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1話:人生の終わりと始まり

『いらっしゃいませー!』

「はぁはぁ……間に合った……!」


 俺、里中狩人さとなか かりとはいま話題となっているハンティングアクションゲームの新作が今日発売したので、いつも利用しているゲームレンタルショップのデオに訪れていた。


――ここなら確実に安定して新作のパッケージ版のソフトが入手できるからな。


 時刻は午前11時過ぎくらいだ。


「おっ、あったあった。いやぁ、こいつは運が良いぜ!」


 新作のソフトの陳列棚に訪れると、たった今みつけたのでラスト1個のようだ。それ以外にパッケージがなく、すかさず誰にも横取りされないように手を取り、そのままレジへと持ってくことにした。


「ありがとうございました! あっ、よかったらこちらの会員様特典のチラシをご覧くださいね」

「どうもー。気になったらよむわー」


 適当な感じで定員のお姉さんの元気な挨拶に言葉を返しながらその場から立ち去り、出入り口の前で立って思わずひと言。


「あっつ……! なんだよ! 梅雨のくせに真夏日よりの熱さじゃん……!」


 6月なのにこのジリジリとくる天からの熱さ。俺を容赦なく焼こうとしてきているのだからたまったもんじゃない! 早く家に帰らないと道中でぶっ倒れるわ。とりあえず近くにある店頭に隣接している駐輪場に向かって歩き。


「うん、帰ろう」


 とりあえず家に帰る途中にコンビニに寄ろう。そう思いながら止めておいた自転車がある場所に来た。んだけど……。おかしなことに俺は気づいてしまった。


「えっ、ない……」


 盗まれてた。普通に新品で購入して2万するママチャリがなくなっていた。そして俺は思わずその場で頭を両手で抱えて上を向き。


「うそっだろぉっ!? 俺の年季の入ったママチャリ様が盗まれてるんですけどぉっ!? なんの物好きだよっ!?」


 まさかの緊急事態に動揺が半端ない。スズキとメルセデスの違いくらいにビックリな案件に巻き込まれたんだけど俺っ!? 犯人間違って高級車と勘違いして盗んだのかなっ!? んな分けないかと次の瞬間にピタッと冷静になって思い直したが。また俺は動揺に感情が支配されてしまい。その場でてんやわんやと慌てふためくことしか出来なかった。


「あぁもう畜生ッ!!」


 俺は考えることを止めた。普段使う事の無い身体に負荷をかけすぎて、その場でうなだれて疲労が半端ないくらい来てる。もう嫌だよ本当に……。とりあえずスマホを取り出して電話画面を開き。


「とりあえず警察に連絡しないとな……」


 それからの流れは淡々とした感じだった。駆けつけてきてくれたおまわりさんに事情を説明して、とりあえず店の前に防犯カメラがあったから、それを元に俺の自転車の行方を捜してくれるということになって事後処理が終わった。


「じゃあ、道中気をつけて帰るんだぞ」

「うっす。よろしくお願いします」


――ブゥウウン――


 俺はクラウンの運転席の窓から顔を出して話しかけてくるおまわりさんに対して、その場で軽い感じで挨拶をして見送った。


「出来れば家まで送って貰いたかったかな……」


 1度、体験してみたかったパトカーの乗車。悪い事して乗りたくはないけど乗ってみたい。クラウンって高級車だからなぁ……。憧れるよ本当。俺もあんな感じの車に将来乗れるのかな……?


「いっけねぇ、もうこんな時間」


 スマホの画面を見ると13時過ぎを表示していた。既に事件から2時間が過ぎている。ヤバいな。


「今日はとても大事な1日なんだよ。自転車泥棒まじで許さんからな……!! 俺の貴重な2時間を奪った罪は大きいつぅのっ!!」


 自転車の盗難に遭ってしまったことは一大事だけど。それでも俺にとってはゲームの時間がとても大事なことなんだ。


「走ったら間に合うかな? いや……あれか……」


 ここから自宅まで約15キロはある。どうやっても走って帰れそうにない。何で今さっき変に思いついてしまったのかな……。しかしこのままだと野垂れ死んてしまうし。……そうだ。


「へいタクシー!」


 俺はその場の思いつきと勢いで大通りの歩道まで歩き、通り過ぎていく車に見えるよう白線のギリギリの所で立ち、ヒッチハイクで帰宅することにした。我ながらに名案だぜ。

 出来るなら可愛い女の人にヒッチハイクされてお家まで送ってもらえるのが望ましい。そんな願望を頭の中で描きながらやり続けていた。


「ん?」


 10分くらい過ぎたあたりかな。俺がヒッチハイクしている事に気づいてくれたのだろう。1台の赤いプリウスがここまで接近してきている。


「あれ、なんか猛接近してなくね? あぁっ!?」


――キキィイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!――ズドン!!


