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113話:結果と嘘の代償

こそっと昨日の更新分の加筆修正作業をしました。

 

 レフィア先輩の圧に押され、昨日からずっと俺は頭が重くなるほどに思い悩まされていた。これから人を殺さなければならない。そんな気持ちがグルグルと無限に考える頭の中で回り続けて、昨日から寝ずに朝を迎えた後に、今日の昼。ここで俺は人殺しの道具となる銃を買い求めにやってきた。知り合いの店でまさかそれを買うことになるだなんて、昨日までの自分なら思いもしなかった話だったな……。

 でも現にこうして店の前に立ってドアノブに手をかけている感触があるわけだし、夢じゃないことは確かであり、現実で目の前に起きている事実なのは間違いない。


「らっしゃい。おや久々に顔を出したかと思えば随分とやつれた顔しているじゃないの? どうしたんだ? 酒の飲み過ぎで二日酔いか?」


 銃を買う店といえばここしか行きつけがない。かといって他にあてもないし。銃をこよなく愛する職人のカミルさんになんて説明すればいいんだよ……。本当……。人を殺す銃を用意して欲しいって言えないって……。

 いつもの様にというより、最近になって俺の事をフレンドリーに接してくれているカミルさんを見てふっと思い。


「その……昨日ちょっと大事な事でミスを犯して職場の上司にこっぴどく言われたんです……」

「どんなことだい? 飯食った後の良い気分な感じでこっちはさぁ仕事を始めよって所で。昼間っからそんな世界の終わりみたいな顔されて店にいられては困るからなぁ。話せるだけ話してみろよ。そしたらスッとするぜ?」


 俺の事情を知らないカミルさんはきっとハンターの仕事かバイトで失敗したと思っているんだろう。でもそうじゃないんだ。でも昨日の事があってから彼女に全部打ち明けられる訳もなく。


「お店の大事な秘密を他の人に喋ってしまったんです」


 と、嘘をついてしまった。分ってるさ俺……。今の俺なんかにできっこない。無理なんだ……。その話を聞いてカミルさんが。


「それは不味い事をしたな。でもそうやって自覚しているなら良い方だぜ? 後で修正かけられるからな。そんな事も分らずにほったらかしにして現実逃避なんかして能天気にホラふく奴らよりはいいさ。ほらお茶でも飲むか? いつも飲んでいる粗茶だけど」


 カミルさんのいるカウンターに近付き、差し出されたカップに注がれたお茶を受け取って口につける。ちょっとしょっぱいな。まるで涙の味がする。昨日の自分が流したものと似たような感じがするな。


「どうした? 泣きたいのか? 悪いがここで泣くなら好きな女のところで沢山泣くことを勧めるぜ? なんだったら今すぐにでも用事済ませる前にミステルの所にいって話を聞いてもらえよ」


 俺の好きな人……。思わず頭の中にリリィ先輩の事が思い浮かびあがる。あぁ……俺、もうリリィ先輩。いやリリィの事が好きになっているんだ……。そんな彼女の居場所を俺は奪おうとしているんだ。その落とし前をつけるために俺はカミルさんに嘘ついて銃を買う事をしているんだ。きれい事なんだろきっと。自分の理想とする正義は…………。俺が考えている暗部での仕事のやり方は違うだ……きっとそう……。


「すみませんちょっとまだ引きずっていて。その。今日は既製品の拳銃を買いたいと思ってて来たんです。できたら安価で確実に作動するヤツがいいです」

「そういえば風の噂で聞いたけど。あんたの愛銃がぶっ壊れたんだって? 大丈夫かよ。ハンターの命と言える銃が壊れたって一大事だって言うのに拳銃って。鞍替えでもするのか? 拳銃で狩猟するとなると相当な鍛錬と場数を踏まないといけなくなるぜ? 慣れた銃を扱って仕事したほうがいいと思うが」


 職人の情報網は早いな……。もう俺の銃が壊れた話がここまで伝わっていたんだ。風の噂っていうのは引っかかるけど。


「修理が出来たら良いんですけど。どのみち未完成ですが。セイバーが控えているわけですし。火力不足を補いたい時にコンパクトで持ち運びのいいモノってなるとそれが良いかなって思ったんです」

「あくまでサイド武器でって言うわけか。なるほどなるほど」

「…………」


 俺の事情を知らずに良き良きと思って頷いてくれている。そんなカミルさんの優しい表情に嘘で泥を塗っていく。こんなこと本当はしたくはないよ……。


「おうまた世界の終わりみたいな顔してるぜ。次はさすがに俺でも客にそんなヤツがいたら怒るからな? 店の空気が悪くなって金が入ってこなくなってしまうだろ」

「あぁ……はい」


 あまり長居はしたくないかな。多分カミルさんも同じ事を思っているに違いない。ならさっさと決めるものを決めていかないと。


「うむ。じゃあざっと適当に見繕ってやるから少しまってろ。好みに合いそうなのと店で売り込みたいやつを幾つか持ってくるからな。値段は気にするな」

「いや、さっき安いのっていいましたよね!?」

「ふっ、ちょっとはそう言った顔はだせるじゃないか」

「へっ……」


 してやられた感がある。イタズラな笑みを浮かべて流し目にその場から離れていくカミルさんの背中を見ながら思わず。


「あぁ、もう俺って情けないぜ……!」


 カウンターに肘をつき、少しばかりの憤りの感情がこみ上げてくるのと同時に頭を抱える。

 少し気持ちのバランスが変わったのを身体で感じる。あぁ、俺ってこんな時になるとこうなるんだ。今までこんな経験をしたことがなかったから分らなかったな。自分自身の見えていなかった、隠れていた性格があっただなんて。


「今はこの気持ちで自分を騙すしかないのか……」


 嘘の代償によるしわ寄せってこんなモノなのか?

 

明日も予定通り更新いたします。今日は約5分前の前倒しでの更新です。本日は約1200人の読者の方に読んで頂けました。嬉しいです。よく折れずにここまで頑張ったね自分って褒めたいです。これからも毎日投稿しつづけます。

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