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131話:ロンダリング・ブレイク その1

 翌日の朝。いつもの様に俺とモンスター達で朝ご飯を迎えていた。ただ今日は俺達と一緒にリリィが食卓を囲んで同席してくれている。


「うふふ、これがカリト君の故郷の味なんだね。とてもあっさりしててお腹に優しいかも。このみそしるっていうスープ? 茶色くて変なスープかなって最初は思ったけど。面白い味がしてこれはこれでありだね。これもカリト君が作ったの?」


 味噌汁の具材は食用キノコと海藻だけだが、それでも気に入ってくれたようだ。リリィはおかわりと言ってお椀を渡してきてくれているあたり、まだまだ食べ足りなさを感じているようだ。それに答えるように手渡しで受け取って、そのまま鍋に控えている残りの味噌汁を、手にしているお椀に片手のお玉で注ぎ渡した。

 味噌の造り方は分らないけど。何故なのか、この異世界では広く流通している。とてもポピュラーな調味料として親しまれており、実際に下町の調味料屋の商品棚には、当たり前のように並べられており、その時みつけた際には驚いた物だ。その発見もあって、こうして食卓に並べる事が出来た。やっぱ良いよね日本食って。朝から重たい物を食わずに済むからな。


「ご主人。私もみそしるおかわりしたい!」

「あいよ」

「私もですわご主人様。私だけ仲間はずれは嫌ですの」

「さりげなく遠回しに昨日の事を突いてくるな。おらよ」

「ありがとう!」「ふん、だってその気にさせておいてあんな仕打ちをするんですから。感謝しますわ」


 それはどっちの意味で感謝しているんだよと、思わず味噌汁のお椀に口をつけているサビに突っ込みたくなってしまった。あれからちゃんと過ってあげたのになぁ……。誠意が足りなかったのかもしれないか。とりあえず今日はサビのご機嫌を直す為に連れて行こう。


「おう、ふたつの意味で受け取っておくわ。だから頼むよ。また絵を描いて欲しいんだ」

「嫌ですわ。芸術っていうのは頼まれてするものじゃないですの。私の気分で描きたいんですの」


 あちゃぁ……って昨日は頭を抱えてしまったが。今日もまた一段と手強いことになっているぞ。このままではマスターに渡せる分の絵が用意できない。するとリリィがつんつんと俺の肩を突いてフォローに入ってくれるようだ。


「えと、サビさんだったかな?」

「ええ、そうですわよ。昨日の夜からご主人様にベッタリな貴方はどなたでしたかしら?」


 1日も経っていないこともあってか、サビは彼女の名前を覚えきれていないようだ。するとリリィがニコッと首を傾げて。


「リリィ・ホステルって言うの。カリト君とは将来は夫婦になる約束をしているのよ。それで沢山子供を作って幸せな家庭をつくるのが私の夢だよ」

「まて、リリィ。いまなんて……?」

「え、あなた。忘れたの?」

「いや、まだ俺達夫婦関係まで発展してないんですけどねっ!? 昨日みたいにまた誤解を招くような事は慎んでもらえます!?」

「もぅ……照れちゃってぇ……えへへ」


 やめてサビの表情が険しくなってきているからっ!? 顔を赤くして勝手に恥ずかしがらないでくれます先輩!? と、自分の顔を使って彼女にアピールしたのだが。


「うふっ、この卵焼き美味しいわ。さすがカリト君だね。こんな美味しいカリト君の故郷のお料理が毎日食べられるなんて。私って幸せ者だわ……」

「あらぁっ!?」


 俺の顔なんてそっちのけで、リリィはひとり幸せそうに卵焼きを食べており。その場で思わずガクッと肩を落としてずっこけそうになって、慌ててぐっと堪えて理性を取り戻し、箸を持つ右手の指で目頭を抑える仕草をした。朝から気分が重たいと思いながら俺は。


「そ、そうですか……それは良かったです」

「うん! ねぇねぇカリト君。明日もまたここに来てもいい? あるいは! もうここで住み込んでもいいかしら!?」

「ダメです。関係者以外は立ち入り禁止にしていますので」


 ホワイエットの一件以来。衛兵さん達の勧めもあって、警備兵を無償で配置してもらった状態で立ちんぼをして貰っている。その事もあって出入りの制限を設けている最中さなかだ。リリィが単独で来ても俺の許可が無ければ入れない仕組みとなっている。


「えーっ、昨日はよくて明日はダメなの? もしかして意地悪して楽しんでいるのかな? かな?」

「いやいや、そういう魂胆で言っている訳じゃないですよ」

「じゃあ、明日も行くわね。どうせ私の力で警備兵なんてどうっとでもできるわけだし」

「あぁ……そうだった……」


 現状、リリィの声の力、または言葉の力に耐性をもつ人間は俺とネメシスに所属する先輩方だけだ。あまり細かく個々の耐性については知らないが。俺の場合は、『負の感情の言葉』や『誘惑の言葉』などに対して一定の耐性をもっており、どんなに囁かれても不思議な力で無効にする事が出来ることは確認できている。


「俺ならまだしも。そうだよなぁ……」

「そうだよー。なんで君が私の声の力を無効にする事が出来るのかは分らないけど。グリムさんが言うにはなんだったかなー」

「グリムが言うには俺のモンスターテイマーの力が関係しているんだとさ。あの時はホワイエットが居たから耐えることができただけの話しなわけであって。あっ、これ以上は言わないでおこう」

「もう遅いわよっと。じゃあ、いつでも朝ちゅん突撃あんあんできそうね、ふっふっふっ……」


 あーっ、明日からサンデーと一緒に寝ることにして身を守らなきゃ。まだ関係そこまで築けていないのに腰振ってパンパンしたくはないから。てかまだ自分未成年のつもりだし。うん、もうこの考えは止めておこう。余計に思春期まっただなかの俺には毒でしかないんだ……!


