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260話:立ちはだかる難敵『アルテミスモンスター』その3

 アルテミスモンスターとの戦いは長時間にも及んだ。時計がないので体感的には2時間くらいだろう。ふとアルテミスモンスターが俺の曲射攻撃をマネするように、口を天井に向けて火を噴き出して、俺の頭上に火の粉の雨を振らせる攻撃を仕掛けてきた。


「あっつぅっ!?!?」


 服につく火をいくら手で払っても、頭上からどんどんと降り注いでくる火の粉には無力で、俺はその場から全力で逃げ惑うしかなく、それを愉悦にみたニタ嗤いでくつろぎなら見ているアルテミスモンスターは突然。


「ボクはね最初。この魔薬を作ろうと思ったのは何も世界を支配する為に発案から生産までやったわけじゃないんだよね。もとはいえばボクの本業だったハンターの仕事から始まった事だったんだよ」

「な、なんだって!?!? あちちっ」

「密猟をしつづけてるとね。当然として僕たちの界隈を潰しにかかってくる連中がいるわけなんだよ。そいつらの言い分は元ある自然系を壊すなとさ。人間が管理している領分での密猟行為は断じて許さない。そんなの自然からすれば人間の勝手なエゴで決めたルールだよ。僕たちはそれに疑問に思いながら狩をしてきた。そして気づいたんだよ。この仕事はあまり美味しくないビジネスだと」

「だ、だから密猟に走って道を踏み外したのかよっ!?」

「はぁ、リフレクトヒールが追いつかないとはねー。こまったもんだよ」

「うん。最初はとても緊張したよー。だって人間で管理している場所とは違った未開の地での密猟だよ? そんな所で命を張って金を得るために得物を刈り続けていくんだから。おかげでいい金づるのモンスター達を捉えたり狩ったりして商売はできたんだけれどね。でもやっぱり狩をし続けてるとモンスターは減っていく。競合組織とは対立して喧嘩になる。んでボクはそこで何かいい密猟行為に繋がる手段はないかと思った。その時。ボクが迷い込んだ未開の地にあった古代遺跡で探索をしていた際に。月の幻獣との邂逅を果たしたのさ」

「ウォーターハザードファイア!!!!」

「へぇ、水の曲射で相殺するのか。いい判断だ。でも遅いよねー。って、まあその幻獣はもとはといえばこの世界には存在しない。してもいけない存在だったんだよ。彼は言ったのさ。『我は異なる世界から逃げ延びてきた』とね。彼の事をいろいろと聞いてみると。この遺跡もなんだかよくわからないけれど転移装置の役割を果たしているらしくて。つい2000年前に。時代錯誤も分からない。信じられない膨大の年数をここで過ごしてきたらしいのさ。それも神獣とその元で使えている4つの属性を操る幻獣王達のせいで。彼の主の闇の幻獣王バハムートが戦いに敗れてしまい。その勢力に属していた彼はその時の戦いで戦傷を負って――」


 と話しを聞かされているなかでシャーリーが。


「てっきり闇の勢力の眷属達はバハムートが消滅して滅んだと思ったのだけれどなー。だから僕たちは世界が平和に導かれて落ち着いたのを見て。自分達の力はこの世界には不必要だと判断して別の世界でのんびりとスローライフを送ろうってなってこの世界に転移したんだよね。まさか転移先にやってきたこの世界で月の幻獣が落延びてたとは……。僕たちの責任だね。本当に申し訳ないよ」

「――それで月の幻獣は人間のボクを見てこう言ったのさ――


『我は無限大の力を持つ最強の幻獣なり。ヌシの中に秘めた悪意に魅力を感じておるからに命を奪わずに糧とはせずにおる。どうだ。この我と契約を結んでお主の望む世界を作り上げようでは無いか。さすれば我もその力を使って再び憎きあの光の眷属共との戦いに挑む事ができる。悪くない話しだろ? 我と契約を結ぶことでお主の生きる世界はお主だけのモノになれるのだぞ?』――


「ボクはそれを理解した。そしてボクの知らない叡智をもつ彼に自分の困り事を話した。すると彼はボクに魔薬の製造を促したのさ。人間を使って魔物につくり変えてしまえばいい。ボクに従順な人間を組織して。その上でボクが絶対の主であると洗脳した後に、頃合いをみて栄誉ある儀式と称してその人間達には魔物になってもらい。そして死んで貰って素材になってもらう。モンスターは。あいつらは喋れないしなにも心を持たないから適当に実験動物として役に立って貰って。それで手に負えないなと思ったり、資金繰りにこまったらそいつらを適当な言い分でギルドに討伐依頼してハンターを派遣させて代理で討伐させばいい。狩られたモンスターは代金と引き換えに回収してそれを普通に市場に流せば良い。実に合法的だろ?」

