157話:【尾行】貴族街『ベイ・カジノ』その13
「いた、あそこだ!」
茶店がある通りを少し歩いた所で、行き交う人混みに紛れて、青のローブを纏った学者の3人組が横並びに奥へ向かって歩いて行くのを目撃した。俺達は顔を見合わせて頷きあい、そのまま気づかれない様に距離を置いて背後から尾行する事にした。
「どこに向かっているんだろうな」
「そう言われても分らないなー。まっ、人気のない所で襲えばいいんじゃない?」
「どんどん路地裏に向かって一緒に歩いていますわね」
うむ……。分らん。多分だけど、次に向かう目的地となる場所へ続く近道を、あの3人は歩いているのじゃないだろうか?
そして予想通り、しばらく道なりに真っ直ぐ歩いていた3人はスッと右側にある曲がり角へ入って行った。
「うん、やっぱり近道するのに曲がったな。見失わないように俺達も後を追うぞ」
「あいよ」「わかりましたわ」
俺達も見失わないように曲がった先へと駆け足で向かい。
「いたいた……」
「また距離を置いてついて行くんだな」
「そうなるな」
ここからは俺達とあの3人だけとなる。往来するような他人はいない。少しでも後ろを振り向かれてしまえばアウトだ。
「やけにあちこち曲がったりするな」
「凄い土地勘がありますわね」
野生で鍛え上げられたサビの直感がそう告げているようだ。ふむ。
「あ、あんな所に広場がありますわね」
「へぇ、意外だな」
区画を作った上で出来てしまった空白の場所なんだろう。誰の物でもない空き地と化した広場に、3人が俺達に背を向けたまま立ち止まってたむろしている。
「ご主人様。チャンスだと思うぞ」
「そうだな」
俺は彼女達に感情共有の力を使って戦闘準備の指示を送った。そして俺達は広場に出て横に陣取り、彼らに気づかれない様に接近を試みると、
「のこのこと得物がお宝をしょってついてきたぜ」
「――っ?」
中央にいる人物、男の学者が突然に野太い声を発して、そんな事を言い出した。そして次の瞬間サンデーが、
「左後ろに避けろご主人!」
「は――っ!?」
俺の不注意をフォローしてくれた。聞いた瞬間にすかさず、彼女の言ったとおりにバックステップを踏んで回避行動に転じると。
「チッ! 中々カンの鋭い女が1人いるようだな。いや、人間の女のフリをしたモンスターか、ははっ! これはいい商売道具になりそうだぜ」
俺に対する不意打ちに失敗して、男が舌打ちをして、サンデーを賞賛した。
あのまま不意打ちを仕掛けてきた相手に何もアクションを起こさなかったらやられていた……!!!!
奴の纏っているローブに大きな風穴が出来ていて、そこから白い硝煙が立ちこめていた。つまり、奴は背を向けながら俺に向かって銃を撃ってきたのだ……!!!!
さらに両端にいた残りの2人がバサッと身に纏っているローブを上に向かって放り投げるように脱ぎ捨て、
「ひょ、ひょ、ひょ。これは殺しがいと捕縛のしがいのある活きの良い得物だなぁ……」
「弟よ、間違ってもあの女達には傷をつけるなよ? あいつらは商品だ。依頼主から言われている事を忘れるなよ?」
「じゃあじゃあじゃあ! あの男は殺してもいいんだよなぁ!!!?」
「ああ、そうだな。あの男は死んでも構わん。むしろ目障りだ」
「くっ、くっ、くっ……。まあそう先走ろうとするなお前達」
俺を不意打ちしてきた男も後に続き、ローブを脱ぎ捨てて正面を向て余裕のある表情を浮かべて笑った。
ローブを脱ぎ捨てて現れたのは学者では無かった。
黒布に赤い刺繍のあるフードと、同じ色の軽鎧の格好をした3人の男達だ。
「くっ、くっ、くっ。まんまと引っかかったな!」
「お前達は何者なんだっ!?」
「レアハンターズとでも名乗っておこうか。かのモンスターテイマーで有名なそこの坊ちゃん」
「――っ!!!?」
「さあ、大人しくそこにいるモンスター達も頂かせてもらうぞ!!」
その直後。レアハンターズと名乗った3人組の男達の手には、肉厚で細長いハンターナイフと、消音器の付いた小型の拳銃がそれぞれ両手に握り締められていた。
彼らと対峙する事になった瞬間。俺の中にあった怒りのスイッチが入り。
「貴様がホワイエットを連れ去ったのかあああああああああああああああああ!!!!」
何もかもを忘れて激昂した。それに合わせて彼女達も感情共有の作用によって怒りを覚え、
『グガアアアアアアアアアアアアア!!!!』『グォオオオオオオオオオオオン!!!!』
自動的に半魔化した姿になって盛大に雄叫びを上げた。
「悪いが、ここであったのが運の尽きだ……。容赦はせんぞ……」
圧倒的な怒りのオーラを前にして、3人の男達の表情には焦りの感情が浮かんでいる。
「いけサンデー! お前の力を見せつけてやるんだ!!!!」
明日の更新は、公募用作品の執筆の関係でお休みとさせてもらいます。次回の更新は11月22日です。よろしくお願いします。
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