22.5 . (豪華)護送馬車にて
別れた後の彼らの様子。短いです。
愛する弟達の心配をよそに(あまり心配はされていないが) 彼等は今、豪華護送馬車で光州への旅を御満悦中だった。もちろん豪華食事付きである。
一刻ほど前、目の前で吊り橋が落ちたのを確認したあと、彼等は直ぐに降伏したのである。
孫卓言の首筋に剣を突きつけ、「お縄になってやる」と言った時には50ほどいた武官たった5名に、なってはいたが……。
当然、豪華馬車と食事の要求を、断れるはずもない。
生け捕りにして来いと命を受けたが、果たしてこれで良かったのだろうか。
馬車から漏れる男女な楽しげな笑い声や笛の音色に肩を落とす卓言であった。
一方、芸妓たちと食事を楽しんだ後、極悪犯はこれからの事を話し合っていた。
「卓言も王の事をしりませんでしたね」
死亡説も重病説もあり得ないと思っていても、それを否定する情報が入手できない。
流石の莉己も景雪の前では不安を見せた。少しでも早く光州に行き手掛かりを得たいと豪華馬車の旅にかけてみたのだ。
「王が亡くなれば黒旗が挙がる筈ですし」
「バクの奴が玉子売りの後でチンピラに因縁をつけられたらしい」
突然の話の転換に莉己は一瞬眉を挙げたが、そのまま話に乗った。景雪が今、その話をしたのには理由があると分かっていたからだ。
「あの足の怪我はその時に?」
「ああ。あいつは阿保だから素人にはなかなか手を出さん。苦戦している所に、通りがかった人に助けてもらったらしい。そいつらは、一瞬にしてチンピラをのした挙句、迷惑料を徴収したそうだ」
「まあ、当然でしょう」
「……。朱璃にそいつらの特長をきいたら《豪華てんらんの男前2人》だとさ」
「?」
「俺も琉晟から聞いた時は気にも留めなかったが、後で気が付いた。恐らくバクは《豪華絢爛》という言葉を《豪華テンラン》と間違えて覚えている。それでその2人組にぴったりだと 思い、語呂覚えした」
もっと早く気が付けばよかったと景雪は苦笑した。
「豪華テンラン、てんらん……。 ひてん、らんが
飛天と蘭雅。男前2人」
そう呟いた莉己は吹き出した。
「豪華天蘭!! 朱璃は本当に最高ですねっ。くすくすくすっ」
たった2人で50名もの部隊を全滅しかけた華麗な極悪犯を乗せている馬車の中から、聞こえる天使の鈴の音のような笑い声は、しばらく鳴り響くのであった。
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