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99話:竜魔人プッタネスカ その2

『グルルゥ……!!』


 竜魔人プッタネスカがこちらを睨んで様子を伺ってきている。それに応じる形で俺らもにらみ返しながら各々の武器を持って構える。


「ご主人。変身してもいい?」

「いやまて。今回はその姿のままで戦ってみるんだ」

「どうして?」

「ちょっと考えというか試してみたいんだ」


 いきなり実戦で本番勝負に試したいっていうのもアレだけど。こういう時にしか出来そうにないと思って彼女に提案を持ちかけた。


「して、お主の考えている試し事とはなんじゃ?」

「なぁ、グリム。モンスターテイマーの力でサンデーを人間の状態のままで強く出来たりはしないのか?」


 そう聞くと彼女は無表情にコクリと頷き返してきた。


「うむ。それはわしのご主人様が得意とした戦い方じゃったの。あの方に身を委ねて戦えば不敗しらずの強者になれるからの」

「じゃあ、戦い方を教えてくれないか!」

「そうじゃの。今は戦いに集中しながらのほうがいいの。ほら来たぞ」

『グアァアアアアア!!!!』

「ご主人! 避けるんだ!」

「――ッ!!」


 サンデーの警告に合わせて俺はサイドステップで横へと移動する。密集陣形を解いたことで戦力が分散されたものの、相手のヘイトを散漫にできた効果は大きく。


「ちょっなんで俺に狙いをつけてくるんだよっ!?」

「お主があやつとよく戦ったからじゃ!」

「なんだよ! 後生未練たらたらな感じかあいつは!?」

「何を言っているかわしには分らぬが。お主のその動きでは間に合わんぞ!」

「くそっ!」


 現にステップ移動で距離を開けてはいるものの、間合いが約10メートルと迫ってきている。このままでは不味いと思った俺はすかさずニンジャランを使って、高速移動からのパルクールによる回避行動に移り難を逃れることにした。 


『グルルゥ……』


 突然のニンジャランからのパルクール移動に虚を突かれたようで、プッタネスカは俺を追跡するかで戸惑う姿を見せている。しかし俺の動きを凝視して立ち止まって身構えている所を見る限り。俺が地面に降り立つのを待っている感じがしてならない。


「やばいな。次のアクションはどうするか……」


 そう走りながらパルクールしつつ考えごとをしていると。遠くでサンデーが俺に大声で話しかけてくる声が聞こえてきた。


「ご主人! 今のうちだけ私があいつを惹きつけてやる! 直ぐに潜伏するんだ!」

「なるほど」


 見られているなら隠れれば良い。ナイスアイデアだ。その時に狙撃による一方的な攻撃に転じれば良いというわけか。さすがサンデーだ。普段はあんな感じの奴だけど。狩の時は俺の事をちゃんと見てくれていたんだな……。ありがとうよ……。


「って、なんかフラグみたいな感じになっちまったぜ」


 両手に銃を持ち直し、槓桿を改めて弾き直して排莢作業に入る。相手の弱点を知るために通常弾に交換したいからだ。


「お主!」

「ちょっグリム!? おま宙に浮かんでるのかぁっ!?」

「何を言っておる。わしは竜人族じゃぞ。これくらい出来て何を驚くというのじゃ」


 いや、あんたローブ越しから翼とか出してばたつかせたりしてないよねっ!? なにこの異世界!? この子限定で物理の法則が乱れちゃってるのかなっ!? 俺もなんかそのチート欲しいかもっ!?


「お主の考えている事を当ててやろう」


 そう言いながら壁を伝い走る俺に追従してくるグリム。得意げな表情浮かべちゃってるのかな……。


「ああ、そうだよ。どうして空飛べるんだって思ってたんだ」

「ほう、そうじゃったのか。これは外れてしまったの」

「えっ、違ったのか?」


 予想が互いにすれ違ってしまったようだ。ふむ。


「まぁ、あんたが何を言いたいかは兎も角。考えた限り。お前の飛行能力はその服にあるんだろ?」

「それ以外に何があるというのじゃ」

「魔法とか?」

「またお主のいう意味不明なマホーか。違うぞ。わしが身につけているのは竜衣と呼ばれているものじゃ。この竜衣には代々の長達が身につけてきた由緒あるタダシギなのじゃよ」

