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109話:ホワイエットの捜索 その1

 ホワイエットが人さらいに狙われるというのはあくまで最悪のケースだ。本当にそれが事前に分っていたとすればレフィア先輩が何かしらの情報を既に持っていた事になるしな。あくまで彼女なりの話だと思っておこう。


「そうであってほしいな……」

「ご主人?」

「なんでもないサンデー。人さらいの事が気になって考えごとをしていただけだ」


 何でだろう。妙にその事が頭の中から離れない。訳が分らねぇよ……。よっぽど俺の中でインパクトのある話だったの分るけどよ……。無意識に考えてしまうくらいになるだなんて自分でもあり得ないと思えてくるぞ。


「願うとかいうとおかしな事だと思うけど。ご主人。今は目の前の出来ることに集中しようよ。気持ちが先に私より進まれても困るよ」

「……すまない本当に。バカだな……自分ってさ……。こういう時に側に頼れる奴がいるのに何1人で考えごとしているんだろうな」

「それもそうだけどご主人。今はこの場所をしっかり探そう」

「あぁ、そうだな」


 この場所は一度ホワイエットと来たことがある道だ。見覚えのない道には本能的に避けて通っている筈だと思ったからだ。ちなみにこのほかの場所にはレフィア先輩が手当たり次第に変わって捜索をしてくれている。


「とりあえず定時連絡に間に合わせないとな」


 あと1時間で定時連絡の場所に落ち合わないといけない。場所はモンスター牧場の出入り口前だ。それまでには一定の成果を出さないとな。


「レフィア先輩の捜索技術に頼るしかないと言いたいけど。俺に落度のある事件だ。手がかりが少しでも見つかるように努力しよう」

「うん、頑張ろうなご主人!」

「よしじゃあ最初は聞き込み調査からしようぜ」

「それはどういうモノだ?」

「ようはこの絵を見せてこの子を知りませんか? といった感じに聞くんだ。それで知らないと答えられたらそれでありがとうでいい。知っているとか見たことあるかもと答えてきたりしたらしっかり聞いて覚えるんだ。いいな?」

「おう! 任せろ!」

「よし手分けして探すぞ。集合場所はここでいいか? 何か目印になる場所とかでもいいぞ?」

「私まで迷子になりたくないからここでいいよ」

「うん、それってつまり土地勘のない人の言う言葉だからな?」


 冷静に話をしてはいるけれど。サンデーまで迷子になられたらもう俺はこの世界で生きていけない自信があるんだけどなっ!? 念を押して言っておこう。


「間違っても道に迷ってそうと思ったら引き返すんだ。いいな……?」

「うん……。大丈夫だから」


 お互いに神妙な面持ちでやりとりをして、そのまま別々の道を通って調査を始めた。


「すみません。すこしお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「はい?」


 最初に声をかけたのはロングローブ姿の黒髪の女性だ。いま居る商店街の道を淡々と歩いていたところを声かけてみた。


「この絵の女の子を今探していて。何処かで見かけたりした事はありますか?」

「なに? 知らないけれど。新手のナンパなの?」

「ご存じなければいいです。失礼しました」

「ちょっと良い感じの男かなって思っていたけど残念ね。バイバイ」


 えっ……!? そんな……嘘だろ……? こんな俺みたいな奴がいい男だって……? 新手の詐欺か新興宗教の勧誘かよ。騙されないぞうん。このまま距離を置こう。なんかチラチラと去り際にこっち見てきているし。


「すみません」

「おうなんだ?」


 俺はさっきと同じ流れで今度はトーガ姿の男性に問い掛けてみた。すると。


「ぁあ……なんだろう。こうマジマジとみているとな……」

「……はい」


 なんだこの独特のテンポは? 


「この子。あんたの知り合いか?」

「その保護者です」

「そっか。迷子になったのかい?」

「……はい。そうなんです……」

「それは大変だな。直ぐにでも見つかるといいな。悪いがこの絵が良いなと思っただけだ。よかったらそれ。買い取らせてくれないか?」

「こっ、これは売り物じゃないです! さようなら!」

「あちょっと待てよ……!」


 男性の制止を振り切ってそのまま商店街を立ち去ることにした。あのままだとまた出会って同じ押し問答が繰り返されるだけだ。


「刑事ドラマでみただけの知識で頑張ってみたけど……。こんなのを毎日リアルのおまわりさんはやっていただなんて……」


 やっぱすげぇわ。素人の俺じゃあ全く手の出しようがない。


「でも諦めたくはないんだ……」


 足で稼ぐって名言があるんだ。この身が傷ついてでもホワイエットを探してやらないと……! 気を取り直し俺は再び商店街とは違う場所に赴いて聞き込み調査を開始する事にした。

 それから30分くらいが経過した辺りで。


「じゃあさ兄ちゃん。探偵を雇えばいいんじゃない? そうすれば見つかるかもしれないよ?」


 麺屋のおばちゃんがふとおもむろにそんな話を持ちかけてきた。


「というと?」

「あたしも探偵を雇って旦那の浮気調査をしてもらった事があるのよ」

「あーっなるほど。それで」

「ええ、そうよ。まぁ、おかげさまで白だった訳だし。あたしもあの人を信用していなかったのが悪かった訳だし――」

「へぇ……」


 叔母ちゃんの身の上話を聞かされながら相槌をうつ自分。


「すみません他を当りますので失礼しますね」

「あいよ。よかったら時間のあるときにでも店によってけな。ちょっとくらいサービスつけてやるよ」

「恩に切ります」


 ちょっとお得な気分になれた気がする。明日にでも顔だそうかな。


「それにしても探偵を雇うか……」


 今の自分にそんな人を雇える財力があるか心配だ……。でも、


「頼れるモノがあるなら頼るしかないよな……」


 悩んでも仕方が無いと思い。将来の投資と思って行ってみることにした。

明日も予定通り更新いたします。よろしくお願いします。

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