112話:ホワイエットの捜索 その4
定時連絡を終え、俺はレフィア先輩とふたりきりになり、厩舎の裏で話をする事になった。内容は……俺の単独行動についてだと思う……。みんなの前で報告した時にみせたレフィア先輩の表情が普通じゃなかったから。
まるでナイフを片手にいつ俺を殺そうかと思っているかのような、そんな態度が彼女の頭の先からつま先まで見え隠れしていたんだ……。
「とりあえずアルシェさんにも私からは話しておくわ。その時は緊急呼集が掛かると思って備えておいて頂戴ね? くれぐれも先走って自分だけで何かをしようと思わないこと」
先を見据えれられて出る杭を打たれてしまった。くそ……。
「あのレフィア先輩。さっき話した探偵の事で怒っていらっしゃるのですか?」
思い当たる節はそれくらいしかない。他に何があるのだというのか。
「貴方は下手な事をしたわね。探偵を雇うのは大間違いだったのよ。ネメシスの情報を掴まされたらどうなると思っているわけ? 私達は表に出ても良い組織だったのかな?」
「……いえ、俺達は日の目を浴びることのない裏の社会で暗躍する暗部組織です」
「じゃあ、言葉で分っているなら頭なり身体なりで覚えなさい。もう1ヶ月が経とうとしているのよ。守秘義務の大切さを学んでいなかったのかしら? また私の講義をいちからやり直したいからわざそうやったの? そうだったら新人の君でも私は容赦なくブチ転がすってもう決めているから」
「…………」
言い返せずにいて心がモヤモヤとしている。違うんだ先輩。俺はそんなつもりで組織を売るような行動を取ったわけじゃないんだ……! でも彼女の言葉と態度がそれを伝える事を阻んでいて、どう言っても通じる訳がなさそうだ。日を改めるしかないのか? それだと余計に後付けの言い訳と言われるのじゃないか?
「何黙っているの? 黙っていても私は何も言わないわよ?」
「違うんです」
「ほう。それで?」
レフィア先輩の表情が冷たく刺々しくなっていき心が痛くなる。完全に俺は……敵として見られているのか……。そうじゃないと思いたいな。
「……今は言葉で上手く纏められないんですけど。正直。自分の落度と力不足でした……すみませんレフィア先輩」
俺は直ぐに平謝りした。今の俺の頭の中で思い浮かんだ誠意はこれだった。
「謝ってどうなるわけ? 謝ったらネメシスの存在が第三者から明るみにならないと? あなたリリィの事をどう思っているわけ? 彼女はもうここでしか生きられない事を知らなかったわけ? あなた間接的にリリィを危険な目に遭わせようとしているのよ。現在進行形でね」
「リリィ先輩……」
もうどうすれば良いんだ……。勝手に涙が出てくるじゃないか……。最悪だちくしょう……。
「泣くな。男なら自分のやったことに対する落とし前をつけなさい」
「落とし前はどうすれば……」
「分らないの? その探偵をどうにかしなさい。さもないと私がお前とそのイリエという探偵を殺しに行くわ。手加減はしない。本気で私は組織を守ることに徹するつもりだから」
レフィア先輩の目がクワッとなり、得物を見つめて威嚇する豹のような表情になった。心臓がバクバクと激しく鼓動をならし、俺に危険を知らせている。呼吸も少ししづらくなってきている。
「とりあえず。今日の件は私だけで留めてあげる。ただし、あんたのやるべき事をしなかったらその時は分っているわよね?」
「…………はい。わかりました……」
俺はイリエ探偵の始末をレフィア先輩に命じられることになってしまった。人を殺せないって分っているのに……。何を思って俺にそんな命令をしてきたのか。今は、自分のやるべき事をしなければ生きられない事だけは分った。そして先輩に自分の命を握られてしまった事も理解した。だから俺は自分の失態を自分で処理しないといけないんだ……。自分の手を血で汚してでも組織の為に……。
「銃を用意しなきゃ……はは……」
次回の更新は9月26日で予定通り更新いたします。今日は前倒しで更新させていただきました。上司のパワハラに屈するカリト君。負けるな! 彼にエールをよろしくお願いします。
ご報告。明日ほぼ確定で総合閲覧数が60,000PVに到達します。めちゃくちゃ嬉しいです。やりがいを感じます。今後も"狩猟生活"をよろしくお願いします。目指すとこまで目指してみようと思います。できたら……100万PVは行きたいな……。5年はかかりそうな気がするけどね。
【追記】後書き書いた後に閲覧数確認したら既に60,000PV達成しておりました。ありがとうございます!




