170話:【敢然と闘う】貴族街『ベイ・カジノ』その25
『ガァアアアアア!!!!』
「いいぞ、もっと俺にぶつかってこい!!!!」
「何がなんだかさっぱりだ……」
――ご主人様。今日だけはいつもとは違って手加減はしないよ。
「って、普段は大人しい自分を演じていたって聞こえてくるのは気のせいかな?」
――うんん、違うよ。今日はいつもより三倍。ご主人様にじゃれるつもりだからね。
「あぁ、そういう、って、それってヤバくない?」
まぁ、そういうつもりで言い出したしいいか。
「そこだ!!!!」
『アグゥッ!!!?』
ホワイエットの鳩尾に銃のストック使った刺突攻撃をしかけると、それに対応の遅れた彼女は、その一撃を受けて、大きくのけ反って後ろへと下がっていった。
『ガァアアアアア!!!!』
「まだまだだぞホワイエット。こんなパターン化した攻撃だと、これから多くの敵と出会うことになるんだから。もっと俺の動きに合わせて機転を活かすんだ!!!!」
――そういわれても、私はあまり闘ったことがないから分らないよぉっ!
「じゃあ、今日が初めての訓練であり、実戦になるな。お前のもつ力を精一杯に使って俺を倒してみろ」
――倒したらどうなるの?
「うーん、そうだな……。じゃあ、1日俺を自由にしてもいいってのはどうだ? 悪くない話だろ?」
「さっきから何を一人で話をしておるのだ貴様はっ……!!」
「うるせぇ、クソ爺ィ!!!! 俺達の会話に水を差してくるなっ!!!!」
「――んなっ!!!?」
俺の睨みに気圧されたのか、はたまた、同じ気持ちだったのかホワイエットが同じようにアリオンを睨んだ事によるものなのか。どちらにせよ、俺達の感情共有の力の前には、誰一人さえ介入など到底できないのだ。
「おい、それ反則じゃねっ!!!?」
突然俺の目の前で白いレーザー的な怪光線が一直線上に降り掛かってきた。その勢いはというと、
――ホワイエットはこうみえて破壊交線を出せるんだよ! 凄いでしょ!
彼女の正面にある全ての物が、黒焦げになって無残な姿となる程の恐ろしさだ。なお、俺の後ろにいたアリオンはというと、
「なっ、なんだぁっ!!!?」
もろにその光線を受けて頭部が禿げてしまっていた。可哀相に。もう髪の毛は左右にあるだけしかないなんて……。草生える。
「何を貴様は笑っておるのだぁっ!!!!」
「いやだって、お前の頭の上がはげてるだもん……ぷぷぷっ……!!!!」
「あぁ……そんなぁ……」
どうやら頭の毛についてはご自慢の教祖の加護は適用されないようだな。改めて大笑いをする。ちなみに後ろではホワイエットがとても楽しそうな表情を浮かべていて、
――もっとやってもいいっ!!!? ちょっとあのおじさんの頭の形が変だからスッキリさせてあげたいの!!!?
「あぁ……ちょっとな……」
「ひっ、もう止めろぉ!!!!」
「そうだな。うん」
「だ、だろっ!?」
「気持ちちょっとなんか違和感のある髪型になっているし。ホワイエット、あのおじさんの髪の毛全部スッキリしてやろうぜ!」
『ガゥ!』
「――っき、貴様らぁあああああっ!!!!」
おや、威勢の良い割には部屋を出ようと逃げ出すとはな。まったく年寄りは気が短いんだから……。俺は手を合図に、
「やれ、あいつが動けない様に。徹底的に痛めつけてやるんだ」
――うん、わかったー。
その直後。異形の姿だったホワイエットが白い光と共に、
「よかったな……本当に……」
「ただいま。ご主人様。えへへへ」
白き竜の翼をもつ竜人の姿に生まれ変わって俺の元に現れた。魔薬の痕跡は感情共有の力で消滅を確認している。それどころか今までよりも彼女から力があふれているようにも感じる。
それはまるで聖なる力。ふと、
「ねぇねぇご主人様。私、少しだけ強くなったみたいだよ」
「あぁ、以前よりもなにか大きな力をお前から感じるな」
「じゃあ、今ならグリムさんの言っていたアレが出来そうかな?」
「アレって?」
「たしか……その……こうやって」
「お、おう」
急に俺におんぶをせがんでくるホワイエットの言うとおりにしてやると。
「じゃあ、えと、グリムさんが言うには……えい! 聖竜合体!」
「うぉっ、うぉおおおおおおお!!!?」
なんだ、急に視点が上に登っていっているぞぉっ!!!? あとなんか凄くむず痒いなっ!!!?――って、思っていたら。
「あぁ、ダメかもっ!!!?」
「へっ――うわぁっ!!!?」
急に地面に振り落とされてしまった。傷みを我慢しながら立ち上がると。
――あれ、なんだか変な感じがするよ……?
「…………はぁっ!!!?」
なんと、俺はいつの間にか真っ白に金色の装飾が施された鎧に身を包まれていた。これは一体……!? しかもだ……。
『ご主人様! ご主人様!』
「え、鎧が喋ってる……? その声はまさかホワイエットなの……か……?」
『あれれぇ……?』
お互いに今の自分達の身に起きている事が分っていない状態にある。ふと、
「……なんと……そのドラゴンは……かの有名な聖竜の末裔だったのか……。かつて初代のモンスターテイマーと聖竜が叡智を振り絞って産みだしたとされている伝説の鎧がここに……」
「伝説の鎧だと?」『なんのことなの?』
「……欲しい。喉から手が出るほどその鎧。いや、そのドラゴンが欲しくなってしまった……!!!!」
「まだこりねぇのかよ……」
「うるさい!!!! えぇい、かくなる上は……!!!!」
「それはっ!?」
なんと、アリオンの手には魔薬入りの注射器がもう一つ握り締められていた。おいおい、これってやばいぞ……!!!? そして、
「サトナカ カリトォ!! ここで貴様を殺してやろう!! 公爵の慈悲で貴様にはわしが直々に処刑してやろうではないかぁっ!!!! ふんっ!――あががあぁぁああああああああああ!!!?」
俺達の制止する間もなく、狂喜に取り付かれたアリオンは、自身の首に魔薬入りの注射器を突き立ててしまった。そして……。
『ガァハッハッハッ、ジツニキブンガイイ! コレがモンスターになるということなのか! 教祖様、感謝いたしますぞぉ!! あなた様が授けてくださいましたこの力。必ずや目の前のモンスターテイマーを打ち倒してやりましょう!!!!』
周囲に鮮血をまき散らしながら、青白い毛並みに、コウモリの羽を背中に生やした類人猿型の魔人の姿に変身を遂げたアリオンは、ここにはいない教祖に対して天を仰ぐように感謝の意を露わにしていた。
明日も予定通り更新いたします。おそらく二本立てでの更新になるかと思います。足がどうにも鳴らないので暇ですので笑 では、よろしくお願いします。
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