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桜の木の下には

作者: 枸杞(くこ)

こんにちは


こんにちは


しまった


あら、どうしたの


いや……別に……なんでもないです


もしかして私と話したら面倒臭くなると思った?


……えぇまぁ正直に言うと。貴方のような方々は往々にして面倒ですから


ふふっ正直ね。言い訳の一つや二つすれば良かったのに


嘘は嫌いなんです


まぁ。嘘と言い訳は違うものよでもますます気に入ったわ


そうですかでは


あら待ってよ誰かと話すなんて久し振りなの。少しおしゃべりしてくれない?ちょっとだけだから


本当に少しだけならいいですけど……


嬉しいありがとうそれじゃあ質問させて


どうぞ


あなた中学生よね。学校は楽しい?私学校に行ったことがないの


つまらないものですよ学校なんて


あらそうなのてっきり楽しくて仕方がないものだと思ってたわ


勉強を頭に詰め込まれて楽しむ暇なんてありませんよ


ふふ一度私も頭に目一杯勉強を頭に詰め込まれてみたいわ


変わってますね


知らないことを知りたいだけよ


さらに夢を壊すようで悪いですが屋上には入れませんよ


ふふっそれは知ってるわニュースで言ってたもの


そうですか


部活は?何かしてるの


してたらこんな時間に下校してませんよ


それもそうねあなたは毎日同じ時間にここを歩いてる


なぜそれを


私毎日ここにいるのよ気づかなかった?


全く


今まで隠れてたもの気づかないのも無理ないわ


なぜ、今日は隠れてないんです?


まぁいいじゃないおしゃべりしたくなったのよ


なるほど。そんな日もあるかもしれないですね


そうよ。そうだあなた上を向いて歩きなさいよ


上を?


そう。いつも下を向いて歩いてるじゃない?ここは桜並木なのに勿体無い


毎年見てますし、全く桜を見ていない訳ではないですよそれに昨日の雨で大分散ってしまいましたよ


毎回同じ物なんてないわそれに散りかけの桜も乙なものじゃない


そういうものですか


そういうもの


……上を向くことにします


良かった。上と下では見えるものが違うのよ


わかりました


ふふっ素直なことは良いことよ


……馬鹿にしてます?


してないわよふふあーとっても楽しかった。おしゃべりしてくれてありがとうはいこれ


指輪、ですか?


そうささやかなお礼


少し喋っただけでお礼なんて受け取れません。それにここに書いてあるの貴方の名前じゃ……


やだ恥ずかしい見ないでよ


すみません。でも受け取れません。大事な物でしょう


だからこそよ受け取って


いや、でも…………わかりました。受け取っておきます


ありがとう長いこと話してしまったわねとっても楽しかったわ


僕もです


あなたも?嬉しいわね


……また会えますか


……そうねいつかまた会えるかもしれない


……さようなら


さようなら



僕はいつもの時間いつもの道を上を向いて登校した。枝だけの桜……乙なのかもしれない。下校ももちろん上を向いて。特に朝と変わった様子は……どうしたのだろう桜の木の周りに沢山の野次馬そして警察官。

「どうかしたんですか?」

野次馬と少し離れた所に立ち暇を持て余してそうで人の良さそうな警察官に話し掛けた。

「いやぁね実はここで人の骨がみつかったんだよ」

息を飲んだ。

「そうなんですか」

「この前大雨が降っただろう?その時に土がはげて出てきちゃったみたいなんだよ。君ここ通学路?毎日通ってるのかい?」

「ええ、まぁ」

「それじゃあさ気づいたこととか無い?不審な人物がうろうろしてたとか。ごめんね一応聞いとかなくちゃいけないんだよ」

「何も気づきませんでした」

「そうかいそうならいいんだよ悪かったね」

「いえ、お役に立てずにすみません」

そのまま歩いた。何も知らない振りをして。


彼女はきっと見つかることを望んでいない。



最後まで読んで頂きありがとうございました。季節感もへったくれもないですね。一、二年前の春に書いて結構気に入ったものを唐突に書き直したいなぁと思って書きました。大分前の時より書き足しました。かの有名な「桜の木の下には死体が埋まっている」から連想しました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後の、主人公の彼女に対する解釈。 主人公が冷静過ぎるような気がしましたが、最初から彼女の正体に気づいていて、骨となった実体も目にしていたのだから、警察に明かされても微塵も揺るがなかった…
[一言] ずっと大切にしていた指輪を、自分の身元が書いてあるものだから、相手を庇って、誰かに骨が見つかる前に渡してしまう。それで、彼女はきっと見つかることを望んでいない。 面白い作品でした。
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