172話:【果てしなき死闘】魔人・アリオンデビル戦
「くそ、なんだあの紫に光るブレスはっ!? まるでファンタジーみたいじゃないか!!!?」
――ファンタジーっていう言葉の意味はよく分からないけれど。ご主人様が頭の中で思っている事は伝わってきているよ。
『ンナハッハッハッハァ!!!! 力がみなぎってくるぞぉ!!!! くらえ、紫炎のブレスを受けるがいい!!!!』
――来るよご主人様!!!!
「聖刻竜の鎧でもあれは受け止めきれないのか!」
――何度も同じように受けていたら切りが無いよ! 私の身体は常に傷つかないと思わないで!
「すまん!!!! 今のは俺の驕りだ、くそ、あんな遠くに飛ばれてブレスで範囲攻撃されるとは……!!!!」
銃で反撃しようにも、現状手にある武器では機動力のあるMkR18しかない。だが、これはレフィア先輩から手渡された物で、どんなスペックなのかが分っていない以上、むやみに使いたくはなかった。しかし、
「アサルトライフルで倒せる相手なのかよ?」
――連射武器が使えるなら、試しに使って見ようよ。
「あぁ、防戦ばかりではこっちが消耗していくばかりだな。やるか」
すかさず俺はMkR18を背中からとりだそうと……したのだが……。
「鎧を着てるから取り出せねぇわ……!!!?」
――あ……。
物理的に無理だった。なので、
「このスキャットライフルで頑張るしかないな! プッタネスカの時もそうだったしな」
ボルトアクションライフルで闘う事になった。ライフルスコープの倍率を✕1.5に絞って調整しつつ、前に向かって全力で走っていく。背後からはアリオンの吐き出す紫炎のブレスが追いかけてきており、息切れを起こすまで走り続けた。
『小賢しい! ならば、いま頭の中で閃いた――ダン!――お前を確実に死に追いや――ダン!――1撃を加えてや――ダン!――人が話しているときに銃撃をしてくるな!!!?』
「あれぇ、やっぱあたってないのか????」
『ものの見事に全弾がわしの頭に命中しておるわい!!!!――たく、今時の若者は気が短くて仕方ないの……、てかお主、相当の名射手じゃの』
「当たり前だ。こちとらネメシスの一員に迎え入れられてから腕を磨くきっつい訓練を受けてきたんだよ! 俺はな、鬼女教官から黒豚呼ばわりで罵倒されつづけて、あの地獄から這い上がってここまで辿り着いたんだよ……!!!! 俺のこの辛い気持ちをどうしてくれるんだよ!!!?」
『おっ、おう……なんかすまんの。若いのに相当な苦労をしていたようだな……。こうして出会わなければ貴様に国十字勲章を与えていたかもしれんな』
「そんな物貰っても嬉しくないしいらねぇわ!!!?」
まぁ、いい。
「で、この鎧を着ている俺になんの一撃をくれるんだ?」
『直後の会話に不和を持ち込む形にはなってしまうな……』
「言っておくが。俺の鎧はそう簡単に壊せないぜ。これはホワイエットが――おっと、敵のお前に言うのはまずかったな」
この鎧事態がホワイエットそのものなのだ。なのでスペックもホワイエットドラゴンに準じた性能をしていて、それに乗算する形でモンスターテイマーの俺の能力が付与されて強化されている鎧なのだ。
『余計に気になって欲しくなるじゃないかっ!!!? くそ、何としても貴様からその鎧を奪ってやる!!!! くらえ、大火球の爆炎。その名も≪紫爆炎の業火≫だっ!!!!」
魔人アリオンデビルは紫爆炎の業火を唱えた! 辺り一面に紫の炎が揺らめき現れて、詠唱者が掲げる両手へと吸い上げられるように集っていき、その炎が盛大な大火球へと成長を遂げていく!!!! 尋常じゃない大きさをしていやがる!!!! 何が閃いただ、ただの脳筋じゃないかよ!!!?
