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143話:人材屋ロウニン商会 その5

 俺も道を間違えてしまっていたら、この人達と同じように絶望的な人生を歩んでいたのだろうか?


「早く……早く仕事したい……金が欲しい……借金返せない……」

「だっ、大丈夫だ! 僕は負け組なんかじゃない!! この仕事で一山当てて這い上がってやるんだ……!! そしてまたカジノ王に返り咲いてやる!!」

「あぁ……あーっ!! 神様ぁー!!」


 周囲の行き交う言葉に耳を傾けると、そう言った感じの話し声が聞こえてくる。どれも皆の目は虚でどこを見ている訳でもなく、先の見えない人生を前に悲観しているようだ。一部精神崩壊をした人間もいる所を見ると現実味に生々しさを感じさせられるな……。


「多分ここにいる人たちは。もとを辿れば皆んな良い人達だったんだろうな……きっと……」


 そんな人たちの未来を奪っているこの施設を俺は許さない事に決めた。わかるんだ。ここにいてもただ搾取されるだけされてズタボロになって棄てられるんだと。そして何よりも。


「貧困に陥った人達に。ビジネスチャンスを与えて将来に希望やチャンスを持ってもらい。掴んだ未来で幸せになってもらう為に人材屋の仕事があるのに。それを悪用して自分たちの私服を肥やす為だけに悪事を行うのはあってはいけないんだよ……!」


 多分これが悪しき資本主義の典型的な例なんだと思った。良いことにも悪いことにもなる。使う人それぞれで決まるんだな……。


「まぁ、考えても仕方ないか。今の俺にはやらない事があるし」


 ここにいて俺に何が出来るのかって思うなら、銃を持って戦うくらいしかない。手順をなくして事はうまくいかないとレフィア先輩からは教えられた身だし。


――それに俺は政治屋ではない。


 いちハンターとして、そしてネメシスの一員なんだ。いずれ力を持つようになれた時には必ずこの人達を救えるように努力しよう。


 それから少し時間が過ぎたあたりで列はようやく終わり、


「こんにちは。本日はお仕事のご依頼ですか? それとも……お仕事探しでしょうか……?」


 身なりで判断したんだろう。カウンターテーブル越しに席に座る、カッパーブラウンの長い髪を後ろに束ねた、清潔感のある青い制服を纏う受付の女性がそう俺に話をしてきた。なんで最後あたりで言葉を詰まらせるんだって。うん。


「仕事の依頼をしに来た。ゼセウスに会いたい」


 遠回しにせずにストレートに要件を伝えた。前置きの言葉はゼセウスを引き出す為の口実だ。ある程度のハードルの高さを探りたいという思惑もあった。んで、そう言葉を受けた女は、さっきまでのスマイルとは打って変わり、こちらを値踏みするような顔で目を細くして。


「事前にご予約はされておりましたか? 予約した際のお名前をお伺いさせていただきますでしょうか」

「悪いな。予約は入れてない。俺の名前はサトナカだ」

「サトナカ様。社主はただ今席を外しております。飛び入りでのご依頼につきましては、とう商会のルールで固く禁じておりまして。それでもご入用でしたら、改めて通書を通してご予約をいただいてお会いになられますようお願い申し上げます」


 と、門前払いが成立しそうになる手前で俺は、


「悪いなアルスから代理で頼まれてあんたに話してんだよ。2度は言わねぇぞ? あんたの明日の朝飯が残飯で済ましたくなければさっさと俺をゼセウスに会わせろ」


 声のトーンを落として女にそう恫喝まじりに話を返した。すると女は少し驚いた様子で身を少し後ろへと引き下がって、


「お、お待ち下さい。上の物に確認いい、いたします!」

「おぅ、具合よくたのむぞ」


 女はその言葉を聞いた後にそそくさとその場から引き下がっていった。それから暫くして。


「お待たせいたしましたサトナカ様。どうぞこちらへご案内しますのでついて来てください」


 再び女が現れて俺についてくるようにと伝えやって来た。その表情には畏怖の念が込められていた。それから俺はその女に連れがいると言って引き連れて、入り口で待ってくれている彼女達と合流して、


「ゼセウスに合わせてもらえるそうだ」


 と、皆んなに勝利の笑みを浮かべて伝えると。リリィ先輩が、


「ふふ、私の保険が役に立ったみたいね。私を褒めてね?」


 何か裏のある訳の分からない意味を含んだ言葉を返してきた。んで、その言葉を理解出来なかった自分は。


「ほ、保険? ど、どういう事で……す……?」


 と聞き返すと。彼女は含みのある恍惚とした表情で。


「カリト君の性格を考えると交渉は難しくなるんじゃないかなって思ってね。念のために保険をかけておいたの。カリト君の後ろに並んでいた怖そうなおじさんにちょーっと声の力をかけて。カリト君がゼセウスと繋がりのある大物だと思い込ませる為に。おじさんの頭の中にそう仕込んでおいて。ちょうどカリト君がお姉さんと話をすると同時に。背後で同じトーンで声真似をしてもらってぇー。そこの薄汚い、カリト君には相応しくないクソ女に間接的に声の力をかけさせてもらったの。どう? 私のパーフェクトな計画は?」


 え、それってつまり--んんっ!!!?




 明日も予定通り更新いたします。よろしくお願いします。


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