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257話:対ラパン戦 その2

 戦闘は更に苛烈さを増していく。相手の疾風迅雷の力がこちらの動きよりも圧倒的に上回っており、俺は普通の人間だからどうしても防戦で相手を迎えるしかできていない。乱れるナイフの一閃や、威力が更に凶悪になった雷幻魔術の一撃による度重なる攻撃が俺に降り注ぐ度に、自分は相手が人の姿をしたモンスターなんじゃないかと思うほどに、ラパンの圧倒的な戦闘能力の高さに勝算が見込めずにおり、


「どう、もうこれで我慢の限界なのかしらぁ?」

「一方的じゃ無いか……」

「当たり前でしょ? そんなの言ってたら戦争だってできはしないわよ」


 相手の振りに合わせて避け続けるのもそろそろ疲れてきた。このままでは袋のネズミになりかねない。


「一応いっておくけれど。あえて君を疲れさせる為に手加減しているんだけれど。そこんところは分かっている?」

「な、舐められたものだな……」


 呼吸も荒くなりつつある。体中が酸欠に近い状態にあるのが感じる。アテネの強弓でやれるにも相手の攻撃範囲には相性が悪く。弦を弾く事さえままならない。


「さあさあ。私の為に楽しく踊り続けてよね! でないと楽しくないショーになるから。それでアルテミス様と対等に渡り合えると思えるとでも思っているのかしら? それこそ傲慢よ」


 一瞬の間合いを解いての後方へ下がり、ラパンは構えを解かないまま挑発的な笑みになって俺をバカにしてくる。一応はここまでは相手の猛攻を全て弓矢1本でパリィし続けることができた。


「そんな事なんておもっているわけねぇからな。今はお前をどうすれば倒せるかで悩んでいるんだよ!」


 その瞬間。俺の頭の中に電流が走る。その直後。


「……なるほど。そうやって使えば近接戦でも戦えるんだな」


 アテネの強弓が俺に映像イメージをつかって相手との戦い方をアドバイスしてくれた。


「さぁて、次でお終いかなー。すぅ……必殺、雷神破斬!!!!」


 ラパンが天にナイフを突き立てると、上空から青い稲妻の一閃が落ちてきて、彼女はその稲妻をナイフの刀身に宿らせた。


 力が宿ったナイフはその刀身を長く伸ばし、稲妻の剣へと変貌を遂げていた。


「カリト君! 愛していたよ。さようなら!!!!」


 来る!!!! 俺はとっさに膝立ちの射撃体勢をとり、弦を弾いて目を閉じ、アテネの強弓が求めている弓矢を顕現させた。その名も。


「必殺。フリーズボルト!!!!」

「あははははははっ!!!!」


 アテネの強弓から強力な弓矢『フリーズボルト』がはなたれると同時に、ラパンが肉迫する。


「うぅ!?!?」「うっ…………」


 俺は自分の足下を見た。


「…………」


 その次に目の前を見ると。


「か……りと……くん……」

「そ、そんなっ!?!?」


 俺は語彙力を無くすほどに驚いた。


 ラパンは元の姿に戻っていた。


 フリーズボルトを胸部に受けており、そこからジワジワと血では無く、矢を中心に発生して広がる氷に全身が覆い尽くされていき、彼女は逃げ惑う人間の立ち姿を表現した氷像になってしまった。


「ほう、あの強さを持つラパンに勝つとは予想外だな」

「…………」


 生きているのは死んでいるのかさえ分からない彼女の姿に力無く膝をついた。いや、これは……死闘だったんだ。生きていられるのはどちらかだけの戦いだった。彼女が生きている事を祈ろう。そして。


「暫くそこで反省してろ」

「生きているのかさえ分からないそこの氷像に語るんだ君は」

「黙ってろマッドサイエンティストが」

「おーっこわいこわい。まぁ、君の怒るところを見て観察したかったから。丁度いいサンプルがとれたね。ま、もっとも。君の喜怒哀楽を得てもボクには何にもならないただの研究材料にしかならないんだけれどね」

「味方がやられて悲しまないのかよおまえは?」

「味方? 残念だけれど。そこの彼女はボクを殺そうとして擦り寄ってきた害ある人間だよ? そんな奴を味方だとボクは思わないさ」

「……知っていたのか?」

「知ってたもなにも。ボクの幻獣が見抜いてたさ。まっ、ボクも彼女があの時の少女だって気づかなかったのがちょっとしたミスだったかな」

「お前がラパンの両親を殺した犯人なのか……?」


 そして彼女の人生を狂わせたのも含めて……。


「うん。そうだね。あの時のボクはお金に凄く困ってたからさ。だって密猟で得たモンスターの素材を売りさばいてるのに。かえってくるお金はたったのこれぽっち。商人共は借金で商売をしている連中ばかりだったから。商売あがったり。そんなことが続いてた時にボクはやった。生きるために必要な行為だったんだよ。こんな街で暮している人間には外で繰り広げられている生存競争になんか興味がないから分からないだろうけれど。いわば生きるための競争によって弱者だった家族は強者のボクに淘汰されたんだ。そしてそれを理解したボクは社会にその仕組みを導入するために街を実権で乗っ取ろうと思った。そんな時に月の幻獣と運命の出会いを果たしたんだよ!!!! なんて素晴らしい!!!!」

「どうやらここにはもう幻獣は居ないようだね。彼女は操られているみたいだ……」

「そうか……」


 でも半分操られていても本心を語っている気がするな。ここで俺がとるべき対応は1つ。


「お前を逮捕する。罪状は殺人だ。他については追々で司法機関が追訴するだろう」


 弓を構え、手遅れのアルテミス・ノーランに向けて矢を放つ準備を整えた。


「捕まえられるならボクを捕まえてみろ!!!! さあゲームのはじまりだ!!!!」


 次の瞬間。アルテミスに異変が生じる。


「君は魔薬を知っているかい? アレはボクが発案し。開発した中でも最高傑作に値する。人間をモンスターの姿に変える事のできる薬物だ。その過程で邪竜人の叡智を頼らさせて貰ったが。それでもあれはボクが生んだものだ。だからこうやってボクはその研究成果を応用して次の段階に移っている。この力はまだ未完成で試作品だ。将来的にはボクの好きに使えるモルモットを大量に用意して。そいつらを使った人体実験をさせてもらうよ。そしてそこで生み出された人造モンスター軍団を率いて世界を支配する魔王になるよ!!!!」

「…………」

「愚かな人間はどこの世界にでもいるものだねカリト。どうもボクの思っていたとは予想外な展開になりつつあるようだ」

「さあ、ボクの新たなる研究。『進化の秘法』をお見せしよう」


 その次の瞬間。彼女が白衣を脱ぎ捨てると同時に白い煙が巻き起こり、


「さぁ、これがボクの新たなる叡智の力で生み出した姿だよ」

「マジのモンスターじゃないか……」

 

 紫の肌に、四足歩行で地面に立つ、四つの腕をもつ巨大なライオンの姿をしたモンスターが現れた! 声はアルテミスなのは分かる。


「名付けてアルテミスモンスターだ!!!! ここからボクはもっと強くなって。自分が理想とする究極の魔王へと進化していくんだ!!!! さあ、実験を開始しよう!!!!」


次回の更新は6月2日です。よろしくお願いします。


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