「要は一族の長老の正装なんだな。つまり」

「それ以上の言葉は受け付けん」

「あっ、はいすみません」


 何でわかるのかなぁ……。


「でっ、いまんところサンデーが1人であいつとかち合っているんだが。大丈夫かな……」

「信じるのじゃ。お主の信じる心があやつの糧となり強さとなって具現化する。今の弱音ですこし押されてきておるぞ」

「あっ、やばっ……」


 闘技場のリング内で。


「うあっ!? なんだなんだ!? 急に力が腑抜けちまったぜっ!?」

『グガアアアアア』


 プッタネスカが交互に振りかざす鋭い手のツメによる4連続の切り裂き攻撃がサンデーに襲い掛かる。それをスレスレで後ろに下がりながら避けていくサンデーの表情は恐怖一色にそまりつつあった。


「ご主人……! もう……だめかっもぉっ……!」

「くそっ俺としたことが……!」

「あやつの人間だった頃のポテンシャルがそのまま引き継がれて竜魔人プッタネスカに反映されておるの。あのままじゃとあやつは死ぬ」

「そんなことあってたまるか!!」

「おい待つのじゃ!」


 知るかよ! 俺の大事なモンスターが目の前で殺されて死ぬだなんて。そんなくだらない事で後悔するくらいなら。俺が代わりにやられても良い覚悟であいつと一緒に前に立って戦ってやる!!


「あの時から決めたんだよ。闘技場の戦いでなくした命を前に俺はただ殺すことしか出来なかったんだ!」


 すかさず俺は銃で必中できる距離でスライディングをしながら狙撃に転じる。狙うのは奴の視界だ……!


――いいかルーキー。近接戦闘の得意なモンスターの弱くするには、距離感を分かりずらくさせることだ。要は目を狙えよっていうわけだな。


「タケツカミさん。数回しかあったことがなかったですが。貴方の雑談話がここで役に立ちそうです……! すぅ……」


 タケツカミさんを思い浮かべ心の中で感謝しつつ、すかさず呼吸を整えて息を吸い込んで少し吐き出す。目を絞って集中する動作を素早くした後に、


「くらえ!!」


――ズダン!!!!


『グァッ!!!?』


 狙った箇所が少し誤差ってしまったが。目元付近に弾丸が当ったことで、血しぶきと共に、竜魔人プッタネスカが酷く動揺しながら悶絶する素振りを見せている。


「よし、いまだサンデー。お前の渾身の蹴りをあいつにぶつけてやれ!!」

「ありがとうご主人! いくぞ。はあぁあああああああ!!!!」


 サンデーの十八番技。『サンドフットワークストンプ』が4連撃で竜魔人プッタネスカに炸裂する。両足による大技はまず、相手に蹴りを入れた瞬間に片足で階段を上るように乗り掛かり、そして交互にストンプをした後に、フィニッシュ技としてサマーソルトキックを相手の顎にめがけてクリティカルを入れるという攻撃方法だ。

 これを4回連続で受けるということもあり、竜魔人プッタネスカは目眩の状態異常に陥っていた。


「何か今すぐ決定打になるような必殺技はないか!?」

「必殺技ってなにご主人! なんだか面白そうだな!」

「ああ、面白いもなにも。お前が早くご馳走にありつける唯一の手段だからな」

「なぬっ!?」

「というわけだ。おい後ろで傍観してるグリム」

「何を偉そうに呼ぶ」

「俺達で編み出せるコンボ。必殺技をあいつに繰り出したいんだ。なにか手段はないか?」

「あるにはあるぞ。ただ代償がおおきいがよいかの?」


 代償?


「まず。そこのモンスターの身体の一部をモンスターテイマーに差し出す事が重要じゃ」

「身体の一部っ!?」「げおっ!?」

「まぁ、2人して驚くのではない」

「いや驚くとかの次元越えちゃってるんですけどっ!?」

「まぁ、何でもいいんじゃ。要はそこのモンスターの髪の毛をそいつに与えてやれば良いのじゃからな」

「おい今すぐ髪の毛よこせ!」

「やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ!!!? うぁああああああん!!!! ご主人が私の髪の毛ごっそり奪ったぁ!!!!」

「お主……そこまで外道なやつだったのか……」

「あんたがそう言ったからやっただけだろぉっ!?」


 えっ、なにこの流れ。俺完全にモンスター虐待するヤベー奴に見られてるじゃんっ!?


