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175話:サトナカ サビは今日も静かに絵を描く

 酒を飲む事に満足して自宅兼モンスター牧場に戻ってみると。


「お、今日も絵を描いているな」

「…………」

「あ、ご主人おかえりー」

「おう、ただまー。遅くなってすまんな。直ぐに夕食の準備はじめるからまってろ」

「私も手伝うよー」


 サンデーと俺によるキッチンバトルが始まろうとしている。どっちが旨く料理を作れるかが最近の遊びであり、互いの親交を深める手段となっていた。


「サビは……ちょっといま忙しそうだな」

「あいつ朝からずっとあのままの姿勢で絵を描いているんだよな。私だったらイライラして画材を放り投げちまいそうだぜ」

「こ、声を小さく言えよ……?」

「あぁん大丈夫だよ。あれずっとこっちが声を掛けても反応しないから」

「サビをアレ呼ばわりするお前はなんだよ」

「んな細かい事をシテキしないで、ほらよっと」

「あ、おいそれはフォレストビーフの霜降り肉じゃないか。どこで手に入れてきたんだよっ!?」


 鮮やかな赤身と真っ白な霜が食欲をそそる。パッとまな板にドカッと置かれたソレの重量感ときたら凄いのひと言。重さは3キロはくだらないだろう。んで、


「なんか知らねぇ姉ぇちゃんがやってきてさ。サトナカくんにぜひこれを食べて貰いたいって可愛っ子ぶって渡してきたんだよ。んで、旨そうだったから許してやった」

「お・ま・え・は――もう少し相手を見てから受け取れよなっ!!!?」

「げぇおっ!? なんか私が悪いみたいにご主人が怒ってきたぞぉっ!?!?」

「当たり前だろっ!? それに変な物が詰まってたらどうするだよっ!? お前、ホワイエットの事を忘れてないかっ!?」


 ラミアさんだ。どういう経緯で知ったかは知らねぇが、俺達の住処にやってきた挙げ句に、こんな置き土産を置いてきたなんて……!!!? 困ったのレベルじゃないぞ!


「うぅ……生ものを渡してくる時点で返してくるなって言う意味合いもあるよな……仕方が無い。俺が責任持って全部食ってやるわ」


 と、彼女に言ったらギョッと瞳を細めて、


「ず、ズルいぞ! 私が最初に受け取ったんだからこれは私が責任もって食べる! ご主人は昨日の残りのカレーでも食べて!!!!」

「おま、めっちゃ必死に生肉を庇おうとするなよっ!? どうみても不衛生だからなっ!?」


 あぁ、高級肉が粗末に扱われてしまった。どうする? と困り果てていると。


「うるさいですわ。少しは静かにしてくださいまし……あっ、それ凄く美味しそうですわねっ!!!?」

「おまえもかー!!!?」

「きゃっ、な、なんですのぉっ!?」

「す、すまん取り乱してしまった。許せサビ」

「え、ええ。それでぇ、私を邪魔したなら。それはそれは美味しい料理がでてきますわよね?」

「…………」「…………」


 なんで隣にいるサンデーまでだんまりだよ。あんまりじゃないか。んで、両手を腰に当てて肩幅ほど足を開けて目の前に立っているサビは、


「はぁ……だろうと思いましたわ。これじゃあ、いつもと変わらずですわね。ちょっとそこを退いてくださいな。あ、私の料理姿を覗こうなどというおかしな事は考えないでくださいな。やったら許しませんわよ?」


 いつからこのキッチンは鶴の恩返し的な場所になったんだ?


「お、おう。わかった。俺達は退散するわ」

「えぇ、あの肉は私の物なのにー」

「どのみち誰かがひもじい思いをるすんだ。我慢しろ」

「ぶー、わかったよー。てか、なんで私の服の首根っこを掴んで引きずるわけ?」


 トタン壁で仕切られ、そして木製のドアで開け閉めする入り口付近で、俺は彼女の服の襟を掴んで連れて行こうとしていた。サンデー。間違っても虐待とかじゃないからな……? お前が以前に多くの余計な事をしてきた事がいけないんだよ。


「つまみ食い食卓全滅事件。忘れてないからな?」

「…………」


 ほら、いわんこっちゃない。このバカは本当にもう……はぁ……。思わず無言からのため息をついてしまった。


「ほら、いくぞ」

「あーい」


 ズルズルとなすがままに俺に引きずられていくサンデーであった。


「いただきまーす!」

「う、うめぇ!!!! サビ、おめぇすんげぇ料理が得意だなぁ!!!!」

「ふふ、ありがとうサンデー。ほら、ソースが口から垂れていますわよ」

「んー!」


 妹になすがままに口を布で拭かれる姉の図である。本当の姉妹じゃなけどな! 俺の勝手な妄想である。今日もまた食卓では楽しい一時が流れており、


「あぁ……このステーキまじで高級店レベルの品質だぞ……」

「あ、ありがとうですわご主人様……はぅ……」


 褒められてデレるエプロン姿のサビが実に可愛くてたまらない。


「うん、このシチューもいけるな。パンと相性がいいな!」

「ご飯もいいですけど。やっぱり食べ慣れている物で組み合わせるのもいいかなておもって……えへへ」

「なるほどね」

「サビ、おかわりー」

「はいはい、ただいま」


 笑顔をひとつ変えずにサンデーの横やりを素直に受け止めて、サビは差し出されたステーキ皿に、あたらしいステーキを盛り付けた。直ぐに皿は引っ込んで、サンデーはガツガツと急ぐようにして実に幸せそうに食べている。


「にしても本当に誰に教わること無く料理が旨いよなサビは」

「いえいえ、これでもリリィさんとかラミアさんとかにこっそり教えて貰っていたんですよ」

「へぇ」


 リリィはともかく。ラミアさんが彼女の口からでてくるとは意外だった。


「じゃあ、そのさ。ラミアっていう人からはなにか言われてないか? あ、そうだ。お前にラミアさんから手紙だぞ。ほら」

「あ、ありがとうですわ」


 俺の差し出したソレを受け取り、中を確認すると、


「……わかりましたわ」

「ん?」

「ご主人様。あと2日ですわよね?」

「そうだなー。明日であと2日になるな」

「私。アルバイトっていう仕事をやってみたいですの。お願いしますわ」

「おいおい、いきなりなんだよー。アルバイトってなんだー?」

「要はお店の手伝いだな。それでお金をもらって何かをするんだ」

「ふーん。サビはそれがしたいのかー。だったら私もやりたいぞご主人」

「はぁあぁっ!?」


 ちょっとまって部屋で眠っているホワイエットの守はだれがするんだよっ!? そう思っていると。


「大丈夫ですわ。ホワイエットちゃんはグリムさんか、リリィさんが守ってくださるっておっしゃられているので。それで私も頷いたのです」

「な、なんだよそれ。俺の知らない間に裏でもうそのアルバイトの話が進んでいるみたいな展開になっていないか……?」

「アルシェさんも条件付きで賛成していらっしゃいますわ。これも全てご主人様の為にと思いまして」

「どうしてそこまでしようと思ったんだよ……?」


 そう聞くと。改まった姿勢で彼女は椅子に座り直し。


「私達。これ以上ご主人様の負担になるような存在でありたくないと思ったからですわ……!」


 その言葉に俺は何を指しているのか直ぐに理解できてしまった。思い当たる節があったからだ。


『日常生活の環境』というワードが俺の頭の中によぎり続けていた。


数日更新があいてすみません。少し身の回りで慌てるような事が立て続けにあった為、その対応に追われておりました。


明日は0時~1時の辺りで予定通り更新いたします。よろしくお願いします。


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