『さぁ、この屋敷ごと貴様を木っ端微塵に破壊してやろう。あの世で後悔するがいい、わしはこの力でボルカノを、いや、この世界の全てを闇の爆炎で破壊しつくし、空虚となった大地に新たなる楽園を築き上げよう。そこは人の姿をしたモンスターが永遠に生きる世界だ。どうだぁ興味あるだろぉ? だが、貴様はここで死んで空高くから国が繁栄する様を指をただくわえて見ることしか出来るのだからなぁ! 冥土の土産話にするがよい!――死ねぇ!!!!』
あの大火球は破壊範囲をこの部屋に限らずにしている。直感で分る熱さ、肌を焼き付こうとしてくる熱波に、未知数の破壊力を秘めたその球体の質量はどれもトップクラスの攻撃だと分る。身体全身が熱くてたまらない!!!!
「だ、ダメなのか……?」
あれを見て思わず戦意喪失。もう、逃げ場がない。あれを俺に投げつけられたらひとたまりも無いし、
「リリィ……みんな……、逃げてくれぇ!!!!」
下で陽動を掛けてくれている彼女達にも甚大な被害が及ぶ。俺はとんでもない化け物を相手にしていたんだ……。
『これで終わりだ勇気ある者よ。貴様の名は末代まで邪悪な存在として語り継がれるであろう。ンナハッハッハッハァ!!!!』
――ここで世界を終わらせるわけにはいかない!!!! 私はご主人様ともっと遊びたいんだ!!!! グリムさんごめんなさい、グリムさんが教えてくれた禁断の技をここで使わせてもらうね!!!!
『闇を払う聖竜の力!!!! 聖風の衝撃波!!!!』
そのホワイエットの言葉と共に次の瞬間。俺の背中から眩い竜の翼が顕現し、俺の意思とは無関係に魔人アリオンデビルに向けて、大きく何度も翼をはためかせると。背中の翼によって巻き起こった風は光を伴って聖なる嵐へと昇華して。
『私がみんなを守ってみせる! うぁああああああああああああああああああああああ!!!!』
「ホワイエット……、お前……!!」
ホワイエットの掛声と共に聖なる嵐は周囲に燃えさかる炎を一瞬にして掻き消していきながら、空に浮かぶ魔人アリオンデビルと紫爆炎の業火を飲込むように巻き込んでいき。
『グギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ!!!?』
「アリオンが死んでいく」
『オノレェエエエエエエ、モンスターテイマーァアアアアアァ!!!!』
嵐の中で怨嗟の怒号を上げつづけるアリオンの声は徐々に力を無くしていき。聖風の衝撃波が収まると。
『グヌヌ……グゥゥ!!!!』
地面に瀕死の状態で床に跪いて喘ぐ、魔人アリオンデビルの姿が現れた。
――これで最後に決めようご主人様!!!! 私達の力であのおじさんを天国へ!!!!
俺の頭の記憶を辿って天国という言葉を知ったようだ。俺は挫けていた戦意を奮い立たせて。
「いくぞ。俺達の絆と正義を見せつけてやる!!!!」
『ヤ……メロ……』
――ご主人様。武器を天に向かって突き立て。そしてこの言葉を唱えて構えて撃って!!!!
俺はホワイエットの指示通りにスキャットライフルを片手に持ちながら天に銃口を突き立てた。すると刹那の瞬間。
――ゴロゴロ、ピッシャン!!!!
どこからともなく現れた眩い聖なる光の稲妻が、スキャットライフルに伝わり落ちて。
『ヤ……ヤメロォオオオオオ!!!!』
俺は聖なる稲妻に包まれたスキャットライフルをニーリングの姿勢で構えて、最後の力を振り絞って肉迫してくる魔人アリオンデビルに狙いを定めて――
「喰らぇ必殺――聖刻竜の大咆哮!!!!」
――ホワイエットとの連携技『聖刻竜の大咆哮』を唱えた後に引き金を引いた。
――ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
『ユウシャ――ンギィャァアアアアアアアアアアアア!!!?』
最後の断末魔と共に魔人アリオンデビルは、極大の破壊光線と共にその姿を消した。
聖刻竜の大咆哮によって開放的になったこの部屋で、姿勢を元に戻して立って、俺は朝日に染まっていく遠くの景色を眺めながら、
「ぅ……今日もまた新しい日常がやってきたな」
陰鬱だった毎日を終えられることに感動した。
アリオンが最後に叫んだ断末魔。ユウシャとは何の事でしょう?
明日の更新で2章はエピローグを迎えます。お楽しみに!
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