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169話:【死闘の戦い】貴族街『ベイ・カジノ』その24

 俺はホワイエットと戦う事に躊躇していた。


『アハハハハッ、タノシイネ!!!!』


 俺の足下に衝撃が走る。彼女は足を使って地響きを引き起こしたからだ。それに遅れて反応してしまい、バランスを崩して足からずっこけてしまった。


「あぁはっはっはぁ!!!! これは傑作だ!!!! どうだ、ワシの足下で両膝をついて、泣いて謝って床に額を擦りつけて許しを請うのであれば。少しは考えてやってもよいのだぞ?」


 楽な方に誘いを掛けてくるアリオンの言葉にイラッとしながらも、ホワイエットの追撃にどうにかギリギリの所で避け続ける。


「うるせぇ、クソが!!!!」


 正直今の自分には、この様な言葉しか帰す事しかできないくらい余裕がなく、反撃をしようにもどうすれば良いのかまったく分らずにいて、


「くそっ!!!! ホワイエットをどうすれば元に戻せるんだっ……!!!!」

『イタダキマス、アハハハハ!!!!』


 右手にある竜の爪が俺を切り裂こうと襲い掛かってくる。それを俺は流れに合わせて動体視力に頼る形で避けていく。


「ほう、そうやって避けることもできるのか。なるほどな。これは少し観察しがいがありそうだ」


 アリオンの言葉などどうでもいい。ただ後ろから聞こえてきているだけの雑音だ。研究? 知るか、俺にはそんなくだらない事より、俺の大事なモンスターが、異形の姿で暴れているのをどうにかしたいという思いの方がとても大事だ!!!!


――ホワイエット、聞こえるか!!!! 頼む、俺に声を聞かせてくれ!!!!


 感情共有の力で目の前で暴れ狂うホワイエットにコンタクトを試みる。武力で押せないなら、言葉を通じてやるしかないと思っての行動だった。


――聞こえるか!!!! 返事を……返事をくれよ……!!!!


 だめだ。モンスターテイマーの力を使ってでも、魔薬に汚染されてしまった精神の前では、俺の未熟さ故の理由で彼女の声が聞こえてこない。ただ、ただ、濃緑の霧がモワッとホワイエットの心に渦巻いている光景しか見えてこない。


「何か、何か手がある筈なんだ……!!!! 考えろ、考えるんだ自分……っ!!!!」

「何を無駄な」


 はぁっ?


「無駄だと思ったら。俺はそれに抗ってやる。ただそれだけのことだ……!!!! お前は引っ込んでろ!!!!」

「ひっ――!?」


 スキャットライフルに装填された麻酔弾を、アリオンの額へ正確に狙いを定めて引き金を引いた。だが、


「なっ、なんで頭を狙ったのにお前、どうして眠らないんだ!!!?」

「くっ、くっ、くっ、あぁはっはっはぁ!!!!」

「何を笑ってやがるんだっ!!!!」

『アハハハハハッ!!!!』

「くそっ」


 アリオンに起きた事象。奴に放った麻酔弾は確かに額に命中して突き刺さっている。だが、それを受けても意識を失うことなく堂々としていて、その事に唖然とし驚愕する俺を、背後から飛びかかって襲い掛かるホワイエットという三つ巴の事態。攻撃を避けてはアリオンを見ての繰り返しをしながら。


「簡単な話だ小僧。わしはレアハンターズから素晴らしいご加護を頂いておるのだ。あぁ、教祖様。感謝いたしますぞぉっ!!!!」


 奴の日記にも出てきたその教祖が、アリオンに与えた何かの加護が働いて、俺の麻酔弾が無力化されたというのか???? なんだよそれ、


「まるでチートじゃないか……いや、モブにプレイヤーが危害を加えられないみたいなシステムのルール的な……」


 つまり、外野には何も手出しはできないと……。やつのいう教祖の加護という力の全容がまったく分らないが、


「あぁ、そうか。なら、この戦いが終わったら後でお前をじっくりいたぶってやるから覚悟してろよ……?」


 こんな奴に負ける気がしない。負けたくもないし、負けるわけにはいかない理由ができた……!!!!


