179話:眠る幼き聖竜に寄り添う
カミルさんにサンデーを預けた俺は彼女から明日例のモノを取りに来いと言われた。
「お前のオリジナルのライフルがようやく完成したぞ。おかしな使い方をして木っ端微塵にしてもアフターサービスは受けられないと思っておけよ?」
「う、うっす」
ようやくセイバーが手元にやってくる。今度は大事に使おう。そう思いながらカミルさんにお礼を言ってサンデーの事を任せた。
「学園都市アテナか……。あそこは王国の中で一番の先進的な技術が密集する場所だ。私でも知らない未知の技術があって、なんでも都市全体がとある大きなインフラギルドが設計から開発、さらに施工まで一手に担っているんだってさ」
「そのギルドとは?」
「うーんなんだったけなー。たしか……イケロス? いや、イカロスっていうギルドらしい」
「イカロス? どっかで聞いたことのある名前ですね」
「まあ、超大手インフラギルドっていうわけだな。観光でいくんだろ?」
「まあ、その。この街以外にも見識を深めたくて」
「いやー若いっていいね。私みたいな店をもっている人間には到底むりな話だなー」
「商売的な意味でですか?」
「そうかな。ほら、私の仕事はね。人が来て初めて成り立つ職業なんだよ。結果が全て。過程はもちろん大事だよ。でも、結局だれかが来ないと報われないのよ。職人の世界は」
「なるほど……」
結構奥の深い話だな。まあ、とりあえず家に帰ろう。
「じゃあ、また明日きますね」
「おうよ。サンデーは家で預かるがいいか?」
「気の済むままに任せます。自分はしばらくこの街を離れるので。出来たら定期的に手紙を通じてやりとりできるといいですね」
「まっ、正直飛竜便を使うと金が掛かりすぎるから。陸路を介してのやりとりになるがいいか?」
「ええ、気長にまってます」
「じゃあ明日こいよ」
「では。サンデーをよろしく頼みます」
俺はその言葉をカミルさんに伝えて店を立ち去った。それから俺はモンスター牧場に戻り、帰り一番で、
「ただいまホワイエット。どうだい、調子は? いい夢を見れているかな?」
「……すぅ……すぅ……」
なんとも読み取れない表情で眠りについている彼女にただいまを言った。モンスター牧場のいつもの衣食住を営んでいる小屋の一画に設けられた、四方をトタンで囲った寝室にある藁のベッドで、今日もホワイエットは眠りについている。このまま何事も無く安心して眠り続けて欲しい。
「本当に声を書けても目を醒さないんだな……」
グリムの所見? あの人が言うには急激に強大な力を連発して使った事による、一時的な副作用または後遺症だと説明を受けている。
「このまま起きない事はないよな?」
「…………」
返事が無いのは承知している。話しかけてどうなるかなんて分からない。そう不安を抱きながら彼女の側に寄りそって座り、右手で彼女の前髪をそっとすくい上げて整えてあげた。サラッとした白銀髪の感触を堪能しつつ、
「明日でしばらくのお別れだなホワイエット」
「……すぅ……すぅ……」
「大丈夫だ。俺なら一人でもやっていくさ。定期的にお前にお土産を送ってやるから楽しみにしていてくれよ」
言葉が通じているわけではないけど。自分に言い聞かせるつもりで独りでに語っている。ふと思わず彼女の側で添い寝がしてあげたいなと思った。
「……今なら誰にも見られてないし大丈夫だよね?」
「…………」
返事は無い。彼女は眠り続けている。明後日。俺は彼女とは離れる事になる。今ならあいつらにバレることなく一緒に居てあげられる。添い寝をするとなると私も私もとなってしまうからな……。対応が少し面倒かな。
――私が隣ですわ!――いいや私がとなりだ!――おいお前らはホワイエットに気を遣えってばっ!!!?
「うん、喧嘩の元だ俺のやろうとしていることは」
目に見えていました。というわけで、
「うん、寝よう」
彼女の安眠の妨げにならないよう、少し距離を置いて側で横になって一眠りすることにしよう。
「…………今何時だ?」
どうやら長く眠りすぎてしまったらしい。小屋全体が真っ暗だ。そう思いながら身体を起こしてホワイエットの顔を覗く。
「ありとうな」
声は聞き届いて無くても俺と一緒に添い寝をしてくれたことに感謝の言葉を述べて。
「じゃあ、晩飯くいに行ってくるわ」
部屋から立ち去って、サビの様子を伺うためにギルドの酒場に向かうことにした。
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