204話:クラス決めの試験 その3
「ごちそうさん」
「うん、お粗末様ー。あーっ、久しぶりにお腹いっぱい食べたー!」
「普段はそうじゃないのか?」
「うん。だってお腹が大きくなって太っちゃうと美人な顔が台無しになっちゃうでしょ? カリト君は私のスタイルはどっちがお好みなのかな?」
「何を突然に」
「今後の君の好きを知りたくてねー」
女の努力っていうか気配りというか凄いな。と、関心をしつつ木漏れ日の差す木下のベンチで隣り合って座り、俺達は食後の談笑を楽しむ事を始めた。今日は何もないしこのまま彼女と親交を深めていくのもいいだろう。
「うーん。俺をどう知りたいのかな?」
「それはもちろん何から何までかなー」
「解答に困る王道的な言葉の返しに俺は思わずどう反応すればいいのやら」
「それ心の声だね! わかるよー。そういう時に人って自分の素の性格で物事を考えて喋るからねー」
「よく知っているな」
「何度もいっているけれど。私はそういう事には詳しいのです! デス!」
「ドスきいててなにしたいのか知らんが面白い事だけはわかったな」
「真面目すぎて私が困った事に!?!?」
あわわと目を白くしながら口をパクパクと、手を前に振ってあたふたとするラパンの様子にふっ、思わず口元がほころんでしまう。
「かわいいやつだな全く」
「か、かわいいっ!? まさかとうとう私を本気で好きになってくれて「あ、それはない」んんん???」
「ただのお世辞だっての」
「むー。ちょっと残念。でも嬉しいから許す」
えっへんと偉いさんみたいな態度をとって、ラパンが胸を張って自信ありげに態度で返してくる。それに肩をすくめながらやれやれとおもいつつ。
「ふわぁ……ちょっと眠くなってきたね」
「……俺はいつもこの時間は眠くならないかな」
「私はお昼ご飯を食べたらずっとお昼寝をしているね」
「寝過ごして授業に遅れるなよな」
「うん。その時はカリト君に起こして貰って行けば安心かな」
「見守りもほどほどだっての。俺はそういうのは好かんな」
「他力本願っていい事だよ。自分で出来ないことをその人はできるんだから。願ったり叶ったりなわけだし」
……そうかな。確かに今まで多くの人に支えて貰って今日までを生きていられているかな。思うところがあって感慨深い話しだな。って思っていると。
「ごめん。ちょっと膝をかしてねー」
「お、おい」
何をかんがえているのやら。こんな所を他人に見られたら俺達まるで恋人同士に思われてしまうじゃないか。てか膝枕される立場が逆なのはどうなの?
「すぅ……すぅ……」
「寝付きが良くていいな」
かなりいい環境で寝起きできている証拠だ。幸せ一杯に今日までを彼女は生きているだろう。俺もこんな風にこの学園で過ごせばなれるのかな?
そう思いながら空を見上げると。
「平和だな」
アテナの空はすこし白く濁っている。まだ街の探索を全般にしていないから憶測になるけれど。この街は工業化が進んでいることもあって、それが影響して周囲の空はすこし淀んでいるのだろう。利便をとるか自然と調和するか。俺達はどっちがいいといえば。自分達が楽に過ごせる環境のほうが好きだしな。
「ちょっと触っても文句言われないよな?」
彼女の滑らかな質感のある髪の毛をすくい上げて触れてみる。ひとつひとつの毛はまるで絹織物の糸のように心地よく滑り落ちていく。
「って、俺は何を……」
ま、まあ。これは気の迷いなわけであって。彼女に欲を持ったわけじゃ無いんだ……!? って思っていると。
――カリトよ。
「……グリム?」
――うむ。そうじゃよ。どうしているか気になっての。感情共有でお主に話してみようとおもってな。
「ふーん。俺、いまは膝枕しているんだよ」
――誰にじゃ?