「俺はずっと非殺を心がけてきた。だが、悪にはそれ相応の対価が必要になる。そのお前の腐った思考を俺は許すわけにはいかない。モンスターが好きだ。あぁ、俺も大好きさ。心から尊敬して愛してもいるし守りたいその笑顔でもある可愛い存在だ。だがな、お前は道を間違った。見せて貰ったよ。剥製がずらりと並ぶあの場所。そこにホワイエットにそっくりな人間の姿の模造品があった」

「……みたのかお前。わしの大切なコレクション達を」

「あぁ、みたさ。悪趣味なものだなって思って。あぁ安心しろ。ここにある日記。大事に持ち帰らせて貰うぜ?」

「んなっ、そ、それはぁっ!!!!」


 余裕のある態度が豹変し、皺のある顔が怒りに染まっていく。アリオンは手にしていたグラスを床に投げつけて、右手を前に指を俺にさしてきて、


「返せ!!!! 貴様には必要の無いものだ!!!!」

「ふん、残念だが。そうはいかない。これは俺が掲げている宿敵の存在が書かれた手がかりだ。そう易々と返すわけにはいかないな」

「己……!!!! ホワイエット、直ぐにそこの小僧を食い殺せっ!!!!」


 すると、


『…………』

「どうした!!!! なぜわしの言葉をきかぬのだ!!!!」

『…………』


 そういえばさっきからずっとホワイエットは俺から離れてその場で制止してるな。タイミングを見計らってというか、最初よりあまり襲い掛かってこない。ふと、


――ご……主人……さま……。


「ほ、ホワイエット……!!!?」

「な、なんじゃっ!?」

「聞こえるか!!!?」


――た……す……け……て……。聞こえ……ているよ……。苦しいよぉ……。


「あぁ、奇跡だ……!!」

『アグググゥ!!!?』

「な、どういうことだぁっ!!!? ホワイエットちゃんが苦しみもがいておるだとっ!!!? 貴様、何をしたのだっ!!!!」

「どうしたもこうしたも。俺のモンスターテイマーの力が奇跡を起こしたんだよ!!!!」

「なぁにぃっ!!!?」


 俺はもっと感情共有の力で途切れ途切れに聞こえてくるホワイエットの声に耳を傾ける。


――遅いよ……。もう、私、おかしな事になってるよ……。何をしているの……?


「気にするな、っていうのは嘘になるな。お前、すっげぇキモい格好に変身してるぞ?」


――ふぇ……? そう、なの……? いやだなぁ……、私、ご主人様の前でどんな格好をしているんだろう……?


「ふふ、そうだなぁ。言葉でいうなら、半分竜人の姿をした何かかな」


――わかないよぉ……。ご主人様はいつもそうやって曖昧な事言ってちゃんと答えてくれないんだからぁ……。


 あぁ……、少しずつ彼女の心の中に繋がっていっているのが感じられる。もう少しの踏ん張りどころか……?


――ねぇ、私、今は何をしているの……?


「ちょっとやんちゃになって俺に襲い掛かってきているな」


――ふえぇえぇえぇ……!!!? ご、ごめんなさい!!!!


「いいさ。普段お前とはあまりスキンシップしてやれてなかったから。俺の血や肉1つお前に食われたって何とも思わないさ」


 それだけの事をしてきたと思っているから許せる。たとえどんな姿になってもお前の事を大好きだから。


――そっか、突然霧の中からご主人様の声がしてるなって思って目を醒したら……そういうことなんだ……。


「ん? どういうことだ?」


――多分。ご主人様の血を食べたから。こうして話す事ができるようになったんだと思うの。あと、不思議なんだけど。少しずつ周りが暖かくなってきているよ。凄く優しくて暖かい……。


 つまり、魔薬の力が俺の血で薄まってきているということか……? なら、


「少しの我慢だ……。そうすれば元に戻れるはずだ。頑張るんだ!!!! 俺もお前が元に戻るまで付き合ってやる!!!! だから全力で掛かってこい!!!! もう迷わない!!!!」


 スキャットライフルを構え直して俺は覚悟を決めた。


――うん……。痛かったらごめんね。


「なぁに、また俺の血とか肉とか食べたらって、結局そっちの方が早くね……????」


――でも凄く痛そうな事だよ????


 お互いに疑問を投げ掛け合う。まぁ、少しの笑い声を漏らしながら、


「さぁ、二回戦をやろうぜ。俺達の最高の戦いをあのクソ野郎に見せつけてやるんだ!!!!」


 時間が少し掛かってもいい、彼女が少しでも早く元に戻るならそれでいい。俺はもう絶望なんかしない。希望を持ってホワイエットと正面からまともに向き合ってやらない義務がある。モンスターテイマーとして俺は成長しなければならないんだから!



少しずつですが、痛風の痛みが引いてきております。気分よく小説がかけているので、明日も予定通り更新いたします。いよいよ2章もラストシーンまできました。まだ書きたいことが2章にあるのですが……。ちょっとまよってます。とりあえず3章に持ち越した方が良さげな感じもしているんで、とりあえずその時になって考えてみます。



この作品が少しでも『面白い』また『続きが気になる』と思って頂けましたら、是非とも広告下にある『☆☆☆☆』の所を押して高評価をお願いします! ブックマーク登録も必ず忘れずにお願いします。レビューや感想もお待ちしております。誤字脱字報告の方も随時受け付けております。



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