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116話:対峙と迷い その2

 昨日上げた115話なのですが。今日改め読み返して全体的におかしな文章構成になっている事に気づき内容を改稿いたしました。流れは変わりませんが文章の内容が違っております。読み返していただけるとありがたいです。

 それから10分くらい気が落ち着くまでイリエには待って貰った。今思えば感情的になりすぎたと反省している。でも、モンスターの事になると熱くなるのはどうにもならなさそうだ。


「なるほどね。あんたの上司が俺の殺害命令を出したわけか」

「……ああ」


 イリエには前もって口外するなと約束を取りつけることはできた。信用はまだ出来ないヤツだが。探偵という肩書きに掛けて誓いを守ってやるという熱血漢の一点張りに背中を押された形で話をのんだ。


「すまんなさっきは。実をいうと俺が手にした情報はあれで全部じゃないんだ」

「えっ」

「試させて貰った。お前が俺の中で信用できるヤツなのかと確かめたかったんだ」

「つまり」

「つまりもなんも。最初出会った時からはなから信用できないやつだと思っていたんだよ。嘘はつく。黙って銃を向けるヤツなんかにまともに情報提供なんてできないだろうが」

「うぅ……」


 否定できない自分が悔しい……。すると。


「どうやら隠し事はまだあるみたいだが。俺の感知する様な事でも無いな。あんたのプライバシーにこれ以上首を突っ込む真似はしない。約束する。あんたの個人情報は墓場まで持っていく。なんだったら誓約書をここで締結してもいいぜ?」

「いやそこまでは大げさな……」

「探偵という業界は情報が商材だ。口では形に残せない。故に信用が商材になる。おやっさんの教え通りに俺は勧めたいんだ」

「じゃあ、書きますよ」

「うん。そうしようか」


 といった感じに誓約書を締結する間柄まで発展した。そして。


「よしじゃあ前金を俺にくれ。ざっと500ダラーだ。半値になるな」

「残りの半分はこれから話す」

「わかった」

「毎度ありだ」


 そう言ってイリエは机の上にあった封筒の中から500ダラーを引き抜く。


「うん。これでマスターからつけられていた分かえせそうだ」


 マスターって誰だよ。


「そうだ。今日はいい出会いに乾杯しないか? ほら小麦酒はどうだ? マスターが最近バーに起き始めた西洋諸国で流行っているウィスキーっていう酒らしいぜ」

「ウィスキー……」


 あのボトルの中に入った茶色のアルコール飲料だよな? 度数は……いくつだっけ……?


「いい値段でしか取引されないからな。中瓶で200ダラーはするんだよ。ほら、一緒に飲もうぜ」

「はぁ……どうも」


 なんともさっきまでの雰囲気とは違った気さくさに戸惑いを隠せない。でも受けた限りはご相伴にあずかろうか。手で受け取ったショットグラスを片手にクイッと口に流し込んで飲込むと、喉からヒヤッとした感触を唐突に感じて喉がむせてしまい。


「ゴホッ!? ゲホッ!?――なんだこの感触……!?」


 まるで消毒液をまんま飲込んだような感触だった。するとイリエが俺に反応して笑い声を上げ。


「ははははっ、そうかそうか初めてだったか。どうりで飲み方が初心者まるだしだったわけだ。ほら2杯目だ」


 瓶を突き出してきたので。


「いえ、結構です。やっぱ酒は麦酒に限ります」

「あんなのと一緒にするなとは言いたいところだが。まぁ、俺も好きだったし」


 なんだよ。ビールの何処がわるいっていうんだよとキレちまいそうだ。


「それにお酒をバカにするのはよくねぇっておやっさんも俺によく言ってたしな」

「そのおやっさんってだれなんです?」

「単に言えば俺の育ての親でありこの仕事の師匠だ」

「師匠……」

「俺は師匠。おやっさんの受け答えを真似して探偵をやっているんだ。まぁ、何も俺の事をしらないお前に言っても分らないからそれだけだ。ほらグラスわたせ」

「はい」


 イリエに言われてグラスを差し出し、そのまま彼を見続ける。


「とりあえず。話の後半だな。人身売買ロンダリングのからくりは大体わかったよな。じゃあ、これを考えたヤツは誰だっていう話なんだけどよ。俺が推測するに。どっかの頭の良い奴が考えたに違いないと思うんだ。それも参謀級の知性をもつ人間が裏で手を引いて戦略的に準備をしていたと思うんだ。ホワイエットちゃんは最初から狙われていたんだよ。そのタイミングをそいつは陣頭指揮をとりながら見計らっていたと思うんだ」


 頭の良い人間が今回の事件の首謀者……? 根拠はどこに?


「それはなぜそう分るんです?」

「うん。それは色々と整理していかないといけない情報材料だ。1直線に話しても方よりが生じると思う。豊富な情報を纏めてからの方が今のあんたに対する疑問が晴れると思うんだ」

「つまり今はまだ断定できないと?」


 それって遠回しすぎなんじゃ?


