251話:脱出に向けての準備
寮に戻り、支度をしながら考えごとをしていた。
ようは俺の考えはシンプルにこうだ。夜の空を飛んで塀を乗り越えてしまえばいいという案だ。
――なら事前に出来ることを確認するべきじゃろうな。でないと行き当たりばったりでは上手くいくことも行かないのが定石というモノじゃからの。
「てなわけでサイクロン。俺が伝えた人数であの塀を乗り越えることができるか?」
『当たり前だ主殿。我は幻獣王だぞ。そんな事が出来ないとなれば王としての資格は無しだ』
出来るとなれば一安心だ。あとはどこからどう飛び抜けて越えていくかだ。そう思案していると。
「ねえ、カリト君」
「……ラパンか」
「うん、もう驚かないからちょっと寂しいかな」
「心臓がいくらあっても足りねえからな。慣れればどうってことなんてない」
「……最後まで君は私のモノになってくれなかったね。残念だよ本当に」
「言っただろ。俺はリリィの事が好きなんだ。愛してもいる」
「その名前を言わないで……」
「え?」
「言わないでよ……私の為にも……」
「なぜソレを言われないといけないのかが分からないが。とにかく今は支度をしないといけないんだ。雑談なら後にしてくれ」
「いやだ。少しでも君との時間を大切にしたいの!」
「お、い!?」
ラパンがギュッと後ろから強く抱きついてくる。背中からの圧迫感に気圧されながら。
「……渡さない。絶対に君は私のモノになるんだから。私は幸運の力をもって手中に収めたいのに。それでしても出来ないのはどうして?」
俺にはモンスターテイマーの力によって、そう言った類いのチートが効きづらいからだ。さすがにあの力には不覚にもやられてしまったから絶対とは言い切れないところが辛いな。恥ずかしさよりももどかしさを感じていた。
「答えてよ」
「答えても理解の出来ないことだ」
「……わかった。なら私にも手段を選ばざるをないんだね……ねぇ?」
『主殿!!!! その女から離れるんだ!!!!』
「はっ?」
次の瞬間。
「ゴメンね。君には私の為に悪い事をしてもらう道化になってもらうね」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?!?」
『く、くそ。なぜだ!? なぜマテリアルから出られないっ!?!? シャリオス様っ!?』
サイクロンとラパンの言葉の後に、俺は強烈な電気の力を感じてビリビリと共に感電接触をし、目の前がチカチカした後に床に倒れると共に頭をぶつけて気絶してしまった。その刹那の間際に。
「お疲れさん。探す手間が省けるっての」
「はい。これで良いんですね?」
「そういうことだっての。さてさて、このガキを連れて行かないとな」
どうしてここにスーツ姿のビリームがいるんだよ……? なんでラパンはそいつに寄り添っているんだよ……?
「幸運の女と一緒にヤベぇ伝説の神賦の才っていうの? モンスターテイマーの力をもっているかもしれないガキを手にできたって。俺、まじで昇進物じゃん!」
「そうですねビリーム様……」
俺はその2人のやりとりを最後に意識が途絶えてしまった。
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