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250話:中央にそびえ立つ機械の城

 アルテミス城。このアテナの街の中央の位置に天高くまでそびえ立つ機械で出来た城がそれである。夜になると白く輝いて真っ暗な街を照らし、まるでそこが街の中心なのだと象徴しているかのようか印象が残る、夜の街、アテナの姿を語るのには欠かせない風景だ。


「……最初は難しい任務ていうか。休暇の為にここへやってきた。でも、この街を知っていく内にいろんな事で色んな人達が傷ついて悩まされて。俺も俺でモンスターテイマーの力が成長して。こうしてシャーリー。お前と隣でこう話しをしているんだよな」

「なにをこれから死地にいくぞみたいな雰囲気醸し出して遠目にあるダサい建物をみて語っているのか。ボクには全然理解の出来ない話だね」


 アテナの城壁の展望台の手すりにもたれかかりながらそう聞かされても、今の俺には何も感じることはない。あそこに富の全てを集中させて支配を実行している悪人が住んでいるから。機械の城に住む魔王は今日もこの街の人達の幸せを樹木のように日夜を問わずに吸い上げ続けている。


「月の幻獣。なにか知っているか?」

「そうだね。その幻獣の名前さえ分かれば大体は見当はつく。闇の幻獣王バハムートの話しを覚えているかい?」

「まあ、朧気にな」

「うん。そのバハムートは既に僕たちが滅ぼしたんだけど。どうもその残党が各地で悪さをしているみたいだね。モンスターテイマーが現れれば僕たちも導かれて引き合う運命にある。出会い方は最悪だったけれどね」

「わるかったな」

「まったくもってそうだよ。とはいえ、月の幻獣が人間を利用しているなら見過ごせないかな。放っておけば手遅れになるみたいだし。現にミニョルがあの場所で囚われの身になっているみたいだし」

「前にサイクロンが話してたな雷幻獣王ミニョルのこと」

「うん。この街の電気は全てミニョルの力によって生み出されている。この前のファントムバレットの件で確信を得ることができた。どういう手段でミニョルを捕まえたのかは分からない。でもミニョルの力を無理矢理に使って街全体の電気を供給している」

「助けないとな」

「そうだね。けれど代償も伴うね」

「なんだ?」

「この街から電気が無くなることだよ」

「……あ」

「君はその責任を理解して戦う事ができるかい?」


 俺はそこで答えるのに困ってしまった。そうなったらこの街はどうなるんだよ? 


「どうやら決断はできないみたいだね。残念だよ。そんな君がモンスターテイマーの力を手にしているだなんてね。結局はその程度なんだよ。今まで君の事を見てきたけれど。周りの人にとか、その場の環境に流されて動いてこなしてきただけ。それが君の弱さっていうならば間違っているとボクは思うよ。モンスターテイマーの力をもつ人間なら。どんなに嫌な事があっても芯をもたなきゃ。いずれ君は都合の良い道具として利用されていくようになっていくよ」

「…………」


 分からなかった。シャーリーが何を言いたいのかを。多分誰が聞いても理解の出来ない言葉だと思う。


「勇気と蛮勇は紙一重っていいたいのか?」

「さーねー。でも、このままずっと学園生活を送り続けていても。君のやりたい人生にはたどり着けずにだらだらとした日常が続くだけになると思うよ」

「俺が立ち上がってあの城に乗り込めっていうのか?」

「ううん。残念だけれどそうしなくてもこの街はあと2年で終わりを迎えるね」

「は?」

「君が動かなくてもこの街が自浄作用を起こそうとしているから」

「なんだそれ????」

「人間って素晴らしい生き物だっていうことだよ」


 ますます言いたいことが分からなかった。


――翌日。


「え、帰ってこいだって……?」

「うむ。アルシェがお主をボルカノに帰してこいと昨日連絡が届いたのじゃ。出立は明後日になっておる。飛竜便も既に手配しておるからそれに乗るのじゃよ」

「え、え、そ、そのなんだよ。お俺は今まで何の為にこの街にいたことになるんだよっ!?!?」

「…………」

「なんで答えねぇんだよグリム!」

「カリト君落ち着いて。アルシェさんの指示は逆らってはいけないよ」

「リリィ。止めないでくれ!」

「いやよ。カリト君がグリム様の話を聞くまでは」

「早とちりはいかんと言わせたいのか?」

「…………なんだよ?」

「内戦が起きようとしておる。それを踏まえて部外者のわしらは即刻退去しなければならなくなったのじゃよ」

「内戦だって?」

「労働者階級の者達が徒党を組んでテロを引き起こしたのじゃよ」

「それが何の因果関係につながってくるんだよ?」

「お主が労働者階級の英雄として象徴的に奉られてしまったからじゃよ」

「えぇ……俺がそのなんていうの。テロの指導者的な立場になってしまったっていうのか……?」

「厳密には違うといいたいのじゃがな……。どうも裏で何者かがそう吹聴してまわって。それで今回の件に発展してしまったようじゃ。いわゆるプロパガンダ工作が行われたと思われるの」

「そんな高等なテクニック。一般では思いつかないぞ……?」

「それを調べる為にも動きたい所じゃが。残念ながらアルシェはネメシスを弱体化させようと画策している組織による犯行だと感じたようじゃ。そこでわしらは直ぐにこの街から脱出を計れねばならぬ」

「ラパンはついてくるのか?」

「ゴメンねカリト君。私はこの街を守る為に残ることにしたの。必ず終わらせる。この街を滅茶苦茶にしたアルテミスを私は許せないから」

「くれぐれも健康には気をつけるのよラパンちゃん。大丈夫。幸運のあなたならきっとその思いを果たすことができるはずよ」

「……そうか」

「ラパンだったかしら」

「そうですねリリィさん」


 リリィとラパンが面と向き合う。お互いに罵り合うのかと思ったのだが。


「短い間だったけれど。カリト君を守ってくれてありがとうね。あなたの願いが叶うことを祈っているわ」

「ありがとうございます……」


 意外とあっさりとした感じで普通に会話を交した。


「とりあえずじゃ。当日に備えて脱出手段を考えなければの」

「おそらくカリト君は脱出が難しいでしょうね。直ぐにでも出立の準備をしないと恐らくポリゼルが動き出していると思うし」

「うむ。そうじゃの……」


 その事で俺は提案をしてみた。


「その、俺の力で空に飛んで脱出してみません?」


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