196話:アテナ都立テイマー学園 その2
朝になり、俺は寮から外に出てみると。
「おはよーカリト君! って、あれれぇっ!? なにその変わったワンちゃんはぁっ!? なんか角が生えてるんだけど大丈夫っ!?!?」
『なにあれー』
「おはようラパン。その、訳あって一緒に部屋に過ごすことになったんだ」
玄関前で機能と同じく制服姿のラパンと出会った。んで。
「えぇ、そうなの!? 大丈夫かなー!?」
「なにが?」
「うちの学園って。園内で飼っていないモンスターを持ち込むのは原則禁止しにしてるの。だからその子が可哀相な事になるってか……」
「俺もそんな気がしてとりあえず今日も部屋にいて貰いたいって思っていたんだけどな」
『やだ! ボクは君と一緒にいるの!』
「あこらバタバタするなってっ!?」
『やだやだ!』
「なんかその子すごく暴れているけど大丈夫なの!? 噛んだりしない!?」
俺達のやりとりにあわわとするラパンを目にしながら、俺は目の前で抱きかかえているだけで必死な暴れるシャーリーを落ち着かせようと頑張ったが。どうも思い込みが激しいようでうまくなだめることができない。すると、
「ねえ、貸してその子」
「お、おう。いけるのか!?」
「何言ってるの。私はテイマー学園の学生だよ。小さい子犬? くらいは簡単にちゃやっと落ち着かせる事はできるって。ほらっ」
そういって格闘する俺に両手を差し出してくるラパンを見て、俺はラパンを手渡した。
「ほらほら、落ち着いて。ねぇ、名前はなんて言うの?」
『なんかほわほわする……』
「シャーリーっていうんだ」
「シャーリーちゃんか。ということは女の子かな? ほらほら落ち着こうねー」
『あうぅぅ……なんだか眠くなってくる……』
「すげぇな」
俺でもあんな風には出来なかった。これがテイマー学園に通う学生の力か……。勉強になるな。そうこう思って彼女がシャーリーをあやす所をじっと眺めてしばらく時間が経つと。シャーリーはこんこんと眠りに落ちて寝てしまった。
「しーっ、寝ちゃったからこのまま学園まで連れて行こうか」
「う、うん。なんかありがとうな」
まるでラパンのその姿は赤ん坊をあやす母親のようだった。
「ふふ、この子が私達みたいに人間だったら。君と私は夫婦だと思われちゃうねー」
「それはそれで俺の身に危機が迫るからその例えを出すのはやめてくれないかな!?」
「こーら、この子が起きちゃうよカリト君。めってば」
「うっ、うっす……」
とりあえずシャーリーはラパンに預けることにしよう。なんかその方が良いような気がしたからだ。んで、昨日と同じ道を歩いて学園の敷地前に辿り着き、さっそく門の前で立っている警備員から声が掛かり。
「ちょっとごめんね。その生き物は何かな?」
「えと、犬です」
「犬?」
若い男の警備員と中年の男の警備員が、それぞれラパンの腕の中で眠って落ち着いているシャーリーに視線を送って俺達にそう問い掛けてきた。
「そのねおじさん。ちょっとこの子をしばらく預かる事になっちゃって。急にだけど持ち込み申請書にこの子をお願いしたんだけどダメかな?」
「そう言われても急には難しいかなとは思うけどな……」
そう若い警備員が返答すると。隣にいた中年の警備員が。
「いいんじゃないか? どうもその子犬。なんかどっかの図鑑か本で見たことはある気がするんだよな。どのみち子供のモンスターだろう。何もおかしな事をしなければ俺達も咎めたりはしないし。どれくらいの期間で預かるんだい?」
「えと、その預かってきた人がパパのおじさんだったから。また会うときになるかなー?」
なんか事上手く話しが進んで行っているぞ……? どういうことだ……? ラパンと話している警備員達。最初は警戒心が籠もった表情をしていた彼らだが、次第にラパンと話していく内に柔和になってきて、んで今は……。
「ラパンちゃんのおじさんってどんな人なんだい?」
「ばか、学生の個人に触れるのは業務違反だ。すまないねラパンちゃん。こいつの無礼を許してくれ」
「あぁ、いいですよ。気にしていないのでー」
「それはそうと。まあ、俺達はここでその子犬を見なかった事にしてあげるから。大丈夫だ。おじさんこうみえてここの警備の偉い人だから。色々と根回ししてあげるよ」
「ありがとーおじさん!」
「いいってことさ。私も生き物好きな娘が一人学園に通っているから。その気持ちがわかるってもんよ」
「いい娘さんですねー! こんどあってみたいなー!」
「きっと娘も喜ぶと思うよ。んじゃ、もう式典が始まるから通っていいよ」
「ほーい! 行こうカリト君! よかったねー!」
「ありがとうございました!」
「おう、良き学園生活をな!」
「良き学園生活をー!」「良き学園生活を!」
ラパンの話術が功を成して、その結果。何もシャーリーに不幸な事が訪れること無く学園の敷地内に入れる事ができてしまったのだった。
「式典ってなんだ? 入学式か?」
「そうだね。君の場合は中途入学者になるから。既に在学している生徒のみんなにお披露目しようっていう式典をこれからするんだよー。大丈夫! みんなの目の前で面白い事をするとかは無いから安心してね!」
「それはマジで助かるわ!? ノリが体育会系じゃなくてよかったぜ!?」
そこで滑ったら俺の学園生活は終わってたわけだ!!!?
「とりあえず制服のチェックする為に昨日ご飯を食べた場所で見てあげるよ。ついてきて!」
「おう、頼んだ。なんか少し違和感を感じてたから助かるよ」
とりあえず今着ている新しい自分の制服になれてないのは事実だ。ちゃんと着こなしているかは、この学園に在学しているラパンに見てもらうことにしよう。俺は彼女に連れられて、昨日の夕食を取った場所で制服のチェックをしてもらった。
明日も予定通り更新いたします。よろしくお願いします。
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