184話:セイバーMk.2
昨日の出来事が終わり、あれから俺たちはリリィと別れて家に戻り、そのまま身だしなみを整えて就寝に入る事となった。
そして夜が明けていつものように朝を過ごしてから、俺は2日目のバイトに出かけるサビを見送ったのちに、カミルさんの店に出かけた。昨日の約束と取引を完了させるためにも行かなければならない。
「ラッシャーい! あっご主人! 昨日は何してたー!」
「アフリカンなお姉さんを店主に預けてから色々とな。てか、お前その服と鉢巻き似合ってるぞ」
「本当か⁉︎ これツナギっていうらしいんだぜ‼︎ いつもきてる服と違って胴体は突っ張っちゃうけど、それを抜きにしたら頑丈で頼もしい服だな」
オレンジのツナギ(上着に当たる部分は袖を通さずに腰元で巻き付けている)に黒のインナーシャツと白の鉢巻きと、スタイリッシュな格好をしている。
「まぁ、作業用の服だから当然だろ。まさか異世界にもツナギがあったなんて驚いたな。まあそれは兎も角だ。カミルさんはいるか?」
「ししょー!!!! お客さんが呼んでるぞー!!!! 私のご主人だー!!!!」
1日目を過ごしてサンデーは凄くこうでやんでー! みたいな感じになってしまったような気がするな。そう彼女の変わりっぷりにうむむと思いながらカミルさんを待ってると、
「いよいよ明日だねご主人。向こうでは何するだ?」
「アルシェさんからはこれから行こうとしてる学園都市にある有名な名門の学校の学生としてしばらく身を置く事になるな。特別編入生とかだと」
「学生ってなんだあ?」
「学生ってなんだろうね本当。毎日机に縛られて黒板を見ながらノートに書き写すだけのつまらない単純労働をするだけの身分とも言えるし。身の丈に合わない綺麗事だけを聞かされるだけ。大人になって必要になるような事を教えてもらえずに社畜になって生涯賃金を勝手に決められてそれ通りの収入でしか生きられず。やりたい事は我慢だと虐げられて、得をする人間と損する人間に振り分けられるクソみたいな人生の通過点に過ぎない。それが学生なんだ。どうあがいても才能がなければ勝ち組にはなれないように社会は完膚なきまでにできている……」
だから俺は自ら引きこもりになったんだ。学んでいくうちに気付かされて、自分の将来を悲観して逃げて、そして俺は今ここにいる。
「ふーん、人間ってめんどーな生き方しか出来ないんだなー」
「まぁ、そうだなははっ……。それに学生を辞めた瞬間から。社会からは見放されて生きづらくなるように出来ている。本当に面倒だよ!」
「ご主人も私と出会う前までは大変な生き方をしてたんだな。やっぱこうやって楽しんで生きる方が一番さ。頭が良いだけが得するわけじゃないからね」
「まぁ、それでおかしな解釈をして怠惰になったら意味ねぇよなー。まあ、それは兎も角。カミルさん来ないな……」
「んー、呼んでくるよ。ちょっとまっててご主人」
「おう、待ってる」
そう聞かされて待つ事10分位が経ち。ようやくカミルさんが俺の元に現れた。サンデーはいない所をみると、何かの作業を入れ替わりで始めたのだろうか。
「いやあ、すまんな。あんたの銃の最終調整に手間取ってて。急に言い出した提案を受けてできる限りのチューニングを施してやったんだけど。どうだい? また射撃場で試し撃ちしてみないか?」
「頼んでた機能は全部詰められました?」
「ああ、私じゃなければどれも断られてたレベルだったけどな。なんせ機関銃の技術を狙撃銃に応用するわけなんだぜ? こんな見たことも聞いたこともない前代未聞のクリエイティブな仕事。腕に自信ある奴しかまずやらないな」
「カミルさんには感謝してます。もうこれ以上は銃を壊したくはないので。本当に助かりました」
破壊光線を行使するたびに銃をバラバラにする訳にはいかない。
「さて、事前に説明をしようと思う。まあ技術的な内容は省いてわかりやすく説明していこうと思う」
「お願いしますカミルさん。セイバーがプロトタイプからどう仕様が変更されたのかについて教えてください」
「じゃあまず、これまでのセイバーにはない新機能を幾つか取り入れてある。いわゆるアップグレードだな。これまでのセイバーはプロトタイプだった。それが今日からはロールアウトして正式に。名前はセイバーMk.2として呼ばれる事になる」
主なアップグレード内容はこうだ。
従来のプロトタイプにはない新機能として、銃の耐久性をグリムの知識を元にして飛躍的にアップさせる事に成功。これによって今までのようなバラバラになる事は、99%の確率でほぼ無くなったと言えるだろう。
さらに必殺技を発動させた時に起こるオーバーヒート現象によって、銃が完全冷却するまで使用出来なくなるという弱点を克服するために、素早くかつ簡単に新品の銃身に入れ替えられるバレルチェンジ機構が搭載されることとなった。
やり方としては、ボルトを引いた状態のままで保持しておいて、次に銃身に取り付けられてるキャリングハンドルの持ち手部分を操作して銃身を抜き取り、そのまま新しい銃身に入れ替える。
取り外した古い銃身は冷却が完了しだい再利用が可能である。一応地面に置いて放置する事になるが。何か耐熱性に優れた布とかを使った肩掛けの矢筒みたいな道具が欲しい所だな……。
それと、レシーバー左側面に折り畳み可能なフォアグリップが取り付けられることとなった。これは必殺技を発動させた時の衝撃を和らげる効果が期待できるという。まるでビームライフルを使うかのような持ち方になりそうだ。
と言った感じにカミルさんの長い説明は終わり、
「よし、じゃあついてこい」
「ういっす!」
さっそくセイバーMk.2をみにいく為、店に併設されてる地下の射撃場へ向かうこととなった。
明日も予定通り更新します。よろしくお願いします。
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