198話:式典
これから始まろうとしているのは、この学園に入学する俺とか他の新規入学生や中途入学の生徒のお披露目をする式典だ。どのみち俺はぞろぞろといる他の学生と混ざって壇上に立つ事になるはずだろう。ラパンは在学生徒なので観客席に区画された場所にいる頃だろう。きっと俺とは違って、……俺の責任もあるが。あれから少し溝を感じるようなコミュニケーションのやりとりしか出来ずにいて、そのまま素っ気ない感じに分かれてしまった。
『みなさま本日はご入学誠におめでとうございます。これより第78回。アテナ都立テイマー学園の入学式典を開催いたします。まず最初に皆様はこの学び舎の園がどのような場所なのか。知らぬ存ぜぬという方はおられないかと思わいますが。ちょっとしたデモンストレーションを披露させていただきます――』
コミュニケートで伝えられる式典のアナウンスを聞きながら。次々と行われるそのデモンストレーションとやらの内容を見物する。
・上級在校生による中型のモンスターをテイムするショー。(まるでサーカスの調教師のような事をしていた。)なんか途中、所々で飼い慣らされている素振りを見せていたのは気のせいか……?
・学園生徒会長ならびに役員による挨拶からのテイマーの能力の実演。(華麗な佇まいで演舞をしながら。パートナーである小型のモンスターによるダンスの披露を会長自身が行うという謎の展開に、俺を除いて他の学生が大拍手と絶賛の嵐と共にスタンディングオベーション。)
『ワフッ!? なんだなんだ!?!? ボクが寝ている間にいつのまにこんな事になっているのっ!?!?』
俺の服の中でもごもご動くシャーリー。ちょっと新しいモンスターテイマーの力でコンパクトになってもらっている。
「うん。ごめんなシャーリー。俺もいろいろと期待してたんだけど。なんかリアリティーに欠けるデモンストレーションだったらかちょっと残念に思っている所だったんだ」
『んんん???』
ま、まあ。見たことのない人達にはこんな感じというか当たり前の反応なんだろう。慣れすぎている自分がダメなんだきっと、そう。
『それでは最後に皆様に理事長からお言葉をいただきます。大賢者様どうぞ後壇上にお上りくださいませ』
その言葉と同時に即座に生徒会が立ち退いて言ってしまった。圧倒的な身のこなしで去る姿はアスリートっぽく感じさせる動きだった。そして、呼ばれた大賢者こと理事長が暗闇に照らし出されている壇上に姿を現した。
「あれ……? あいつって……」
『諸君。当学園にご入学誠におめでとう。わしはこの学園の理事長の任を仰せつかる大賢者。名をグリム・カースドラゴンと申す。カースドラゴンとはわしの祖先が竜人だったからであり、この姿を目にして思った物はきっとこう感じておるじゃろう』
「……おいおいあいつがこの理事長だって?」
その壇上に立って現れたのは俺のよく知る人物だ。白とピンクの大賢者の衣服を身に纏うグリムは自身を、
「竜人族の末裔であることに間違いはないのである」
きっぱりと竜人族の末裔であると宣言したのだ。さらに。
「静粛に入学予定者の者達よ。なんか一部の人間だけ冷静で無反応を湿しておるようじゃが」
ジロッと俺を見てくるグリム。あれ、バレちゃった……?
「竜人とは伝説の生き物。そう人間達は語り継いでおるようじゃが。事実。この壇上にはその生ける伝説がおる。そしてこの在校生には何度も同じ話しを繰り返す事になるのじゃが。わしの代でこの学園は新たなる伝説に立ち会う事が運命づけられておる。そう、」
と一区切りをつけて。
「伝説のモンスターテイマーがこの学園に現れるのじゃ。既に今日。この式典にその力をもつ人間が紛れておる。この学園の生徒の中に。かの有名な人間の勇者が竜人王と戦う際に切り札として使った伝説の能力。神賦の才。モンスターテイマーの力を宿す人間が現れておるのじゃ」
会場の参加者全員が騒然。(てか、在校生の人達は事前に話しを聞いていたのでは……?)そして俺はそれに紛れで心臓がバクバクと脈打っているのを感じて緊張とストレスがMAXに達している!!!!
遠回しにグリムが俺の事をみんなにバラしちゃってるんですけどぉおおおおぉ!?!?
「静粛に。なお、これはワシの予言じゃ。本気で信じるかはお主らに任せよう。ただし、旧知の仲を分かつような事立てはせぬように。勉学をおろそかにせぬようにする事じゃ。では、これでわしの挨拶は終わりじゃ。さらばなのじゃ」
『これにて第78回アテナ都立テイマー学園の入学式典を終了とさせていただきます』
グリムはとんだ嵐を巻き起こしてくれたようだ……。後で理事長室へ絶対に行こう!?
んで、その後に再びラパンがさっきまでの事をすっかり忘れたような顔で、人混みを掻き分けながら俺の前に現れてきて。
「おつかれさまー! どうだった。緊張したかな!?」
とニコニコ顔で聞いてきたので思わず。
「なんか腹立つぐらいに緊張したかな!?」
「んんん!?!?」
ギョッとギャグマンガみたいなビックリ顔で表情を返してくるラパンを見ながら、俺は理事長室は何処かと聞き返えして。
「あっちだよ!?!?」
「わかった。じゃあちょいと行ってくるわ!!!!」
「えちょっとまってよぉ!!!? なんで理事長室に用があるのかなー!?!?」
「野暮用だから来んな!?」
「私達って相思相愛の関係なんだからいいじゃない!? てかそんな慌てて行かれたら余計に気になって仕方が無いわよっ!?」
なんでも首を突っ込みたがろうとするラパンに追い回されながら。周囲の生徒からは変な目で見られる始末になり、そのまま理事長室の前に辿り着いて。(一応撒くことはできた)
「グリム! ちょっと話しがある!!!!」
と、ノックなどお構いなしにバンと扉を開けて中へ強引に侵入すると。
「……お主か」
「ああ、そうだよこんちくしょう。とんだ嵐を巻き起こしてくれたなっ!? こっちは肝を冷やす思いをしたんだけどなっ!?!?」
「うむ。それはお主個人の感想じゃ。わしはこの学園にモンスターテイマーの力をもつ生徒が現れたとう予言を伝えただけじゃ。だれも真に受け通らぬ。はずじゃ」
「はずっ、だろぉ!?」
とまあ……気持ちを落ち着かせていきながら。
「……で、なんでお前がこの学園の理事長なんだ?」
「そうじゃの。お主の撒いたタネを摘み取る為のロールをしているに過ぎにとでもいおうかの」
「役割だと?」
「うむ。それは追々はなすとして。後ろの女学生はお主の連れかの?」
「え?」
「も、申し訳ございません理事長様!? 私の恋人がとんだご無礼をっ!? あわわっ……!?!?」
俺、確かちゃんと足がつかないようにハンターのスキルを使って撒いたんだけどな……? もしかして運良くここまで辿り着いてこられた……なのか……?
息絶え絶えに両膝に手をついて呼吸を整えているラパンの姿を見ながら。
「お前。まじで何なの?」
「えぇ……?」
素でそう問い掛けてしまうほどに、そこはかとなく彼女の幸運の力に恐怖を感じてしまった。
明日も予定通り更新いたします。よろしくお願いします。
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