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100話:エピローグ『負の遺産と新たな日常』


 廃墟都市での出来事は公には報じられることはなかった。王国側としてのメンツというものがあるらしい。

 あれから俺とグリムは帰路の途中で手紙を通じてアルシェさんに呼び出しをくらい。ボルカノに戻った早々にギルドの本部に訪れ、会議室の中で会話をしていた。


「いやーこいつとは旧知の仲ってやつでねー。まさか君と出会うとはおどろきだったよー」

「白地らしいのアルシェよ。わしがあそこにおるという情報を掴んだのじゃろ? だからこうしてわしをここまで連れてこさせたんじゃろうが……」

「うーん偶然なんじゃないかなーあははっ」


 しらばっくれるかのような笑い声でこの場の雰囲気を吹っ飛ばしていくアルシェさん。豪胆だな。


「てか、お二方はどのようなご関係なのです……?」

「話せば長くなる」

「そうそう。長くなるよハンター・サトナカ。それでも良いかな?」

「いや手短にお願いしたいですね……。この後ちょっと用事があるので」

「ふむふむさては女の子との約束でもあるのかなっ!? リリィちゃんだったりしてっ!?」

「ぶほっ!?」

「何をいきなりわしの近くで節操のない事をしだすのじゃ」

「すっ、すまんつい反射的に……」

「なるほどなるほど。その感じだと恋人関係なかんじ! だったりしてっ!?」

「いや、まだデートとかしたことないからアレですよ。これからにはなると思います」

「お姉さん。ハンター・サトナカくんの恋路。影から応援してるからねっ!」

「あ、ありがとうござます」

「話の腰が折れておるから軌道修正じゃ。他人の色恋沙汰などわしには興味の無い話じゃよ」

「とかいいつつ昔はご主人様にぞっこんだったもんねー」

「やかましいわい! アルシェもそうじゃろうが」


 あっ、これまた話が脱線する流れだ。案の定アルシェさん。長時間を費やして自分の敬愛するギルド長の事についての自慢話というか。のろけ話をしだしてしまったのだった。


「すみません。これ以上は付き合ってられないんで帰りますね」

「あら、ごめんごめん。ついやっちゃったね」

「相変わらずアルシェは1人語りの好きなメス竜じゃのぉ……」

「それはいいの。私のアイデンティティーだから。ねぇ、ハンター・サトナカ」

「はい。なんです?」

「君が戦った竜魔人プッタネスカの件なんだけど」

「ええ」

「あの後からとんでもない事実が発覚したの」

「えっそれは……」


 今まで笑っていたアルシェさんの表情が神妙に変わってしまった。俺に何を伝えようとしてくるのか……?


「あいつ。自分が死んだときの保険をかけていたみたいだわ。魔人化または魔獣化するポーション。別名『魔薬』。あれを密かに裏取引市場に。自分が死んだときに合わせてばらまいてしまっていたのよ……」

「なんだってっ!? じゃあ……」

「ええ、恐れていたことがこの街で起きてしまったわ。第9地区にある歓楽街で魔薬がらみの事件が起きてしまったの。死傷者は多数。駆けつけた衛兵達も魔人化した犯人に対して無力であえなく……」

「死んだのですか……」

「ええそうね。そこで君を含むネメシスはこの件に対して専門であると王家から認知されているから。王政府からネメシス宛に密命の形でこの事件の終息と鎮圧を断続的に行うようにと通達が入っているわ」

「でも、まともに戦ったのって俺とグリムとサンデーですよ? あとの先輩達は実戦経験がないですよ?」

「その点については君が心配するようなことじゃないわね。彼らはそれぞれの天賦の才を持っている強者達よ。私が唯一無二に信頼を置ける私兵達なんだから」


 王家の管轄する組織だけどあくまで自分の私兵だと言い張るアルシェさん。何を思ってそんな言葉が出たんだろ?


「それとグリムがなぜここに呼ばれたのか気になるでしょ?」

「うむ。今さっきの話でわしは察しがついたの」

「魔薬に詳しい学者だからでしょうか?」

「正解でーす。今日からグリムは私と共に管制の立場で活動してもらう事になりましたー」

「道中に届けられた手紙をみて驚きはしたものの。わしとご主人様の為に手厚くしてくれると聞けば利用する他なしと思ってな」

「それでひきうけたんですか……」


 取引条件が安易な理由な感じもするけれど。グリムは元々地に根付ける場所を求める為に放浪の旅にでるつもりだった。となると自然にそうなるわけなのか。


「分りました。また追ってルーノ職長を通じて連絡ください」

「うん。いいよ。それと最後にだけどね」

「はい。なんです?」

「君。仕事が続いていたでしょ。今日からしばらくの間。長期の有給休暇を取って欲しいかなって思うんだけど。どうかな? せっかくの日常生活を満喫できるいい機会だとおもうんだけどなー。ほら、お給料入っているんだし。せっかくなんだから君のモンスター達とのスキンシップも大事なわけだしさ」

「もし頂けるならありがたくそうさせて貰いたいですね」

「じゃあ決まり! 今日からハンター・サトナカはネメシスの業務を長期有給休暇することになります! 大丈夫。他の先輩達もとっくのさっきに全員。あっ、ルーノ職長だけは休み無しだけど」

