222話:学園の治安活動その2
「いいだろう。俺達の前に盾突いたこと。ここで後悔させて詫びさせてやる! 今から召喚幻獣を使った決闘をお前に申し込む!」
その瞬間。回りで騒ぎを聞きつけてやってきた野次馬達がざわつく。どうやら相手が持ちかけた勝負のやり方に何か思い当たるところがあっての事なんだろう。知らんけどな。
「サモンバトルだって?」
「はんっ、そんな事も勉強してないのかよ。さすが最下級学徒のクラスにいるだけあるな」
バカにされても困るんだけどなぁ。
「んで、何をすれば良いんだ?」
「俺達3人が使役する幻獣と。お前の使役する幻獣を戦わせるんだよ」
「ひっ、卑怯よ! よって集って人数不利で戦わせようだなんて!!!!」
俺よりも早く気持ちを代弁してくれて助かるよ。まあ、予想というべきか分かりきっていた展開だったな。完全に相手は俺の事をなめてかかってきている。
『主。どうやら相手はこちらがどんな存在であるかを知らずにいるようです。ここは私にお任せ頂けるのであるならば。必ずや勝利をお見せいたしますぞ』
「サイクロンのほうも遠回しに頭にきているみたいだな」
そやぁ、そうだろ。目の前で3対の下級幻獣を召喚してきた時点でな。うん。こっちは幻獣王がいるんだぞ? あと神獣も。
「どうした? お前の幻獣は出てこないのか?」
「ひとつ言っておく」
「あっ?」
「俺は今かーなり怒っている」
「ははっ、だからどうしたんだっての?」
「ちなみに俺の幻獣は俺よりもかなりにキレてるからな。そこは覚悟しておけよ?」
「えっ?」
「こい、サイクロン!!!!」
「あっ――あぁ……!?!?」
『さぁて、どう切り裂いてやろうか愚かな人間共よ。そしてその庇護下でのうのうとうつつを抜かす下級の幻獣共よ』
俺は召喚マテリアル『サイクロン』の水晶玉を掲げた。まあ、結果は誰が見てもお察しの通りな訳で。
「げっ、幻獣王だと……? うそだろぉ……」
「どうした。ひよった鶏みたいな声を出して? 言っただろ。俺はいまもの凄く怒っているって」
その言葉に反応して主人達を守る幻獣達も酷く怯えた様子でサイクロンと対峙をし続けている。まあ、このまま見逃してやりたいっていう気持ちは少なからずあるけれど。こいつらは学生に扮した犯罪者達だ。学園の風紀を乱す輩は容赦なく排除しろと、ルナ先輩ならびにグリムからは厳命を受けているからな。
「サイクロン。跡形も残らずそいつらをタイフガで消し去れ」
「タイフガ……ってあの極大竜巻魔法のことっ!? だめよ! あの人達が死んじゃう!!!!」
死ぬ? あぁ、そっか。ここは俺の知っている世界とは違う別世界だったな。死が日常的に隣にある事の無い場所だったな。
「お願いだ! 悪かった! 学生に変装して悪さをしてたのは謝る!!!! 連れ去った女子生徒達の居場所も全部吐く! お願いだから命だけは……!!!?」
必死の懇願。顔を涙と鼻水でしわくちゃにして生きる事にすがろうとする男達の姿に思わず周囲の目も冷たくなりつつあり。
「ていうわけだ。えと君の名前は?」
「えと、ムーブです……。本当にこの人達が犯罪者なんですか……?」
「信じ切られないと思うけれど。いまこの学園では黒い影が。まあ、これは内緒な。学園の風紀を乱す悪い連中が外からやって来ていてな。詳しい事は知りたければ勝手に聞きにこいよ」
「……いえ。今の私には追いつかないなって思ったので遠慮しておきます」
「ああ、懸命な判断だ」
何でも間でも一般人を巻き込んではいけないからな。こういう事は。
「じゃあ、今すぐにこの場から他の生徒も含めてどっかにやってくれないか。後始末がやりづらくなる」
「せ、先生を呼んでくるね」
「大丈夫だ。少ししたら俺達の担任が来るし」
「ルナ先生が?」
「詮索は無用だ」
「うん」
と、まあしばし外野が去って行くのを待ちつつ。サイクロンには風魔術の『エアラ』で男達を拘束して貰っておき、ルナ先輩が来るのを待つことにした。
「お前ら。どこの組織の差し金だ」
「…………」
「サイクロン」
『承知』
「あぐぅぁぁああああああ!?!?」
風圧による締め付けの拷問が男達に襲い掛かる。シンプルに苦しそうだ。
「さあ、吐くんだな」
「おろろろろ」
「黄色いのを吐くなっ!?!?」
そうとう堪えたみたいだ。
「で、もう一度聞く。お前達は何者だ?」
「……レアハンターズ」
「ほう……。よりにもよってお前達がか……」
ホワイエットにしてくれた大罪は忘れもしない。
「言っておくが。お前達には以前世話になったことがある。つまり、俺には報復する権利がある。どういう意味かは闇社会で生きているなら分かるよな?」
「…………」
「今度はだんまりか。サイクロン」
「やっ、止めてくれ!?!? 俺達は雇われた身なんだ!!!?」
「というと?」
「……聞いて信じてくれるかは知らねぇけどよ。俺達はホワイト企業に頼まれてこの学園で拉致と監禁と人身売買の仕事を任されていたんだ」
ホワイト企業ってあれだよな? 優良企業とかを指す言葉だよね?
「そのホワイト企業っていうのはなんだ?」
「こ、これ以上はわかんねぇよ。あいつらは。仕事を持ちかけられた時に。自分達はホワイト企業のビジネスマンだって名乗ってきたんだ。それで将来有望な幻獣使いを学園から引き抜いてこいって定期的に金と指示を出してくるんだ」
「…………」
つまりアレか。こいつらは下請け。トカゲの尻尾切りな立ち回りをさせられていたのか。なるほどね……。じゃあ、そのホワイト企業っていう組織を追うのに手がかりは無しか……。
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