165話:【アリオン邸】貴族街『ベイ・カジノ』その20
ホワイエットが導いてくれたおかげもあり、俺とリリィ先輩は無事に、道中で衛兵達に出くわしてもめ事に発展はしたものの、死傷者を出すこと無くボルカノの領主であり王立学者ギルドのトップ3に君臨する公爵である、アリオン・ルー・ドワール三世――別名アリオン博士の住まう屋敷に辿り着くことが出来た。これもまたリリィ先輩の声の力のおかげだ。道に迷ったときの保険の為に、衛兵達に出会う度にその都度、道案内をさせた。
「なるほどねー。衛兵を側に取り付かせておいて、怪しまれないように行動できるように偽装をかー」
「副次的なカモフラージュ効果ですね。そこまでは思いつかなかったんですけど。結果的に安全にここまで来れたんですからいいと思いますね」
「ええ、そうね。どうする? このまま直ぐ近くで身を潜めて3人をまつ?」
「その必要はなさそうですね」
俺の見る先には、
「おーい、ご主人! 大丈夫かーっ!!」
来た道とは反対の街路地の奥の方で、サンデーが元気に手を振って声を掛けてくる姿と、
「ご主人様。私達頑張りましたわよー!」
何かいい成果を出せたのだろう、サビがそう嬉しそうに声を張って伝えてきてくれて、
「新人! もっとはやくコネクトを使って連絡しなさいよ!! 無駄足になるところだったじゃない!!」
俺の連絡が遅れたことに対して怒るレフィア先輩の姿があった。少し離れた場所から横並びになって歩いてきていた。
「え、事前に連絡していたの? いつのまに?」
「ああ、そのつい30分前にですね。サンデーから感情共有を通じて連絡があったんです。3人でどうにかゼセウスの撃退に成功したと。その時に俺達がどこに向かっているか教えたんですよ」
「えっ、撃退に成功したって本当!?」
「ええ、詳しく話を聞かないと分らないですが。少しでも俺の為に役に立てて良かったって話をしてきたので、倒しきれなかったのは残念ですけど、また出会ったその時は――」
ゼセウス。今回は逃げ切れてよかったな。おかげで俺にもお前を倒すチャンスに恵まれたわけだ。
「――俺がこの手で正義の制裁をくだします……っ!!」
「カリト君……そこまで思っていただなんて……」
「ああ、そうだリリィ。俺はゼセウスという人間や、悪意をもって利益優先でモンスターを苦しめる奴らを俺は許しはしない。偽善や自己満足だと思われてもいい。そこから俺はいろんな事を学んで、俺は歴代のモンスターテイマーの先輩達と肩を並べられる人間になりたいんだ」
「私はそうは思っていないよ。たとえカリト君の事を知らない人達が後ろ指をさしてそう言ってきても。そこから成長しようと頑張っている君の事を私は否定したり、足を引っぱるような事をしたりはしない。そういう事を言ってくる人達なんて結局は何も変わろうとしない人達の他人事の話。本当にその人の事を思っていない言葉だから。私は君のその言葉を受け入れるよ。人はどういう環境で過ごしたとしても変われる。君の思想を実現できるように私もずっと側に居てあげるから」
「ありがとうリリィ。君の事を心の底から信頼できるよ。命に対して尊敬を持ち、感謝して頂き、そして愛をもって接して大切にする。それがオレ流のモンスターテイマーとしてのあり方だと言うことを。世に知らしめられる人間になってみせる。まず、ここから第一歩。目の前にある悪に正義の鉄槌を下すことから始めようと思う」
「何の話だー?」
「これからの俺達の未来についての話をしていたところだ」
「ふーん、そうなんだー。まっ、そこはご主人の頭で考えることだし。あ、それよもさ。ゼセウスの野郎に私、一発深手の傷を負わせてやったぜ! 片目をぶっ潰してやったんだ! それとサビもリベンジマッチに燃えて、今度も同じ手を使って仕掛けてきたあいつの不意打ちをバチバチって跳ね返したんだ!!」
片目の損失。なるほど、戦いはそこまで激しかったのか。俺もその場に居合わせられたらよかったのだが……。俺の精神を好き勝手に操ってきたお礼もしたかった。今度あった時にはリリィに頼んで同じ事をしてやらないと腹の虫が治まらないぞ。
「まっ、私の出る幕じゃなかったみたいね。さすがモンスターなだけあるわ。人間の私がでるような幕じゃ無かった。私は後ろで傍観者気取りで見物させてもらっていたわ」
「それってつまりサボりじゃ無いの」
「本当よ。私だって可愛い後輩を滅茶苦茶にしてくれたからお礼がしたかったんだけど。そこのサンデーが目を潰した辺りから状況が変わってね。残りの取り巻き、同じ格好をしていたから分らなかったけど、ゼセウスの手下が彼を庇うように前にでて撤退してしまったのよね」
「足止めで追撃ができなくなったんですか……」
「強引に進めるわけでもなかったからね。とりあえずそこで戦闘は終了よ。あとは私が殿をして手下共をボコボコにして衛兵の詰所送り。それでサンデーとサビと合流したら。新人からここにいると言われたから行こうっていう話になったわけ。んで、合流したわけよ」
とレフィア先輩はいいつつ屋敷の方をみて。
「……なるほど。前々からこの屋敷には良くない噂がネメシスに入ってきたからどう何だろうと思っていたけれど。丁度良いわ。組織としてもここは一度内部を洗っておきたかったから。領主ということもあって手出しが難しかったけど。非公式でやれそうだし。充分に暴れられそうね」
良くない噂というのは詳しく知りたいが、直接見た方が早いな。ということで早速。
「強行突入で行くわよ!!!!」
ホワイエット救出作戦、いよいよ本番に突入だ!!!!
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