141話:人材屋ロウニン商会 その3
「ガァアアアアアアアアアアア!!」
「う、うぁああああああ!!!?」
最初にサンデーの様子をスコープ越しに伺うと、2人がかりで彼女に応戦していた内の1人が、彼女の跳躍からのストンプ攻撃の餌食となり、その隣で悲惨な展開を目の当りにさせられた相方の方が金切り声で悲鳴を上げ、その場で腰に構えたまま銃を発砲。
それに対してサンデーはその場で軽く宙を舞ってサマーソルトキックを男に繰り出した。
悲鳴を上げていた男の顎にサンデーの足が命中。天井へ向かって吹き飛んだ後にドシャッと地面に落下。男の顔は恐怖に染まったまま、口から泡を吹いて意識を無くして沈黙していた。
「あまり強くやり過ぎないでくれよ」
と心中で思っていると。
『ガウ!』
と頭の中でサンデーの鳴き声が聞こえてきた。ちょっとおっかなびっくりだったが、能力の何かが発動して彼女に通じたのだろう。以降はやり過ぎない程度に彼女は立ち回ってくれるようだ。実際にさっきまでの激しさは収まって、手加減をしながら敵と渡り合ってくれている感じだ。そしてサビの方はというと。
「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンン!!!!!!!!!!!!!」
「「「「「「ぎゃあばばばばばばばばばばばばばっ!?!?!??」」」」」」」
複数人を相手に体内で蓄積していた電気を使い、地面に鮮やかなサファイアの電気を走らせる放電行為で一網打尽に制圧していた。感電死はやめてよね……? と心の中で思うと。
『ガウガウ』
「え、素でやっているから無理がある」
なるほど。じゃあ、
「放電行為は無しに白兵戦で頼んだわ!!」
と改めて心の中で念じてみると。
『ガウ……ガウ……』
「ん? 定期的に放電しないと身体の調子が悪くなるだって?」
「多分あれよ。排泄行為と同じなんだと思う」
ようは生理現象だから我慢はできないわけか。じゃあ、そうだな……。
「じゃあ、周りの敵が死なない程度に放電してヨシ!」
もう、俺がどうにかできる訳でもない彼女の特性だから容認することにしよう。んで、結果的にサビからは。
「ガウガウ」
雷避けの道具が欲しいといってきた。なるほどアースがいるわけか。じゃあ、あとで代用品を探す事にしよう。
「このまま順調にいきそうね」
と、リリィ先輩の口からその言葉がこぼれたので思わず一抹のフラグを感じながら。
「できるだけ彼女達の負担が掛からないようにしましょう。敵は予想外の強敵を前に混乱しています。今のうちに急所を外しつつこちらからも狙撃で敵を倒していきましょう」
「うん、その方がいいよね。3分だっけ? それくらいしか彼女達は戦えないのでしょ?」
「そうですね。1対1だったらどうにでもなるのですが。人数が多いと素のままだと勝てませんね」
それにしてもだ。だったらなぜホワイエットは拉致されてしまったんだ……? 複数人が押さえにかかってきたとしか思えないぞ。
「疑問ばかり頭の中で思い浮かべてもいいわけないか」
「どうしたの?」
「いえ、こっちの考えごとなので」
「ふーん。あ、敵の残存勢力もかなり削り切れたわね」
そろそろ頃合いだろう。俺は再び心の中で彼女達にこちらに引き下がれと念じた。するとその指示を受けて、彼女達は息を合わせるかのようにピタッと戦うのを止めてその場で立ち止まり、虚空の中に消え去るように姿を消して俺達の元へ戻ってきて。
――ボシュゥゥ。
「はぁ、気持ちよかったー! 久しぶりに運動出来たから最高にハイって奴だった!」
「きょうびその言葉は聞かないな-」
「ふぅ、普段は絵を描く事ばかりしていたから。たまにはこういう戯れもよいものですわ」
「まだまだこれからだ。もっと思いっきり汗を掻いてストレス発散してくれよ」
白い煙と共に彼女達は元の姿に戻った。どちらも初めてながら善戦を繰り広げてくれて、しかも普段みせることのない笑顔の花を咲かせていた。彼女達にはこれくらいはスポーツ程度の遊びだったのかもしれないな。
「さすがだな」
「凄いわね……。これがモンスターとモンスターテイマーの力なのね……」
リリィ先輩は心の中で味方で良かったと思っているのだろう。間違いないな。んで、
「後は人間の俺達に任せろ。お前達はそこでくつろいで休め」
「はーい!」「承知いたしましたですわ」
半魔化の後には必ず休息を設けること。グリムからはそうアドバイスを受けていたからやっている。理由はまぁ、某光の赤いやつ的な意味合いがあるんだろうな。連続しての短い間隔での変身は不可なのだろう。彼女達を実験台にして試すわけにはいかないし。やりたくはないな。
――といった感じに計11のギャング組織を相手に渡り合い、最初は力の制御面においてアクシデントがあったものの。練度を重ねていき、不安だった要素は回数をこなしていく内に収まりをみせていった。このままいけば柔軟に戦えるだろうと結論を出して振り返っている。そして、
「これからもお前達に頼る形になるが、俺もできる限りのサポートをするわ」
力が無いというわけでもないけれど。自分の扱う武器や立ち回りを考えるとこの戦い方が合っている気がするなと思ったからだ。
「そろそろよカリト君」
俺の隣で歩くリリィ先輩がロウニン商会の所在地が記された地図を手に話し掛けてきた。情報は確かだが、そこに記されている商会で裏クエストのビジネスがおこなわれているらしい。実際にこの目で確かめないといけないな。
明日も予定通り更新いたします。よろしくお願いします。
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