171話:【魔人・アリオンデビル】貴族街『ベイ・カジノ』その26
『くっ、くっ、くっ、さぁどうするモンスターテイマーよ。今すぐにでもそこで頭を擦りつけて謝れば許してやっても良いのだぞ。その際にはその身に纏う伝説の鎧を差し出せ』
「伝説の鎧とか知らねぇよ。そんな事より俺の身に起きている事に頭が追いついていなくて困っているんだよ。教えろよその伝説の鎧っていうやつの話を」
『その鎧は先代。つまりこのボルカノの街を築き上げた英雄の残した遺産だ。あの隠居者が愛して止まなかったとされるその英雄がこの世に残して逝った聖なる竜の力が込められた鎧。文献によると。その鎧は万物のありとあらゆる者達を付き従え、大いなる闇から着用者――つまり、闇の力から英雄を守ったとされる最強の鎧なのだ。そして――』
「そ、そして?」
『その鎧はモンスターテイマーが窮地に立たされた時に顕現すると書き残されておるのだ。まさにこの時が貴様の窮地の事態であり、わしにとって絶好の好機でもある! わしはその鎧がどうしても欲しくてたまらない! 聖竜である伝説のモンスターの力、あるいは素材が使われたその鎧は値のつかないほどの価値のある代物。コレクターであるわしが欲して当然のことであろうっ!!!?』
「…………」
つまり、私利私欲の為にホワイエットと編み出したこの鎧を寄越せと言っているのか?
「アリオン。いや、魔人・アリオンデビル!!!!」
『…………』
「俺は貴様を許さん。そして、この鎧は伝説の鎧とか呼ばれている防具なんかじゃない!!!! この鎧はホワイエットが変身した姿だ。それはつまり、お前にホワイエットを渡すことなどはしない。全力でお前を倒す!!!!」
伝説の鎧? んなもん知るかよ。俺とホワイエットが一緒になって出来たこの鎧の名前はな。
「この鎧の名前は白竜の鎧だ!!」
――えぇー、もっとかっこいい名前にしてよー。
「うっ、うるせぇっ!? せっかく格好よくあの魔人と戦える所だったんだぞっ!!!?」
――せめてご主人様。聖刻竜の鎧でもよくない?
ご主人の俺より格好いい名前をつけられるホワイエットのネーミングセンスが凄く羨ましい。あぁ、もう仕方がねぇなぁ!
「魔人・アリオンデビル! この鎧は伝説の鎧なんかじゃない!!!! この鎧は俺とホワイエットで編み出した世界に一つだけの鎧。聖刻竜の鎧だ!!!!」
『何をブツブツと独り言を喋っておるのかと思えば、実に下らん話だ。ふん、貴様の戯言を聞くのも飽きた。大人しくその鎧を渡して貰うぞ!!!!』
「聖刻竜の鎧だ!!!!」
『やかましいわい!!!? わしでもその名前にはセンスが無いと思って黙ってやっておったのに、強引に言わせよとするな!!!!』
「えぇ……」
『ゴホン、なんだかお前と話をする度に疲れてくるわい……』
「年のせいだと思うぞ」
『これでもその口が言えるとでも思うのか?』
――シュボォオオオオオオオオ!!!!
「――っ!!!?」
『ンナハハハハッ!!!! 力がみなぎるあまりにこの部屋を火の海にしてやったわい!!!! 実にキィイモチィイノォオオオオオオ!!!!』
「魔薬の作用でおかしくなってやがる……」
俺の言葉を受けて魔人・アリオンデビル――アリオンが羽をばたつかせて宙に浮かんだ直後。奴はその場で狂喜に笑い、部屋の至る所に口から炎のブレスを吐き散らし、暗かった部屋を真っ赤に染めあげた。
俺は退路を失ってしまった。徐々に消えない炎が自分に迫りつつある。しかし、その炎からは暑さを感じない。
――大丈夫だよ。私の身体は火には強いから平気。力はまだまだだけど。マグマの暑さくらいなら大丈夫かな。
「あぁ、さすがホワイエットっといったところか……助かるぜ……」
『ホウ、わしが吐き出した灼熱の炎に平然としていられるのか』
「そっちこそ。魔薬の副作用とかでヤバイんじゃねぇのか?」
あいつが魔薬を使ってからずっと気になっていたんだ。あの魔薬はプッタネスカ専用の薬品だ。それ以外の人間が使えばたちまち副作用で暴走状態に陥り自我を消失して暴れ出す。
しかし、それなのに奴は平然としている。すると俺の問い掛けに対して、アリオンはニタリと笑みを浮かべて、
『この薬は教祖様が直々に改良なさられた新薬だ。何故それが分るかだと? 薬がそう貴様に話せと頭に語りかけてきておるだ。巷で騒がれている欠点を。教祖様が直々に手を加えられた事で。こうして意識を保つことが出来るようになったのだ。まさに神の御業、神の奇跡である!!!!』
宗教的な言葉を述べた後に、
『さぁ、お前も神の寵愛を受けるために死のうではないか! 安心しろ、わしの腕の中で安らかに眠れるのだ。感謝するのだぞ』
俺に死の宣告を告げて襲い掛かってきた。
明日からの更新は午前0時~1時の間になります。よろしくお願いします。昨日は2本立ての予定でお話ししておりましたが、すみません。また足の痛みがぶり返してしまったのでこの時間での投稿とさせていただきました。
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