150話:【潜入】貴族街『ベイ・カジノ』その6
ここからどうすれば良いか。まずは街の景観を観察しつつ探索という感じに行動を移すことにした。大丈夫だろうかとレフィア先輩が得体の知れない不安を感じながら、裏路地の広い場所でそう俺達に話を振ってきたが。
「何が先輩の不安を掻き立てているのか分りませんが。ここには先輩を含めて5人います。個々の個性を活かして対処していきましょうよ」
「そうよレフィア。心配性なのはいつもの事だから分ってはいるけれど。ここまで来れたのだから、あとは思う存分に私達の力を使ってホワイエットちゃんを救おうよ」
「そうだぞレフィア。心配するくらいなら元気に居てくれた方がいいぜ」
「そうですわよ。戦士の勘がそう言っているのは私でも分る事ですわ。この街は……確かに何か嫌な臭いがしますわね……」
「ええ、そうね。いつも嗅いでいるボルカノの街の臭いとは少し、いえそれよりかけ離れた臭いが漂っているわね」
「おそらくそれが先輩の心を動かしているんですよきっと」
「ええ、そうだと思うわ。ごめんなさいね時間の無い時にこんな話をして」
「いいですよ。何かあれば話して解決すれば良いんですから。ちなみに心配事はもうありませんよね?」
と俺は彼女に聞くと。
「ええ、大丈夫よ。さっ、早くこの街の探索の続きをしましょう。成金趣味共の建物を鑑賞する趣味はないけれど。後輩の大切なホワイエットちゃんがここに居るとなれば話は別よ。気持ちを切り替えてやらせてもらうわ」
心配そうな表情から一転して、レフィア先輩の表情と態度に余裕が戻って自信に満ちあふれている。
「そうですよ先輩。今の先輩の方が頼れる感じがしてこっちも気分がよくなりますよ」
「その言い方だと今日まで頼りがいの無い先輩っていう風に聞こえてくるわね」
「あいや、そんなつもりはないですって!?」
「ふふ、冗談よ新人」
といいつつ俺達の前に先導しようと前に出て、レフィア先輩は路地裏から大通りに通じる細道に向かっていった。俺達もそれに続いて後についていく。
「ざっくり見てみた程度だけど。街全体の景観はさすが貴族街。どこもかしこも隅々みても1級品と表して間違いの無いものばかりが並んでいるわね」
俺達に背を向けながら前を歩くレフィア先輩がそう話し出す。
「じゃあ、中は醜悪な欲望の塊だったりするのかしら? うふふ」
リリィ先輩はその話を聞いてどこか愉快げに言葉を返し、含みの笑み浮かべてクスクスと声を上げる。なかなかの皮肉めいた言葉だと心の中で率直に思う自分。
「なーんかここ落ち着かねぇなーご主人。ここにいる奴ら全員の格好が変でなんかムズムズするな-」
「まぁ、俺達の身なりがここで済んでいる奴らより下だからな。目立っても仕方ないし、そもそもそいう意味ではお互い様なわけだな」
要は何もかもが相反しているわけだ。住んでいる場所から持っている者まで全て、互いに違う者を有しているからお互い様なんだ。結局の所。俺達は互いに優劣をつけないと生きては居られない生き物なんだということだ。俺は今の身なりがしっくりするから贅沢はしたいとは思わないな。
「そろそろ大通りにでるわ。さて、ここからはどう街中は歩くかよね」
「何かに扮しての方が妥当ですかね? この身なりの上から切れる何かがあれば良いのですけど」
「うーん、そうなるとロープを被ってみたりとしかないわね。でもアレは特定の職種しか着用が許されていないから無理そうかもよ?」
「その職種とは?」
「例えばそうね。学者が良い例よ。外着として彼らには必ず1着はローブが支給されているの。それも位ごとに細かく分けられているわけで――」
「――ようはリリィ先輩。学者に化けて歩けばいいのでは?」
もうほぼ正解に近い話だと思う。するとレフィア先輩はちょっと気難しいといった感じの表情を浮かべだして、
「それって結局ここでは入手はまず無理な話よ。都合良く学者。特に高級のクラスで無ければまず出来ない話ね」
じゃあ、その人達を探せばいいわけだ。ということで、
「分りました。ここからは二手に分かれましょう。目標はこの街にいる学者のローブを片っ端から拝借することです」
「目的の為なら窃盗も辞さないと豪語する後輩を前に私はどう反応すればいいのよまったく……」
「す、すみません」
「そう言うなら初めからドンと構えて言いなさいよ。これじゃあ微妙な空気で仕事に取りかからないといけないじゃないの」
なかなかの手厳しい評価を前にチクチクと俺のメンタルが突かれている。うん、大丈夫。今にレフィア先輩の言う評価は始まったばかりじゃ無いから我慢だ。
「じゃあ、私はそこのサンデーとサビを囲ってレフィア班を結成してもいいかしら?」
「どうだ2人とも?」
「ご主人と一緒に居る方がいい」「ご主人様と離れるのはいやですわ」
「だそうですのでリリィ先輩と一緒でお願いします」
人数振り分けの難しいところである。
「はーい、だって。じゃあ私達古参組で仲良く学者さん達のローブを良い感じに拝借していこうねレフィア」
「わ、わかったわ。なんか私。一瞬だけモンスターの事が嫌いになりそうになったわ……」
それはダメだと思う。
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