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211話:退屈な授業 その1

前回の告知通りの更新とは違った日の投稿となり申し訳ございません。リアルの仕事が多忙なこともあって、今後は可能な限り週1~2回に分けて更新させてもらいます。

 ざっくり言ってこの学園の最下級学徒教室での日々は鬱屈な毎日になりそうなのを既に予感している。やることが気の遠くなるような事ばかりだから。むしろこの授業環境に順応性の高い奴が殆どいるんだから驚きだ。


「折れそう……」

「なんだもう嫌になっちまったのかよカリト」

「いや、アルヴェル。普段の生活とは違った環境だからついて行けていないだけだよ」

「いつもは何してたんだ?」


 教壇に立つ老年の学者先生の講説を耳に、そして板書を移すことをしながら小声で会話をしている。


「狩で生計を立てながら仕事をする毎日を送ってた」

「おめぇ年幾つなんだ?」


 お茶を濁す感じにうーんと言いながら。


「17だな」

「まじかっ!? 俺と年の差はたいしたことないのにもう社会人やってんのかよっ!?」

「いまは学生生活の身分だけどな」

「それでも外の世界でそんな事をしている奴だなんてここにはいねぇからいま俺、もの凄くビックリしてるんだぜ?」

「そこ、アルヴェル学徒。私語は慎むのだ。我のありがたい講説を耳にしないのは人生の半分を損している事になっているんだぞ」


 中々に高圧的な物言いだなと思いながらも、俺もアルヴェルがキッとにらみ返している姿を見るなり、教壇で立つ老年の学者先生に向かって。


「先生。いまのは私のせいです」

「ふむ。彼を庇っているのか?」


 的を得ていると言うべきか、こちらの意図を見抜かれてしまって返す言葉に慎重さを要する展開に発展した。むむ……っと思って言葉を選んでいると、


「おいじじい。こいつと俺とは無関係だ。相手にすんな」

「と彼が言っているようだが事実かねカリト学徒?」


 じっと訝しむ目線を浴びながら横で俺に構うなよと圧を掛けて来ている二人の前にして自分は。


「す、すみません。いまの発言は撤回させてください」

「ならば最初からそのような愚行をするのではない」

「わ、わかりました……」


 諦めざるを得なくてストンと力及ばずして席に着席することになった。


 完全に悪い意味で目立つ行動をしてしまった俺に周囲の目からはあくまで個人的な主観にはなるけれど。


『正義感ぶってしっぱいしてやんのwww』

『なにだっさいことしてるのあいつ?』

『とりあえず授業の邪魔をすんなっての』


 なんとなくあまり良い印象を持たれていないようだ。完全に孤立への道に片足を突っ込んでいる感じがしている。ふ、不幸だな……、これもあの子がもつ力の代償によるモノなのか……? 


 いやいや違うって俺。そもそも俺とアルヴェルで授業に集中していなかったのが原因なんだ。人のせいにするのは良くない良くない……。


 とまぁ、そんな余裕があるくらいに正直にいって授業は簡単すぎたのだ。どういうことなのかって?


「――ということもあり。君たちの召喚の儀式で契約した幻獣を使役するにはまずお互いの信頼関係を深めるところから始まる――」


 え、普通じゃね? って聞きながら思っているんだが。


「先生、具体的にどうすれば信頼関係を深められるものなのでしょうか?」


 いや、普通に考えたら一緒に日常生活を送るだけで良い話だろ。


「まず餌をやることが大事だ。そしてそこから主従の関係を築き上げる事に繋がっていく。あとの話しは追々になるが。実技の授業で君の質問した事もやっていくことになるから楽しみにしていなさい」

「はい! ありがとうございます先生」


 先生が教えている事は間違っていない。モンスターと対等に接してきた俺からすると。


「……道具の力で相手をねじ伏せいるだけじゃないか」


 要はそういうことだろ。そんなの良い信頼関係なんて築く事なんかできないって。そうだろ絶対に。初めから根拠とかなくして分かる話じゃ無いか。俺は正直にそういうことするの好かん。


「退屈だ本当にこの授業……」


 でもこれで試験に挑める資格が得られるかそうでないかと決められてしまうから困ったもんだな。そう頭の中で思いを描いて半日を過ごすことになった。


 とりあえず思った。俺と彼らが立つスタートラインはかけ離れているということを。そして彼らに合わせて動かなければならないという、実に時間の無駄。浪費を繰り返し続けていかなければならないという事実を。


「なんか。憂鬱な気分だ」


 って思っているところで。


――なぁなぁ。暇を持て余しているのー?


 感情共有の力が発動し、俺の身体の中に上手いこと身を隠しているシャーリーが話しかけてきた。特にする事もないし、隣にいるアルヴェルは無言で教室を退室させられて居ない。いまの俺には退屈凌ぎをしてくれる相手が欲しかった。


「ああ、そうだな」


――うんうん。わかるよ君の思っていること。って、その前に。


「ん?」


――君の事をボクはどう呼べばいいのかな? 君の名前はカリトっていうのは分かるよ。


「だったらそれでいいだろ」


――だったらその名前で言うのはなんか不穏を感じるから止めておくね。


「は?」


 どういうことだよって思っていると。


――だって、君って神獣と契約を交している身分でしょ?


 ぽかーんと頭が空白で埋め尽くされる感覚がする。なにそれ????


「何言っているのか意味分からないんだけど????」


――ボクだって君と契約を交すことになるだなんて正直驚きだったんだよ。だって、


 と言ってシャーリーは。


――ボクはあの下手くそな魔方陣のせいで君と半ば強制的な形で契約関係になってしまったんだからな。ちょっとは察してくれよ。おかげでこっちは大迷惑だよ。どういうわけか知らないけれど。心地の良い力の根源を近くで感じていいなって思って。それでいつものお気に入りの屋根の上でお昼寝していたのを止めて覗きにやってきたら。


「俺と出会ってしまったっていう感じか? その、力の根源って俺の中にあるチートの事なのか?」


 って確認してみたら。


――君から感じる力の根源とは違う色だったのを覚えているよ。赤くて白い命の炎をしてたな。


「あの時部屋にいたのは俺だけだしな……。誰のことを指しているのかがそれだと分からないな……」


 とまあ、なんとなく俺の身に起きた事が分かった。


「もしかしてシャーリーって幻獣だったりする?」


 とするとシャーリーは。


――なんて失礼な事を君は言うんだい。ボクは由緒ある格式の高い神獣だ! そこらで人間とべったりしてごますりしかできない能の無い奴らとは比べないで欲しいんだけど!


 自身を神獣であると名乗ったので思わず。


「……マジで?」


 半信半疑に問い掛けるなり。


――どうやら実力行使でボクの存在を認めさせてあげないと分からないようだね。


 そう言い出してきたので間伐入れずに。


「いまは止めてくれよ。午後からなんか知らないけど実技の授業があるみたいだからそこで思う存分に力を見せてくれればいいよ」


 あくまで冷静を欠くことを忘れずに自分を抑えて。


「いまは騒ぎを起こさないでと約束してくれないか?」


――その契約に従って守ることにしよう。


 短い言葉に感じる重みと共に俺は授業を景色として流し見ながら時を過ごす事に戻る事にした。

次回の更新予定日は2月28日です。よろしくお願いします。久々に文章が書けて晴れ晴れとした気分です。まともに毎日更新できず、読者優先で活動が上手くできていない現状をどうにか変えていきたい思いでおります。

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