「そんときは容赦しませんから」

「いやん、もうカリト君たらぁ。えっち!」

「って、言いながら俺の側に寄りかからないでくれます!? 朝飯が食べずらいですからねっ!?」


 何この朝からギリギリラインで繰り広げる全力全開の下ネタトークのオンパレードは。俺はそう言いたいわけじゃなかったんだ。俺の寝込みを襲えばサンデーとか周囲に仕掛けてある罠が作動して返り討ちにするという意味合いで言ったわけであって。決してそういうエッチな意味を込めていった覚えはないんだけどなっ!?


「それにしても君が仲間にしているモンスター達って。どうして人間の姿になれるわけなのかしら?」

「俺も正直よく原理は分っていないんです。グリムに聞いてもggrksな感じで言われているし。調べようにも不明な事だらけで説明は出来そうにないんですよねぇ」


 あれは多分。知っているけど話すのが面倒くさかっただけだったのかもしれんな。自分の利益にならない質問は彼女。基本的に断ってくるし。


「じゃあ、つまり私なりの解釈で言わせてもらうと。カリト君が餌をあげることで。それを食べたモンスターは時間をかけて人間の姿になれるわけなんだね」

「まぁ、実際に起きている体験談を踏まえるとそうですね」

「じゃあ、もうそれでいいと思うよ。あまり難しく考えるとさ。いざという時。例えばモンスターをテイムするときに固執的なやり方でしかできなくなるかもしれない。そうなると別のやり方を見いだせずに勿体ない事になるかもしれないわ」


 さっきまでの色っぽい話とは打って変わって、今度は知的な話を広げていくリリィに対し。


「なるほど。リリィは俺の為に一生懸命に理解してくれようとしているのか。なんだかありがとうな」

「ふふ、それは言葉ではなくて身体で示してくれると嬉しいかなぁ……って。思っていたりして!?」

「ははっ、まぁそれは今じゃないかな。事件を解決に導くのに貢献してくれれば話は別だけど」

「うーん、そう言われると頼りない人っていう感じに聞こえちゃうなーって思ったぞっと。まるで私がやる気の無い人って思われているのかなーって。でもカリト君がその気なのは分ったわ。うふふっ」

「あのーご主人様?」

「ん、あぁ。話の腰が折れてしまったな悪ぃ」

「朝からつがいで仲良くしないで欲しいですの。頼み事はそれだけでありますの?」


 ということは多少なりとサビは受けてくれる余地はあるわけか。するとリリィが。


「ごめんなさいねサビさん。ついカリト君と話をするとこうなっちゃうから。それでね。カリト君はサビさんの為にと思って頑張ろうとしているの」

「……嘘ですわ。昨日は探すのを途中で諦めたじゃないですか」

「そうなの?」

「……あぁ、サビが教えてくれた夢の手がかりが途中で途切れてしまってな。それ以降の足取りがつかめなくなってしまったんだ」

「それは仕方が無いわよカリト君。サビちゃんは何も悪くないわ。その話し方だとこの子のせいに聞こえるわね。だめよ。でも、それを挽回するために。私に協力要請してくれたわけなのよね?」

「……あぁ、そうだ。正直いまの自分に対して限界を感じてしまっているんだ。だからこうして色々な人を頼ってホワイエットを探している。本当ならモンスターテイマーの力でホワイエットを探せるかもしれない……って、あぁっ!?」

「どうしたの急にビックリしちゃって!?」

「どうしたのです!?」

「あうっ!? なんだ急にご主人っ! 箸に持っていたソーセージを落としそうだったぞ!」

「ごっ、ごめん! 二人とも。サンデー。お前はちょっとは会話に参加しろ」

「なんでよぉっ!? なんで私だけそんな扱いしてくるわけなのかなぁっ!? 酷いよぉ!!」

「サンデーちゃん。静かにね?」

「うぅ……わかった……」

「あぁ、そのリリィ。無理に力を使わなくてもよかったんだぞ? モンスターにはあまり効かないからさ。サンデーは別だけど」


 それは兎も角だっ! 俺はとても大事な事を思いついてしまったんだ。要するに。


「グリムに離ればなれになってしまったテイムモンスターを探し出す方法を聞けばいいんだよ! それを踏まえて俺の新しい能力の一部として取り込めれば良いんだ! なんで今まで気づけなかったんだ!?」


 自問自答で答えを導き出せたのはいいが。少し問題があった。それは。


「グリム。あいつ今どこで冒険しているんだよ……」


 ボルカノに彼女がいないことだ。趣味である放浪旅の真っ最中とは定期的に届く手紙で把握している。いつ帰ってくるのかは分らないんだよな。せっかく気づけたのにいきなり詰みの状態ってヤバいな……。

お知らせ:『13話:ハンターになるためには』URL:https://ncode.syosetu.com/n6067fq/14/ 

主に全体の文章内容の変更と加筆、誤字脱字の修正をおこないました。


明日も予定通り更新いたします。よろしくお願いします。


 この作品が少しでも『面白い』また『続きが気になる』と思って頂けましたら、是非とも広告下にある『☆☆☆☆』の所を押して頂き高評価をお願いします! ブックマーク登録もお忘れ無くお願いします。レビューや感想もお待ちしております。今後の作品作りの参考にさせて頂きます。

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