客席から飛び降りて闘技場に降り立ち、サンデーと間合いをとりながら周り歩き出しており、サンデーもそれにあわせて死角をとられないように動いて攻撃のチャンスを覗うようにしており、俺もそれに合わせて狙撃に最適なポイントを探し回る為に走り出した。
本当ならモンスターテイマーの感情共有の力で相手の喋っている言葉を翻訳できたはずだが。なぜかあのモンスターがこちらの干渉を何らかの力で妨害しており、つまり。相手に干渉する事ができなかった。
「あのボワァって沸き立っている闘気が邪魔をしているのか?」
そう思うも。あちらでは激しい戦闘が始まったので、急いで狙撃の体制に入らないといけなくなったので、奥にある大きな柱にある人ひとりが伏せられそうな平地に、アンカーショットガンで上って足を着き、うつ伏せになって銃を構えてスコープを闘技場の方へと覗いた。
スコープ越しから見えてくるのは、サンデーが虎のモンスターの俊敏たる切り裂き攻撃を盾で防御しているシーンだ。十字線を虎のモンスターの頭部に狙いを定めてダイヤルを調整しつつ、有効な弾薬の候補としてまずは貫通弾を装填して槓桿をコッキングし、薬室に弾丸を送り込んで集中すると共に引き金を引いて、被弾した相手の様子を伺うと。
「弾かれたか」
ならばと思い。強力な打撃力と貫通力を有する重量弾を入れて再度狙撃する。
「同じように弾かれるのか。そうなると爆裂弾しか頼れないぞ」
着弾と共に炸薬量に応じて爆発ダメージをモンスターに与えることのできる特別な弾薬だ。普段の狩では上級モンスターのみしか使用を許されておらず。そうなるとあのモンスターの討伐難易度は上級に相当する相手であるということになるわけで。
「けちってもサンデーに負担がかかる」
そう思い切って爆裂弾を使って狙撃すると。
――グッ!?
部分的に緑炎の闘気が、爆裂弾の爆発と同時に霧散してダメージを与えた。どういう原理でそうなるのかは分からない。となると相手は爆発ダメージには有効な耐性がなく。これを使って上手く相手を追い込めば勝算がある!
「サンデー。弱点は爆発攻撃だ。バンカーバスターライフルに榴弾を装填するんだ!!」
『あいよご主人!!!!』
と、指示を送ったタイミングで虎のモンスターがシュッと後方へと下がって間合いを取り始めると、その身からで居ている闘気を更に濃厚な緑へと変えると同時に、先ほどの突進攻撃の構えをとってサンデーに強力な一撃を加えようと動き出した。突進までの時間はまだある。それまでに榴弾を装填できたらいいのだが……。
『ご主人!!!! 榴弾の装填完了だ!!!!』
「タイミングを見計らって相手の頭を狙って砲撃するんだ!!!!」
『やってやる。狩ってやるんだ!!!! 私が強いんだとあいつに証明してやる!!!!』
しばしの沈黙が訪れる。どちらも居合いの構えを取り合い、そしてどちらが先に出るのかを読み合っており、そして。
『……くる!!!!』
――グォオオオオオオオオオ!!!!
激しいジェット音のような風圧の音を全体に響かせながら虎のモンスターが突進攻撃を仕掛けた。それと同時に、
――ズドン!!!!
サンデーの構えるバンカーバスターライフルが火を噴き砲弾を彼女が狙った方向へと向けて放つ。
両者の仕掛けた攻撃が一瞬にして詰め合い、激しい衝突と爆音と、そして赤と緑の爆炎をまき散らしながら土煙を舞い上がらせると。
「どう……なんたんだ……?」
サンデーからは応答がない。叫び声はなかった。生きているはずだ。対して虎のモンスターのほうはどうなっているんだ……? 土煙が晴れるまでその様子を見ることが叶いそうにないな。
「あ……」
少しして土煙が晴れてきた。闘技場の中央ではサンデーがボロボロの姿になっており、ケホケホと咳き込んで苦しんでいる。そして虎のモンスターはというと……。
――グルゥ…………。
地面に横たわって、全身に負ってしまった火傷にもがき苦しんでいた。
「楽にしてやらないとな」
俺は闘技場にいるサンデーと合流することにした。武器を背中にしまい、その代わりにナイフと共にサンデー用のモンスターの餌が入った革袋を両手にもって降りていき。
「ご苦労さんサンデー」
「おう、お疲れだなご主人。で、さっそくだけど。あのモンスターをどうする?」
「楽にしてやらないとな。あの火傷では生きていけないだろう」
見逃しても孤独に苦しみながら死んでいくなんていうのはやりたくはないからな。これから命を奪うものとしての責務を果たさないといけないからな。
「俺のエゴだけれど。最後に飯くらいはくれてやろう。食い終わったらそれでナイフでトドメをさす」
「あとでご主人の弁当くれよな。私のおやつを使うならそれくらいしてくれないと困るよ」
「ああ、いいぜ」
虎のモンスターを楽にするとは。
次回の更新予定日は7月11日です。よろしくお願いします。
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