「――ぐげぇっ!!?? うっ……うぅ……む……ね……ん……」


 驚愕と共に走る激痛と意識の暗転。刹那の一瞬に見えた運転席の人の顔。運転していたのは80代くらいの男だ。男は口に泡を吹いて気を失った状態でハンドルを握り締めていた。助手席にはその妻も同伴していたようだが、こちらの最後の瞬間に目と目が合い、相手は驚愕と青ざめた表情で俺を見ていた。

 俺は地面に強く叩きつけられたのを感じた直後。もう何も見ることや、身体を起き上がる事ができず、そして走馬灯を感じて最後に、


「……母さん……父さん……ごめん……」


 今日までこんな俺を育ててきてくれた父と母の事を思い出して死んだ。

 母は昼飯を作って俺の帰りを待ってくれているのかな? 父は今日も仕事に明け暮れて頑張っているのかな? 俺、2人にちゃんとお別れを言えなかったよ……ははっ……。


――里中 狩人。あなたは死にました。今から私があなたが最も望む世界に生まれ変わらせてあげます。


 えっ……? 俺、死んだよな? なんか頭の中で透き通った女性の声が聞こえるんだけど……? なに……?


――ええ、正真正銘あなたは不幸な死に方をしました。痛ましい事です。老いた者が若きあなたの命を奪うこととなるとは。


 不幸ねぇ……。これってもしかして天国か地獄に行く前の段階ってやつなのか? 俺はいま魂の状態でいるのか? 非科学的だと思っていたけど。本当にあったんだ……。


――ここは生と死の狭間の空間。今から転生する貴方には関係の無い話しなので省きます。


 あっ、はい。てかあんた誰だ?


――魂の貴方には教えられない者です。


 つまり神様なのかな?


――敬愛なる人の子。私は名乗る者でもない存在です。貴方の信ずる神という存在はこの場所には存在しないのです。ここを見渡す限りあるのは青の夜空と真紅の海原。


 なんか壮大な訪れが予感する話しだなー。


――そう思うのは貴方の勝手です。残念ですがそろそろ時間切れです。貴方は今から、貴方の最も望む世界に記憶を引き継いだ状態で生まれ変わりします。もちろん貴方の容姿はそのままでの形にはなります。


 それってつまり……。これは……まさか……っ!?


――さあ、願うのです。貴方の思い描く異世界を……!


「俺は……! 死ぬ前に出来なかったハンティングアクションゲームがやりたい……! もし叶うなら俺自身がプレイヤーになってゲームがしたい……!」


 そう願った瞬間に、俺は真っ白な光に包まれて。


「……はっ!?」


 驚きと共に気づくと俺は意識を取り戻したが。


「はぁっくしょぉん!!!? さっぶぅ……!!!? えっ、なにここっ!? 雪山か南極かぁっ!?」


 ガタガタと寒さに震えながら両手で身体をさすると、俺は大事な事に気づく。


「プリウスミサイルに飛ばされた衝撃でパンツ1丁になってる……!!!?」


 えっ、まってじゃあ俺がいるここって……。


「ぶぇっくしょん!?」

 

 だめ……だ……寒さで何も考えられなくなって眠くなってきた……。


 俺はその場で意識を朦朧としながら寒さに負けてうつ伏せで倒れてしまい、そのままうとうと夢見心地になりながら眠りについてしまった。


 ふと。


『……ねぇ、おきて……だめね……意識がないわ』

『こいつ極凍フィールドで何してるんだよ。全裸縛りで狩りに出かけたのか?』

『バカな軽口は慎めイサム。とにかく救護が優先だ』

『へいへいブロッサムさんよ。わかってるって』


 えっ、どういうこと……? そう思ったのもつかの間、眠りにつく自分だった。


もしこの作品を『面白い』と思って頂けたり、『続きが気になる』と思って頂けたならぜひ広告下にある『☆☆☆☆☆』の所を押して頂きますようお願い申し上げます。今後の作品制作の励みになります。

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