「端から見ればそうなるだろうが。あるにはあるがパズルのピースをはめる時間がないと言うべきだろうな」

「つまり証拠はあるが整理に時間を要しているということか」

「おう。とりあえず差し障りだけ言わせてもらうと。どっかの強欲な人間が裏社会の組織とつながりがあって。そいつらのどちらかがホワイエットちゃんの存在を知ったのかな。興味本位で調べて欲しくなったんだろう。まさに所有欲からくる事件だと思ってもいいかもしれん」

「つまりそいつらの物欲の為にホワイエットは攫われたというのかよ」

「怒るな。またミスを犯すぞ」

「くっ……!」


 冷静になれなんて無理だ。俺はホワイエットが無事である事を早く知りたいんだ……!


「とりあえず。今の問題はそこじゃないとだけは言わせてもらいたい」

「他に何があるっていうんだよ!」

「お前。上司の事を忘れてないか?」

「あ…………」


 頭に血が上って完全にそのことが抜け落ちていた……。そうだ……。俺は殺すことに失敗したんだ……。


「ふん。そのままだと確実にお前死ぬ運命にあるぞ」

「…………」


 そういえば思い出した。グリムが言ってたな。モンスターテイマーは早死にする運命にあるって。少し分るかな……。


「ごめん。モンスターの事になると頭がカッとなって我を忘れてしまうんだ」

「モンスターテイマーについては伝承を漁ってみたんだが。なるほどな。内容は違えど共通する事柄はモンスターの事になると我を忘れて行動に移しやすくなる傾向があるみたいだな。お前の場合は身近にいるモンスターが危険な目にあうとそうなるのかな?」

「わかんねぇよ。俺でもこの力はまだ謎だらけで把握できていないし。お前に話せるようなことなんてあんまりねえよ」

「モンスターを使役する力。そしてモンスターと共に戦う存在。そしてこの街を作った伝説の男もまたモンスターテイマーの力を持っていた。なんだろうな。共通点を感じさせる事柄に俺は直面しているみたいだな」

「…………」

「それに伝承だとその力は1世代1人のみ。つまり同世代に同じ力をもつ者はおらず。その力を所有できるのは1人のみと書いてたな。情報ソースがあまり少なかったが軽く確証は得られそうだ」

「それが何か関係でもあるというのです?」

「あるさ。俺の頭の中にある推理の中ではあんたの力は1つの鍵となっているからな」

「鍵……」

「ああ、解決の扉を開くための鍵の1つだ。穴はいくつもある。それを開くためにはどれに差し込めば正解なのか。それを導くためにはお前の事をしらないといけないんだ」

「……つまり」

「まずはお前の目の前にある障害を乗り越えるところから始めないとな」

「レフィア先輩にどうしろと」

「簡単な話だ。きれい事抜きで面と向き合って話せ。お互いに思っている事を伝えないとこのままだとお前は死ぬんだろ? だったらそれを回避するための最善な策といえば話す事以外にはないと思うぜ? それとも暴力で言い聞かせるのか?」

「いや無理ですよ。相手が悪すぎますって」


 人狩り専門のハンターと悪人から恐れられている拳銃使いの先輩に力で勝負だぞ? そんなの前に立っているだけで勇者だわ。強いの範疇を超えた超人なんだぞ? グロンギー相手に拳銃で戦うのと同じ理論だって。


「だったらお前に残された手段は言葉と後は紙とペンだ」


 その言葉を聞いて少し迷っている気持ちが柔らかくなるのを感じた。話そう。レフィア先輩に俺の思っている事を。納得させてやるしかないな……! 

 レフィア先輩を納得させる。どうなるかは分らない。だけどそれが俺の残された最善で、最終的な結論だと思えてくる。


「イリエ。いやイリエさん」

「呼び捨てでいい」

「イリエ。あんたのおかげだ。俺は間違っていた。俺は。俺の正義を貫けば良いんだよな。だったらそれを伝えて分らせれば良いんだな」

「どういう経緯でそう話しているかはよく分らないが。伝えて分らせることは大事だぞ。頑張れよ」


 イリエの後押しに頭を下げ、そのままレフィア先輩のいると思う場所に向かっていった。


◇幕間◇


――サトナカ カリトが去った後の探偵事務所内にて。


「……これでいいんだよな?」

「…………」

「とりあえず。あんたの依頼はすませた。報酬は明日にでもいいからたのむぜ」

「ふふっ、そうね」

「まさかあんな青いヤツがあんた所の組織に来たとはな。生きてて驚きの連続っていうもんだ」

「昔のよしみでお願いしたのよ。やれることはやったのかな?」

「ああ、まだこれからだけどな」

「追加の報酬はないからねー。じゃあ私は元の居場所にもどるぞっと」

「なああんた。本当にあいつをあんたの計画に組み入れるつもりなのか?」

「どういうこと?」

「危険だあの男は」

「へぇ、だから何? 私はそのリスクも把握した上で取り入れたいと思っているんだけど?」

「なるほどね。じゃあこれ以上は俺の領分じゃないな」

「助かるわイリエ。あなたの諜報技術はまだまだ使えそうね」

「できればそっち方面に肩入れはあまりしたくないな。元だが。今はおやっさんの残してくれたこの場所を守りたいんだ」

「じゃあ、そう続けていたいなら尚更ね。じゃあ失礼するね」

明日も更新いたします。個人的にサトナカ君がダークヒーローとして成長していく姿を見ることが毎日の執筆の楽しみです(笑)

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