「えっ」

「彼だけは王政府とかの調整役を担って貰っているからねー。なかなか休めないのさ」

「それだけ言って何もないのは可哀相かと」

「ううん。彼が望んでやっている事だからね。それに私の為に色々と頑張ってくれているからさ。それを否定してあげるのはダメな訳さ」

「うむ。大人の話じゃ。少年のお主には通じぬ道理がある。ここはひとまずバカンスでも行って貴重な休日を楽しむが良い。何か困った事があればわしに会いに来い。アルシェを通じて言ってくれればいつでもあってやるからの」

「分りました。では失礼します」


 こうして俺はつかの間のというか。長期の有給休暇を過ごすことになった。そして――


「ただいまー」

「お帰りご主人様!」

「おう帰ったよホワイエット」

「ぎゅーっ!」

「うんバカ力だ」


 俺より一足先にモンスター牧場に帰っていたホワイエットがギュッと力強く抱きしめきた。背骨が折れそうな音がするぞ。さらに奥から。


「ふむ。お帰りじゃご主人様」

「おうサビただいま。元気よくしてたか?」

「どうもこの場所は落ち着かんくてなぁ……ちょっと元気がでないのじゃよ」

「それは不味いな……」

「でも、グリム様があたしの事をよくしてくださってな。ほら」

「あっ、眼が治ってる……!」


 サビの眼が綺麗に治っていることに俺は驚愕する。どうやら俺の居ない間にグリムがサビの片目を治療していたようだ。後で感謝の言葉を言っておかないとな……。


「俺もグリムみたいにお前達の傷とか直せたらなー」


 そう。俺はモンスターテイマーなのだから。彼女達の体調管理をしっかりしてやらないといけない立場にある。


「大丈夫だよご主人様。今のままでもご主人様は私達の大切なご主人様なのだから」

「ホワイエット……お前……」

 

 おいおいここで泣かせてくんなって……嬉しいじゃないか……!


「ふん。いい気になるんじゃないよご主人! あんときの事。まだ私。根にもっているんだからね?」


 サンデーがひょこっと現れて不機嫌そうにツンとそっぽ向きながら俺に話しかけてきた。いやまぁ……そうだな……。


「ありがとうなサンデー。お前がいなかったらあの時の自分。死んでたかもしんないし」


 俺1人だと恐らく。あの魔人化したプッタネスカには勝てなかったかもしれん。グリムのくれたポーションや、サンデーの髪束から出来た『サンドラバレット』があったこその成果なのだから。


 俺の異世界生活は1人で何でも出来るような世界じゃない。こうしていろんな人達と関わり合って、助け合って1つの強さに繋がっていく。


 端から見て、ひとつひとつが地味に思えても。その人達にとってはそれが日常で自分の世界なんだなって気づかされたんだ。俺のチートもきっと。いろんな人達のつながりを得て成長していくタイプの能力なんだろうな。


「べっ、別にいいわよ。あの時ああしてないと私も死んでいたかもしれないし。それになんかムカついてたから」

「ん、というと?」

「人間が私達みたいになることよ。それだけは嫌よ。自分達のアイデンティティーを汚されているみたいで」

「アイデンティティーか……そうだな」


 モンスター達は自然と共に生きている。人間が自分達の都合で汚して言い訳じゃないのは分る。特にプッタネスカのような悪意に満ちた人達なら尚更か。


「とりあえず。ご主人。いまからご馳走いっぱいのバーベキュー大会しようぜ!」


 陰鬱な空気を誰もが嫌なのは満場一致だった。そうだな。給料も入っている事だし。ここは盛大に楽しくやろうかな!


「よし、だったら買い出しにいくぞ! 誰か手伝ってくれるやつはいるか!」

「「「おー!」」」


 どうやら全員で買いだしに行くことになりそうだな。せっかくだしサビにもこの街の事知ってもらえる機会になりそうだ。観光のついでに買い物をすることにしよう。


「あれ、そういえば……何か俺、忘れてるような……」


 何だろうな……。まぁ、今が楽しいしいいか。


 こうして俺は今日から始まる新しい日常生活を始めることになるのだった。んだけど……。


「ねぇ、カリト君……私とのデートの約束……。忘れて無くないかな……? 死にたいの?」

「――っ!? ……あっ、やばっ」


 うん、楽しいどころか。初っぱなから修羅場な日常が訪れてしまったようだな。


 俺の最初の休日は、凄く剣幕で怒るリリィ先輩と、ボルカノの街で楽しくかくれんぼしながらの逃走劇で幕を開けるのであった。ちなみに。


「リリィのお姉ちゃん怖い顔してたね」

「おっおう……もう終わってくれよぉ……」


 健気なホワイエットを巻き込んでしまっていたのだった。――Nextstory!!!!

第1章これにて終了です。次回の更新から第2章。新たな異世界生活の幕開けです。感想とかもっとこうして欲しいとか要望があれば是非コメントください。次回から始まる第2章から反映させてもらいます。

それとお知らせです。第2章の更新日までに第1章の全話の加筆修正作業をさせていただきます。誤字脱字や意図してなかった表現などの修正作業をさせていただきます。なるべく早めには終わらせて、第2章につなげていきたいと思います。もし宜しければ改めて読み返して頂けたらありがたいです。


 次回の更新予定日は少し間が空きます。9月14日です! 区切りがいいので14日です。4日ほどゆっくりと加筆修正作業と推敲作業させていただきます。それではまたお会いいたしましょう!

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