138話:ロンダリング・ブレイク その8
「どうしてそれをお聞きになるのです?」
「決まってるだろ。俺が知りたいからお前に聞いているんだよ」
語気を強くしてアルスに問い詰めると。困惑といった顔をして俺に。
「それは危険を承知の上での質問でしょうか。旦那がそれでも行かれるのであればそれ相応の覚悟がいると思いますよ。なんせ裏クエストを取り仕切っているのはゼセウスの旦那の腹心が牛耳っているんですから。旦那の存在が知られてしまえば、そのお嬢さんもおそらく……」
「お嬢さんがなんだ? 俺の娘が無理矢理お前達に攫われて酷い目に遭わされているんだぞああ?」
「――! なんと……それは私としたことが……とんでもない事をしでかしてしまったようで……。この失態をどう詫びればよいのやら……」
「じゃあ、その失態を取り戻したいと思うなら私達に協力しなさいアルス。いい?」
「もちろんですとも奥方様。このアルスの命に代えてでも務めさせていただきます」
かなり協力的に接してくるアルスを側で見下ろしながら、俺は彼に押し当てていた銃口を離してそのままホルスターに収めた。そして。
「悪かったなアルス。俺の為に嘘偽り無く洗いざらい話をしてくれていたのにこんな仕打ちをして。リリィ先輩。この人を拘束から解放してさしあげましょう」
「いいの? もっと聞きたい事があるんじゃないの?」
「ええ、ですからこの人の拘束を解いても無害だと判断したのでお願いしているんです」
と真剣な面持ち顔をするリリィ先輩に言葉を返すと。彼女は。
「分ったわ。彼の言葉を聞いているかぎりこちらに敵意を感じられないし。カリト君がそうしたいなら、私もそうしたいと思うのと同じ事だし」
「あ、ありがとうございますリリィ先輩」
一心同体、自分と彼がする事はどれも同じでありたいというリリィ先輩の気持ちを知り、アルスを縛っていたロープを解くリリィ先輩に自分の気持ちを伝える。
「俺、リリィ先輩がそうしたいと思った時には必ず同じ事をしますから」
と、そのままそっくりのニュアンスで彼女に伝えた。するとリリィ先輩がそれを聞いて綻んだ笑みを浮かべ。
「じゃあ、この作戦が終わったら。私が君と結婚したいと思って話したら同じようにしてくれるのかなー?」
「へっ」
そ、それは……あっ、しまった……。言った言葉を取り消せない事に気づいた俺は息を飲んで、
「お、俺がリリィ先輩に見合う男になった時にでお願いしますね? はは……」
「ふふ、やっぱり君はそうやって先延ばしをして決断から逃げちゃうのね。確かに大事な事だものね。今後の人生を過ごす上で大事なイベントでもあるし。私なんかより他の女の子と結婚がしたいのかなー?」
「え、いいえそれはっ!? 絶対にあり得ませんよ!!」
「本当に? ほら、アルス。そこで座ってないでさっさと部屋から出て行って」「わ、わかりやした奥方様。あっしはもう家に帰らせて貰いますわ……では」
「せ、先輩以外に自分の中で素敵な女性は居ませんよ!」
「むー、そうやって私を弄ぶんだからー」
いや何もそういうつもりで言ったんじゃないんだけどな……はは。人前ではみせてくれないリリィ先輩の拗ねた表情が可愛いらしい。んで、
「とりあえず、この話はまた今度にでも。次の目的地にいきましょう」
「むぅ、ちょっと雑に話題をかえないでよもう。……そうね。連戦続きだったから疲れているでしょ?」
「いいえ、俺達はまだまだいけますよ」
「そう、じゃあ次はこの建物の何処かにある裏クエストを受けることのできる施設について書かれている資料を取ってきて。あとは……」
と思案するリリィ先輩に俺は。
「さっき帰ってしまったアルスに聞けばよかったのでは?」
「声の力を無駄に使いたくはないわ。喋るだけで疲れるしね? 力の無い私には何ができるか分るでしょ?」
「ええ、まぁ。そう言うのなら聞き入れます」
「うん。だからお願いしたいかなーって思うの。おっけー?」
「おっけーですリリィ先輩」
「ふふ、ちゃんと言った事を守る君は偉いわ。大好きよカリト君」
俺ってそんなに言った事を反故にするような男じゃなくね? とリリィ先輩に勘違いを受けながら。
「じゃあ、手当たり次第探してきますね。30分後には戻ってきます」
「うん、まってるね」
とリリィ先輩がニコニコと手を振る仕草をみせてきたので、俺も同じように手を上げて振り、そのまま部屋を出て該当資料の捜索をはじめた。
※お知らせ:『137話:ロンダリング・ブレイク その7』の加筆修正作業を行いました。お時間のあるときにでも読み返してください。主に全体の文章構成の変更と、誤字脱字の修正に内容の変更を行いました。
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