「うぅ……」

「ご、ごめんな……」

「ふん! 嫌い!」

「うむ。自業自得じゃ」

「誰だよ俺に唆したクソ野郎は」

「実行したのはお主じゃからわしは無罪じゃ。まぁ、必要なモノは揃ったの。お主。その髪束を握り締めて念を込めるのじゃ。悪を打ち勝つ真っ赤な勇気の一撃をとな。サンドフットドラゴンは祖先を辿れば勇気と業火を奉る一族じゃったからの。そやつの髪束がお主に何らかの力を授けることになるかもしれん」

「うぅ……ご主人の人使いの荒さはあれだけど……。力になるならいいよ……」


 コロッと変わってツンデレしちゃてるっておいおい……。


「うむ。つながりを感じる……。わしの竜の眼が赤い炎のつながりを映し出しておるぞ……。いまじゃお主! 念じるのじゃ!!」

「…………!!」


――サンデー! 俺に、悪に打ち勝つ勇気の一撃を与えてくれ!!!!


 その瞬間。俺の手に握り締めていたサンデーの髪束が熱く燃えだして光り。やがてそれは1つの固形に纏まるように切り替わって、俺の手のひらの上で自分がよく知っている物に変化を遂げた。


「これは……弾薬……?」

「成功じゃの。しかも最上質な物と来た。うむ。お主とサンデーにあるつながりがそうさせたのじゃろうな」

「俺とサンデーのつながり……象徴……」


 手のひらにあるのは加色が施されたいつも使っているサイズと同じライフル弾薬だった。黒と赤のツートンカラーでメラメラと沸き立つ炎を表現したデザインが特徴的だ。


「それをお主のもつ銃に入れるのじゃ。ただしお主にも代償がつくぞ」

「なんだ?」

「銃が自壊する」

「それって……」


 俺の相棒が……。師匠から貰ったお下がりの大事な銃が……壊れるだって……?


「…………わかった。背に腹は代えられないな……やるぞ」


 いままでありがとうなお前。名前はないけれど。短い付き合いだったけど。俺をここまで支えてきてくれたこと。こころから感謝するぜ……!!


「いくぞプッタネスカこれが俺達の必殺技だ……! 名前はえと」

「サンデーとご主人あたっくだ!」

「おう、それはセンスなさ過ぎてさすがに恥ずかしくて無理だ」

「ぎゃああああ!!」

「ここまで来ると本当に仲がいいのぉ……」

「「んなわけない!!」からなっ!?」

『グガァアアアアアアアアアアアアアア!!』

「って、茶番してる場合じゃなかったな!? ああもう今回だけだぞサンデー! お前のネーミングでやってやる!」

「うん!」

「いくぞ! 必殺!! 『サンデーとご主人あたっくだ!』」


 うん、語呂悪すぎてしっくりこない。そう思いながら突進攻撃を仕掛けて間合いを詰めてきているプッタネスカにめがけて引き金を引いた。その瞬間。


――ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!


「うぉっ!?」

「ご主人!!」

 

 俺とサンデーで銃から襲い掛かってくる強烈な反動を前に、銃口から放たれている超極太のビーム咆撃を必死に受け止めて制御した。


『グァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!?』

「「いっけえええええええええええええええええええええ!!!!」」


 ビームは瞬く間にプッタネスカを焼き尽くしていき、そして次の瞬間に盛大な爆発と共に竜魔人プッタネスカの姿は跡形もなく消え去っていった。

 その直後。俺の手元にあった銃はバラバラに砕け散ってしまった。ありがとう……そして……!


「おっしゃあああああああああああああああ!!」


 俺は勝利に喜び、近くにいたサンデーを抱き寄せて盛大に喜びを分かち合ったのだった。


「あだだだだっ!!!? 頭がヒリヒリするからなでないでぇ!?」

「よくやった! おーよしよしよし!」


 あまりにもふざけすぎたので、その後突如怒って変身したサンデーに後ろから追いかけ回されて、あえなく噛みつかれてしまった。んで。


「お主……大丈夫かの……」


 アジトまでの帰路の道中。サンデーに頭を咥えられてプラーンとぶら下がっている俺を、サンデーの背中に乗りながら顔を覗かせて心配そうに声をかけてきたようなので。


「フガフガ」

「何を言っておるのかさっぱりじゃぞ……」


 何をいったかって? あぁ、うん。地獄だって言い返してやっただけだ。


 

次回の更新予定日は9月9日です。よろしくお願いします。次回で第1章エピローグとなります。ここまで読んで頂けたこと心から感謝いたします。※異世界ハンターで狩猟生活はまだ連載は続きます。

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