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243話:狩猟試験場『荒野』 

「ここが荒野か……」


 眼前に広がる一面の景色。全てが茶褐色で構成された岩場と岩山が何処までも見渡す光景。フィールドの奥深くにある、中央に位置するエリアを横切るようにして青く透き通った大河もある。俺の中にあるゲームの世界に出てくるような荒野とは少しかけ離れていた。植生物や鳥類の生息もまばらな感じに見えている。


「ということでここで皆さんには野外活動の為のキャンプを設営していきましょう。皆さんには事前にくじ引きであらかじめグループでワケさせてもらっております。覚えている者同士で固まりなさい」


――わかりましたー。


「それではみなさんキャンプの設営を始めてください。今日と明日の未明にかけてまで行う試験です。このキャンプ設営も皆さんの成績の内に加点されることを忘れないように」


 引率で来てくれているミリシア先生の指示に従った周囲のみんなはグループに分かれてキャンプの設営を始めだした。


「さて、俺もキャンプの設営をしようかな」


 とはいっても俺達のクラスの人数は27人だ。9組に1人端数の人数でやることになっている。ちなみに端数の人間は俺だ。なんでも経歴上の理由で俺は単独での行動も可能だと判断が下されたようで。


「ようはミリシア先生。俺がキャンプ設営のやり方を見せろって言うことなんだろ?」

「ええ、そうですね。あなたは幻獣召喚士であると同時にハンターとしても活動をされていると聞いております。私はハンターの事が好かない。野蛮な戦い方でモンスターを傷つける人種など。見ているだけで吐き気を催してしまう程に」


 だったら俺を見たらゲロっちまうだろ……。そうならないのは大げさに話しを誇張しているに違いないな。とはいえ。


「武器の使用許可は下りないのですか?」

「当たり前です。ハンターは己の身体1つでモンスターと渡り合えると聞いております。やれるでしょ?」

「ご、誤解が酷いなあんた……」

「ミリシア先生と呼びなさい。サトナカカリト最下級学徒」

「あのな……。はぁ、分かりました。とりあえずみんなにはキャンプの設営の仕方を教えて回ります。時間も押しているので」

「そうしてください。では」


 ミリシア先生は眼鏡をクイッと指先で持ち上げてかけ直し、そのまま俺を鼻で笑って身を翻してこの場から立ち去っていった。さてと、ムカつくのも時間の無駄だから今のやりとりは忘れることにしよう。偏見の塊には相手しないのがいい。


「ねぇねぇカリト君! この金属の棒は何?」

「ああ、ペグか。それを地面に工具で刺すんだけど。その前に敷物とかテントの本体とか骨組みを組み立てて準備したほうが上手く張れるからオススメだぞ」

「えーわかんなーい」


 きゃるるんとあざとく同級生のミニカが近寄ってきて手ほどきを求めてきた。見た目と相まってクッソ可愛いなお前。まあそれは兎も角。


「まずこれをこうするんだ。同じように反対側も手伝ってくれ」

「おう、任せろ」

「ええ、いいわよ」

「私もカリト君の隣で見てるね」

「ミニカもこっちで仕事しなさい」「あのな……」

「うぇーんこわーい」

「おいおい」


 ミニカがそのヤバイ体つきを駆使して抱きつこうとしてきた。だがそれをスルッと掻い潜りつつ作業に没頭する自分である。


「あーんなんでぇ!?!?」

「ほらな」「うんうん」

「ほら出来たぞ。これであとは言葉で説明した通りにやってみるんだ」

「ありがとうねカリト君。あとは私達で頑張ってみるよ」「助かったぜ。ありがとうな!」

「ぶー」

「ははっ、じゃあな」


 とりあえずそこから離れることにしよう。あまり関係を深めたくない。


「よし、大体見回った感じでいいか」


 とりあえず使用には困らないレベルの一般的なテントの設営を手伝い終えた。あとは自分専用のテントを用意することにしよう。事前に先生の説明には設ける場所の制限区域は話してなかったからな。


「他の同級生のみんなはあの高台でいいな。俺は見られたらまずいものもあるから出来るだけモンスターの目につかない細道で開けた場所でキャンプを設営しようか」


 とりあえず初めて来るフィールドには必ずフィールドワークで探索をするようにしている。ここはボルカノから離れたフィールドだ。色々と勝手が違うからな。


「はぁ、なんかすっごくわくわくしてきたな」


 早くキャンプを設営して探索ツアーに出かけたい。ついでに試験の課題をクリアすればいい。


『試験の内容を発表します。皆さんの手元にある紙に書いてあるモンスターを討伐しなさい。比較的安全なモンスターを用意して徘徊させております。今日は各部署と連携をとっているので安全です』


 どうやら飼育しているモンスターを使っての試験のようだ。ちょっと残酷のような気もするが。命を奪う限りは心から誠意をもって討伐させてもらう事にしよう。

 何かあれば直ぐにキャンプに引き返して先生に報告する手順になっている。それが無理なら信号弾を上空に放って救援要請を送る。どんなモンスターが危険なのか教えてもらえてない中でのそれは一番リスクが大きいのだけどな……。普通にルーキークラスのハンターでも無鉄砲な行動はやらないぞ。


「俺の討伐対象のモンスターはアンキロポスという草食獣種に部類されているモンスターだな。尻尾のハンマーが特徴的でちょっと自衛心の強い性格らしいし。遠目に狙撃で倒せば問題ないかな」


 と独り言をいいつつ丁度良さげな高台の安全地帯を発見したので。ここにキャンプの設営をすることにした。


「先生には悪いが。無茶で偏見的に基づいて出来たルールは守らせてもらわないからな」


 事前に背中に背負ってあるバックパックに忍び込ませていた分解状態のセイバーMk.2のパーツ全てを、あらかじめ用意しておいた作業台に並べていく。そこから整備セットを取り出して布と整備油を使いながら磨き上げて綺麗にしていき、各パーツ事に組み立ててそのシルエットを露わにしていく。


――ガチャ、チャキン。ガシャ。チキ。


「うん。問題ないな」


 セイバーMk.2の弱点は整備が欠かせない所だ。精密過ぎる故にやらないと故障しやすいのだとカミルさんからは念を押して言われているので、やらざるを得ないところがある。俺よりも彼女の方が一番武器の事について専門家だし、言うことを聞かないと怒られるのは自分だからだ。


「じゃあ行きますか。シャーリー。サイクロンと一緒にキャンプのお留守番を頼んだ」

「うーんいいよー」

『承知した。何かあれば連絡する』


 その言葉を背中に受けて歩き出しつつ手を上げて振りながら荒野のフィールドに出て行った。


次回の更新予定日は5月8日の夕方頃です。よろしくお願いします。


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