274話:氷山に座する冬猛猿王と冬猛猿の討伐 その5
「はぁ……はぁ……はぁ……」
『ボルルルルッ!!!! ボォオオオオ!!!!』
ゴリラの体躯に白毛の雄々しさが通常の個体であるスノーゴリラよりも際だっている。通常の水黒い顔面は赤くなっており、怒りに満ちあふれているようだ。
先陣として襲い掛かってきたスノーゴリラの軍勢をサビは辛くも殲滅し、死体の山を築き上げてきた。しかし、それでも勇猛果敢に臆すること無く、スノーマウンテンゴリラは雄叫びを上げて体長は3メートルにも及ぶ身体で、サビの前に雪しぶきを巻き上げて飛び降りて立ちはだかる。彼女はその挙動にバックステップを駆使して柔軟に間合いを開けると、
「少し見積もって足りるかしら?」
エネルギーマシンガンの残量を確認しつつ、相手の動きを様子見ることを考えていた。そして次の戦いが幕を開ける。
「雪玉を投げつけて何になるっていうの?」
人が丸々と収まりそうな大きさの雪玉をこしらえて、スノーマウンテンゴリラがサビに向かって幾度なく投げつけてくる。それをスッと場所を移動しながら避けていくサビに対し、スノーマウンテンゴリラは更にその場で少し跳躍した後に、バネのように勢いを殺すこと無く、サビに向かって飛びかかり攻撃を仕掛けた。サビは、
『ボウ!!!!』
「くっ、間一髪でしたわね!!!!」
スノーマウンテンゴリラがこちらの動きに合わせて、もとより予測していたのだろう。彼女が避けて向かった場所に合わせてスノーマウンテンゴリラが降りてきたのだ。普通のハンターならそこで下敷きになって瀕死の重傷を負っていただろうが、アームガンシールドの自動防御機能に助けられて命を救われることになった。シールドの上に乗り掛かっていたスノーマウンテンゴリラは、その場から更に跳躍して後ろに下がって地面に降り立つと。
『スゥ――ゴオオオオオオ!!!!』
空気を大きく肺にため込んで口から雪を交じらせた突風状のブレスを、シールドを構えたままのサビに向かって吐き出した。
「うぅ……寒いですわ……!!!!」
シールドがその衝撃を和らげてはいるが。気温の変化にまでは対応できていなく、彼女の体温を根こそぎ奪い続けている。サビはこのままでは凍死すると思い。ブレス攻撃をシールドでガードしながらエネルギーマシンガンの銃砲を回転してリチャージを試みている。その間にもサビの体力は奪われ続けており、スノーマウンテンゴリラがはき続けているブレス攻撃の勢いは少しずつ弱まりつつあるが止まらないままだった。
『ボウゥ……ボウゥ……』
「あら?」
ピタッとブレス攻撃が止んだ。サビはその変化に気づき、ガードモードを解除してスノーマウンテンゴリラを見ている。
「息が苦しいのかしら?」
スノーマウンテンゴリラがその場で立ったまま、ぜぇぜぇと息苦しさのあまりに呼吸を荒げており、その様子を見て警戒をしつつある程度のリチャージを済ませた、エネルギーマシンガンの引き金を指で弾いて弾幕を張り、守りからの攻勢に転じた。相手の反撃に対してスノーマウンテンゴリラは復帰ができずにおり、彼女の張りだした弾幕に飲込まれると。
『ウゴォッ!?!?』
水に溺れたかのようなうめき声を上げてその場で大ダウン状態になって横転し、その場でもがき苦しみながらジタバタと、どうにかして起き上がって立ち上がろうとしている。
「ここでカタを付けますわ」
――カチ、チチチチチチッ……。
「あらっ?」
エネルギーマシンガンにトラブルが起こってしまったようだ。
「……チッ、これだから武器は信用ならないのよ」
このまま戦っても不利だ。そう素早く結論を付けたサビはその場からサッと移動して狩を切り上げることを決めた。
「次に会った時があなたの命日です。覚悟してなさい」
『ボゥ!!!!』
「ふんっ」
『アババババッ!?!?』
サビが一瞬だけの間を使ってサンダービーストの姿に戻り、その場でスノーマウンテンゴリラに正体を明かした。そして怯えるスノーマウンテンゴリラに対して放電攻撃を行ない、スノーマウンテンゴリラをビリビリと麻痺状態にさせた上で、ベースキャンプとは反対側に身体を向けた後に、流し目で見下ろしつつ、そのまま痺れて動けないスノーマウンテンゴリラを置き去りにして走り去った。
狩場を離脱し、大きく迂回するように遠回りをしてベースキャンプに到着したサビは、その姿を人間体に変えて大きく背伸びをしつつテントの中に入り、近くにあるベッドに飛び込んでぐったりと泥に沈み込むように眠りについたのだった。
「あぁ……食事の支度をしておかないといけませんでしたわね……でもまぁいいですわ……」
ご主人様の言うハンバーグの調理にでも挑戦しようかなと思いつつ、彼女は夢の中に入り込んでいくのであった。
サビが大物ターゲットと遭遇し激闘を終えた同時刻。サトナカカリトとホワイエットは空に飛んで偵察をしていた。
次回の更新予定日6月29日です。よろしくお願いします。
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