「…………」


 俺は奴の言葉を聞いて頭の中でボルカノで帰りを待っているサンデーやホワイエットやサビの笑顔で居る姿を思いだしていた。


「あ、そうそう。君が身を隠していたあの学園ね。あれ、ボクが創設した学園なんだよ。学校の目標は伝説のモンスターテイマーのような幻獣使いになる! まっ、所詮むりな話しさ。それはあくまで表向きの話し。将来有望な組織の幹部をたくさん輩出するための養成学校さ。ラパンを君のせいで失ってしまったのは実に残念だけれど。まっ、他にも将来有望な幹部になれそうな人間は山ほどいるわけだし。それにそこに入って落ちぶれた人間がいても労働者としての人生を歩めることを保証しているんだし。将来は魔物としてボクの為に役に立てるんだからね。要するにこの街はボクの実験場。そして組織を強固な物にするための大事な人間牧場でもある!」

「……なるほど。よく分かった」

「うんうん。理解してくれたんだね。どうだい。君は有望な能力をもつ人間だと魅力に思っている。この際だから君にもボクの魔薬を分けてあげるよ。これを飲めば君も魔物になれるよ? どうだいサトナカカリト。君も魔物にならないかい? 適合したなら君は素晴らしい素質をもった幹部になれる!」


 アルテミスモンスターは柔和な雰囲気を持ちながら片腕のこぶしを伸ばしてゆっくりと開き、掌の上にある人間の手のサイズで持てる大きさのポーションを差し出してきた。

 その誘いに俺は顔を俯いて、


「……ならない。俺には俺の生き方がある。お前のいう魔物で幹部になれだって? あんたどれだけ人間やモンスター達を道具モノとして見てきたんだ!!!! お前は本当の意味で人間じゃない。その醜悪な姿をした本当の意味での魔物だよ!!!!」 


 目を見開いて気迫のこもった怒号でアルテミスモンスターの手に差し出されている、魔の色が籠もった液体入りのポーションを矢で打ち落とした。矢を受けて割れたポーションからだらだらと液体がアルテミスモンスターの掌から地面に垂れ流れている。


「……おのれ。貴様はボクを本気で怒らせた……!!!! この姿ではどうも君との相性は悪いようだ。ならば次の段階。ボクにはこの研究が現時点での限界。それを使ってでもお前を殺してやる!!!! 自分のとった間違った行動に。死んでからあの世で後悔しろ!!!!」

「気をつけるんだカリト。ここからが本当に生き死にの分かれ道だ!!!! ボクも持てる全ての力で君を支えてみせる!!!!」

「…………」


 シャーリーの援護を約束してくれる言葉の後に、アルテミスモンスターが真の姿を露わにした。背中から血しぶきをまき散らしながら滴らせてコウモリ状の翼を生やし、その巨体をムクムクと風船のように膨らませながら異形の球体に変化させ、辺りに紫煙を発生させながら空間全体を瘴気に満たしていき、天からゆっくりと降りてきた光のカーテンからバサッ、バサッ、バサッと遅れて羽音を鳴らしながら降りて、


「サァ、死の準備は出来たか? これが我の真の姿である。月の幻獣である我をここまで追い詰めてきたそなたの戦い。実に素晴らしき誉れである。だが、貴様はその誉れのあまりに身を滅ぼすことになるのだ。アルテミスよ。我との盟約を存分に果たせ。このモノを倒さなければ将来は貴様の身を滅ぼす勇ある者として魔導の前に立ちはだかるぞ」

「あぁ、月の幻獣よ。その言葉通りに目の前の少年を消す事を約束しよう。さあフィナーレの始まりだ!!!!」


 おぞましい雄叫びと共に霧が晴れていき、その衝撃に気圧されていた自分が目を開けて前をみると。


「これが……お前のいう魔王の姿かよ……」

「我は魔王アルテミス。我の魔導を前に立ち阻む者よ。何故貴様は生きようと足掻く? 何故故に貴様は戦おうと無謀にも武器を取る?」

「もう後には引けないところまで来てると分かったからさ。ここでお前を止められなかったら。多くの人達の涙が流れてしまう事になる……。そんなのは嫌だ。俺がここで涙を流しても別に構わない。俺は絶対にお前を討ち倒す!!!!」

「ぶぅはぁはっはっはぁっ!!!! さあお喋りはお終いにしよう。これで君は後戻りはできなくなった。この戦いは記録には残せない。さあ存分に君の力を我の前にみせておくれぇ、ぶぅはぁはっはっはぁっ!!!!」


次回の更新予定日は6月7日です。よろしくお願いします。


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