「ラパン」
――なるほどの。
「それも知っている感じか」
――ラパンはの。そうやって昼寝をする事が日課なのじゃよ。彼女は才にあふれた人間じゃから。日中はどこかで心と体を休ませるようにして折るのじゃよ。ちなみにお昼寝を推奨したのはこのわしじゃ。
「昼寝をしなかったらどうなるんだ?」
――率直に言えば。非凡な才能の持ち主になってしまうかの。
「……疲れが原因か?」
――うむ。ただの疲れ方をせぬのじゃよラパンは。彼女は元々身体の弱い人間じゃっての。なんども生死を彷徨う経験をしておる。じゃが、彼女の天賦の才はそれを諸戸もせずに何度も命を救ってきた。
「それが幸運の力なのか」
――そうじゃの。何をしても運に恵まれている人間というのは必ずといっておる。じゃが、それを一回り二回りと幸運が彼女の元にやってくるのじゃ。おそらく彼女とお主が巡り会えたのも。彼女のもつ才能の影響なのかもしれぬ。
「話すのはいいが。何を俺に伝えたいんだよ」
――そうじゃの。結論を言えば。お主はラパンに気に入られておる。彼女が側におれば自ずと幸運が訪れることになる。じゃからの。
といってグリムは感情共有ごしに言葉を区切り。
――ネメシスの本来の使命。秘められた絶大な力を悪意から守り抜いていく。忘れることはせぬようにのカリトよ。
「悪意にね……」
こんな学園にそんな悪い奴っているわけねぇだろ。
――用心はしておくのじゃ。その幸運の力はあまりにも人の意思に左右されやすい能力じゃ。正しき者が導けば良いことになり。悪意のある者がラパンを利用すれば。どうなるかわかるじゃろ?
「色んな人の不幸に繋がっていく」
――うむ。じゃあ、そろそろわしは会議に出なければならぬからの。バイバイじゃ。
「おつかれさん」
そこでグリムとの会話は終わりを迎えた。
そして試験当日になり。
「生徒の皆さん。今日はこの野外調教場にてクラス決めの試験を実施いたします。ここは数多の先輩の学生達がみなさんと同じように試験を受けてきた由緒ある施設です。くれぐれも歴史に名を汚す行為はしないことです」
調教服と呼ばれる衣服に纏った女試験官が、俺達の並ぶ場所の最前列の前にある壇上でそう話しを始めだして。
「では、前日に渡しておいた石を手元にもって用意をしてください」
魔晶石で何を始めるのか。その手順に対する説明を初めてくれた。これで何をすればいいのだろうか。って、おもったら今から幻獣召喚をするんだったな。素で忘れてた。
「では今から一人ずつ私の前にある魔方陣に立ってください。これが最初の幻獣召喚への第一歩です。ここで貴方とその手にある魔晶石が関係を結ぶ。つまり契約を交すことになるのです。私達はこれを召喚の儀式と呼んでおります。儀式は必ず成功します。安心してその魔方陣の中央に立つようにしてくださいね」
分かりやすい説明を受けながらふーんと関心する。なるほどね。召喚の儀式っていうのでこの魔晶石の中に封じ込められている源? 的なのを幻獣に形作っていくんだ。
「それではまず左端の1列目から初めて行きましょう。かなり時間が掛かりますので各自各々の行動には無駄のないように」
1日掛かるんだろうきっと。そう思いながら試験が始まっていく光を遠目に、他の同期の生徒のみんなのざわつく声を耳にしつつ自分の番を待つことに集中している。なんで集中するのかっていうと……。
「俺、なんで一番最後なんだよ!?」
多分オリエンテーションの到着順でカウントされているんだろうきっと。とは思いつつ、俺は服の中に首から掛けてしまってある魔晶石を手で探って取り出す。
「俺と契約する幻獣はどんなやつなんだろうな……」
目の前で儀式を終えた学生達みたいに、格好いいやつだったり可愛いやつだったりするのかな。期待で胸が一杯だ……!
「次、最後です。サトナカ カリトさん。魔方陣へ」
「はい!」
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