268話:洞窟の中で
突如天気が変り、洞窟の入り口に入った直後に猛吹雪が吹き荒れる天候に巻き込まれてしまった。外には暫く出られそうに無いな。
「とりあえず雪風がしのげる場所には入ることができたが。中はどうなってるんだ?」
「みんなで探索する手もあるけれど。外の様子を把握とか、警備をするのに一手がいるわ。ここはひとまずカリト君が奥地に向かって探し回ってもらえる?」
「そうだな……」
そう話しを聞きながらメンバーの様子を伺う。サンデーは完全に体力の限界を迎えて地面に座り込んでしまっている。サビはどうだ?
「サビ。ここで休むか?」
「行きたいと言いたい所ですわ。でも、身体が思うように動かせなくて。寒いですわ……」
「無理は禁物だ。暖をとって身体を休ませろ」
「ごめんさいご主人様……」「ゆるしで……ご主人」
ホワイエットはまだここにはたどり着けてない。吹雪の中でも無事でいてほしい。さっきから感情共有の力で声を掛けてもノイズが走ってよく聞き取れないのだ。
「病人の看病を頼んだぞリリィ」
「ええ、任せて。物資の中から低体温症に効く飲み物を用意してあるから。それを使って休ませるわ。毛布とたき火も準備するわね」
「ありがとうリリィ……グシュン!」「感謝しますわリリィ」
完全に冬の行軍が失敗している。ここからどうすればいいんだよ。今の俺には行き当たりばったりでしか考えられない。
「じゃあ。ここの安全確保を頼んだぞ」
「気をつけてね」
セイバーMk.2を手に取り、そのまま奥地へと歩を進めていった。でも正直にいって俺も体力的に限界に近いんだよな。それでも任された限りは務めを果たさないといけないな。
「モンスターの住んでいるような痕跡はないか……。となるとここは自然にできた洞窟か……?」
地殻変動でまれに山に亀裂が走る事で、こういった洞窟ができる事があると本で勉強したことがある。かつてはここも活火山だったんだろうきっと。ボルカノではよくある現象なので、本当に無限大に新たな洞窟が見つかるので、金銀財宝を目当てに冒険者や商人がハンターを引き連れて現地に赴く事なんて日常茶飯事なわけで、つまりその。
「もしかするとここは誰も入った事の無い洞窟だとしたら……?」
もしかすると財宝になりうる鉱石が眠っているかもしれない……。想像するだけでなんか凄いと語彙力を失いそうだ。
「あぁ、もう先人が入ったあとだったか」
たいまつの先に照らされて見えているその光景に落胆と憐れさを感じた。どうやらその先人に声を掛けても『返事がない屍のようだ』で終わるな。古い銃を抱きかかえて座ったまま死を迎えてしまったようだ。周りには古い金貨や宝石が残されている。紙の端切れには古い文字で。
『やったぞナナリー! 俺は大金持ちだ!!!!』
「触る神に祟りなし。どうか安らかに……」
その場で座り込んで合掌しておこう。欲を掻くと俺もこうなるかな。まあそれはそれとして。とりあえず来た道を戻るかな。ここはもう行き止まりのようだし。何も無い。とりあえず遺体のある洞窟なのは分かっただけで充分だ。
「多分。あの場所で怪我をしてそのまま死んだのかな?」
どのみち知るのはその本人のみだ。気にすることはない。俺達には全く関係の無い話しなんだから。
「ただいま」
「おかえりなさいカリト君。どうだった?」
入り口付近に戻ると。既にちょっとした簡易キャンプの設営がすんでいた。ゴウゴウと焚かれているたき火の周囲で、サンデーとサビが眠りながらくつろいでいる。リリィはその近くでマグカップを片手に、椅子に座りながらホットドリンクを飲んでリラックスしていた。
「モンスターの住んでいる痕跡はなかった。ただ奥地は行かない方が良い」
「ん?」
「先客が眠っていた」
「つまり死んでいる人がいたってことね?」
「うん」
「どんな死に方をしてるかは聞かないでおくわね」
「そりゃぁ、誰だって興味本位で聞きたい奴なんていないだろう」
「ええ、そうね。だから聞かないでおく。縁起がわるいし」
「だな。とりあえず俺もゆっくり休ませてもらうよ……疲れたわ」
「二時間後に起こすね。交代しながら警備してね」
「ああ、わかったお休みリリィ」
「お休みカリト君」
リリィにキスと毛布を貰い。そのまま側に横たわって眠りについた。
洞窟の安全を確保した先にあるのは?
次回の更新予定日は6月22日です。よろしくお願いします。
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