185話:何の為にその力があるのか?
カミルさんに連れられてやってきた射撃場にて、さっそくセイバーMk.2の試験が行われる事になったのだが。
「…………嘘でしょ? あんた、今のは何……?」
「えと、その……」
「射撃場が開放的になってなくない……? バズーカー砲とかでもあんな風通しよくできるようには出来ないよう防護対策はしてたんだよ? それをいとも容易くたった一発の銃弾であんな風にできるって……」
最初はまあ普通の銃弾を使っての評価から始まったのだけれど。次第に何でその機能を付け足したのかと聞かれるばかり、うまく答えられなくて怪しまれてしまい、結局俺の手にした能力を実演もかねてみせることになって。丁度、一緒に居合わせていたサンデーに髪の毛を提供(前回みたいにもぎ取ることは無しで、挟みを使って渡して貰った。)してもらい、能力を発動させて髪の毛を銃弾に変化させてセイバーMk.2に装弾し、どうやっても普通では一発の銃弾でも消し炭には無理なモンスターの模型に狙いを定めて、そのまま引き金を引いて、
「……意味分からねぇよ」
『サンデーとご主人あたっくだ!』(久々の事だったので名前を忘れていたけどな!)を発動し、極太のビームを射出したその結果。
「と、当面射撃場の一般の貸し出しは出来そうに無いな……ははっ」
建物自体を半壊させてしまって、セイバーMk.2の性能が素晴らしい事が分かり、今後もこの銃のアップグレードをしていくことが決まったのだった。んで、
「か、カミルさん。お願いがあります」
「なに?」
かなりへこんでいらっしゃって淡泊な感じになっていらっしゃる。やり過ぎたかもしれない。
「この出来事は内密でお願いします。僕も訳あってこういう力を手にしてしまったんで」
「それは確かに一大事な事をしてくれたからね。わかるさ。もうあんたはタダのハンターじゃないって。どれほどのハンター達を見てきたと思う。こんなの生きている内に会えることの無いおとぎ話レベルの出来事だっていうのを。それでどうなの?」
「え?」
「その力を使って何がしたいの?」
「それは……」
この力を使う。つまり今みたいに、または過去に倒してきた悪人共に対して行ってきた事を今後もしていく事になる。……のはず。
「生半可な答えだと納得してくれませんよね」
「あったりめぇだろ。お前のその力は下手をすれば戦争にだって使われかねない恐ろしい殺戮・破壊兵器だよ。私はそんな事の為に銃を作っているわけじゃない! おじいちゃんは戦争のせいで酷い目にあって苦しんできたんだから! 私はそれをみて、この技術は戦争の為にあるわけじゃない。人々の幸せを守る為にあるって思って。じゃあ、銃はどう有効に扱って貰うべきかをパパと一緒に悩み抜いた結果。ハンター達に使って貰っているんだよ。それと同じ。あんたはその力をどう使いたいのかって知りたいんだ。いちガンスミスとして、1人の人間として何の為にその力を持つのかってのをさ!」
「俺は……」
カミルさんが感情的になるのを初めてみてしまった。そして彼女の過去に触れて胸が苦しくなり、自分はこの力をどう使うべきかと彼女に問い掛けられているわけで。次のひと言で彼女を納得させないといけないと理解して。
「俺は自分の信じる正義の為に使うべき力だと思います……。俺はモンスターの事が好きです。そして尊い存在であり、感謝すべき存在でもあると思っています。自分達の明日の生活をつないでくれているかけがえのない存在であり、自然の調和を整えてくれている大切な生き物たちだとおもっている。それを乱そうと悪意で彼らの命を奪おうとする悪人に対してこの力を使いたいと思うんです。決して政治の為の戦争なんかにこの力は使わせない事をここで誓わせてくださいカミルさん。いま自分にとってカミルさんは数少ない理解者であると思っています」
「買いかぶりすぎだバカが」
「ええ、バカですよ。バカな自分でもこうして貴方に信じて欲しいと訴えないと分かってもらえないと思っているバカなんですよ」
「……私にどうしろと」
「これまで通り普通に接して欲しいんです。そして必要な時に力になって欲しいんです。もしこの先で自分が躓くことがあった時に支えて欲しいんです。お願いしますカミルさん。俺の為に世界で最高の銃を作って欲しいです!!!!」
「…………はぁ、わかったよ。そこまで言うなら受けてやるさ」
「あ、ありがとうございます!!!!」
「ただしだ。もし、お前が戦争なんかに関わることになるようになったら。その時は容赦しないわよ? いいわね?」
「……心してかかります」
「なぁにいきなり怖じけづいてるんだよまったく。まぁ、その時はその時だな。んじゃあ、その銃はどうする」
「このまま持ち帰ってもいいですか?」
「ああ、いいぜ。また何か付け加えたり修正してほしい点が見つかったら来るんだ。私は今のをみて確信したよ。私もまだまだ修行がたりないって」
「今でも充分な腕前だと思いますよ?」
「いいや。あんたのその力は今後もっと飛躍して成長していくな。私の長年の勘がそう言っているんだ間違いない。私もそれに合わせて頑張ろうと思う」
「分かりました。ではこれからもよろしくお願いしますカミルさん」
「おう、よろしくなカリト」
俺とカミルさんで互いに握手を交す。女性の手とは違い、ゴツゴツとしていて、彼女の職人としての歴が長い事を感じさせられる手をしている。
「あと、カミルさん」
「なんだい?」
「サンデーを頼みます」
「ああ、いいぜ。あいつは筋が良さそうだから教え甲斐がありそうだしな。いまは馬鹿たれなメスガキだが。一人前の職人に育てやるさ」
そこまで思ってくれていたんだ……。彼女に頼んで正解だったみたいだ。
「それにその何だ。あの馬鹿たれは面倒見がいのある奴だ。あと何でかしらねぇけど火の扱い方とか砂とか鉱物の適切な取り扱い方にやたらと詳しいみたいだし。知ってたか?」
「いえ、初耳ですねそれ」
「まあ、お前が知らねえなら仕方がねぇか。んじゃあ、今日はここでお開きだな。じゃあな」
「では」
あまり盛大でも無く、淡々とした感じでカミルさんと分かれた。
次回の更新も楽しみにしていてください! 近日中に2日ほどかけて8話ほど更新します(仮ですけどね)
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