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なでしこさんに恋している

前回のあらすじ!


 宗太郎となでしこの生活が始まる。

 宗太郎は渚となでしこに勇気を振り絞って学校に行く約束をする。

 でも二人は口をそろえるように「無理しないで」と心配する。



 朝起きて、太陽の光が僕の目をくすぶり目覚める。

 窓の側に置いてある真っ赤な大きな花のアマリリスは相変わらず美しく咲き誇っている。

 今日は渚ちゃんにもなでしこさんにも学校に行く約束をしてしまった。

 僕は学校に行く事にすごく後込みしている。


 台所の方から家事の音がしてなでしこさんはもう起きていて、朝食の準備をしている。


「おはよう。なでしこさん」


 するとなでしこさんは本当に朗らかな笑顔で僕を見て「おはようございます宗太郎様」と挨拶をくれる。


 学校に行く事に後込みしている僕の気持ちが少しだけ払拭された感じがした。


「そろそろ朝食が出来ますので、録画した美少女御子奈々のアニメでもごらんになりながらお待ちください」


 そう言って台所からリモコンでテレビを操作して、美少女御子奈々のアニメが映し出された。


 本当に至れり尽くせりだ。


 美少女御子奈々のアニメを見て思ったが、なでしこさんこの美少女御子奈々に少し似ていないかと心なしかそう感じてしまう。

 もしかしたらなでしこさんはお母さんのプレゼントと聞いたが、そのようになでしこさんを設計したのかと変な想像をしてしまい、台所で作業しているなでしこさんを改めて見ると、確かに少し似ているが、そっくりではない。

 もしそのように設計されてなでしこさんが作られたら、何かなでしこさんがかわいそうな気がする。


 アニメが終わった丁度その時、なでしこさんの料理が出来上がり、テーブルに運んでくる。


「宗太郎様出来上がりましたよ」


「うん」


「どうしたのですか?私の事を見つめちゃって」


「なでしこさんっていつ・・・その・・」『作られた』とか言うと何か、なでしこさんに失礼な感じがして、僕は視線を反らしてしまう。


 するとなでしこさんは僕の向かい側に座って、頬杖をつきながら僕を見つめて話す。


「私は丁度十年前に開発されたのですよ。お年はこう見えても、宗太郎様と同じ年ですね」


「もしかして僕の為に作られたの?」


 その質問をした時に、僕はなでしこさんを上目遣いで見つめて、ドキドキしてしまい、自分でも思いきった質問をしてしまった事に気がつく。


「それは違いますよ。私は宗太郎様のお母様に依頼を受けて、お手伝い兼お友達として派遣されたのです」


 それを聞いて僕はほっとした。


「一つ言っておきますけれども、私はアンドロイドですけれども、作られたときは赤ん坊と同じように何も知らないのです。だからその為には学習が必要です。だからこうして私は人間の女子高生として学校に通って色々と学んでいるのです。だからアンドロイドである私も人間とあまり変わりがないと言った方が良いでしょう」


「そうなんだ」


 またほっとした気持ちになり、安心してしまう。


「でも、私がアンドロイドと言う事は他言無用です。まだ私のような存在は世間に認められていませんので」


「認められていないって」


「今は私を私達を開発した事業はまだ、秘密裏に様々な所で人間にふんして動いています」


「もし、なでしこさんがアンドロイドだって世間にばれたら?」


 恐ろしい質問をした時に、呼び鈴が鳴った。


「あら、もしかしたら渚さんが迎えに来たのかもしれませんね」


 と立ち上がり、玄関へと行くなでしこさん。


 もし、なでしこさんがアンドロイドとして、世間に知られたら。

 それにアンドロイドはなでしこさんだけじゃない。

 なでしこさんは言った。『私達を開発した』って。


「おはよう宗ちゃん」


 急に大きな声をかけられ僕はびっくりして、


「あっあっ、おはよう」


「どうしたの?何か顔が真っ青だったけれども」


「ううん。別に何でもないよ」


「学校行くんでしょ」


 渚ちゃんの言葉に僕は後込みしてしまう。


「無理して行かなくて良いと思うよ」


 渚ちゃんの言葉に甘えようとしたが、僕は改めて、正面で頬杖をついて僕を見つめるなでしこさんを見た。

 なでしこさんはにっこりと笑って僕を見つめている。


「行くよ」


 と立ち上がる。


「その前に朝食を食べてからにしてくださいね」


 なでしこさんに言われて、僕はなでしこさんが作った料理を詰め込むように口に入れて食べた。


「ちょっと宗ちゃん。焦らないで」


 渚ちゃんに心配されたが「大丈夫」と言った。


 食事を無理矢理詰め込んだものだから、むせかえって咳きこんでしまい、なでしこさんに「宗太郎様」と言って牛乳を差し出す。

 僕は一気に飲み干して、「じゃあ行こう」


 ランドセルを背負い、部屋で準備する。

 なでしこさんと渚ちゃんが玄関で待っている。


「お待たせ」


 と言って、玄関で靴に履き替えた瞬間、外に出る事に恐ろしく後込みしてしまった。


「宗ちゃん。大丈夫なの?呼吸がまともじゃないよ」


 渚ちゃんが僕の背中をさすって落ち着くようにする。


「宗太郎様深呼吸をしてください」


 僕はなでしこの言われた通り、深呼吸をして少しだけ気持ちが落ち着いた。

 そして僕がその扉のドアノブをひねって開けようとすると、すごく恐ろしい気持ちになり、手がふるえている。

 それでも勇気を振り絞ってドアを開けようとすると、なでしこさんが僕のその手に優しく手を添えて、真摯に僕を見つめていた。

 その目は僕を励ましているように感じて、僕に一筋の勇気がわき起こり、後込みした気持ちを吹き飛ばすかのように思い切って玄関の扉を開けた。

 勢い余ってつんのめり、何とか外に出ることが出来た。

 外に出て穏やかな陽気に包まれて、すごく気持ちが良かった。

 そう言えば僕は外に出るのは何ヶ月ぶりくらいだろう?

 

 次は学校に行くのだと思って歩こうとするとなでしこさんが、「そこまでです。宗太郎様」


 何がそこまでなのか、なでしこさんのちょっといかめしい顔をきょとんとした感じで僕は見つめる。


「宗太郎様、今日はこの辺までにしましょう」


 となでしこさんは僕を包み込むように抱きしめる。


「今の宗太郎様はとても体力的にも精神的にも疲弊した状態です。その調子では学校にはちょっと無理があります。だから宗太郎様、今日はおうちで宗太郎様が出来る事をしていてください」


「いや学校に・・・」


「いいえ、今日はこうして外に一歩踏み出しただけで良いのです」


「僕は大丈夫だよ」


 と大丈夫と言わんばかりにその体を思い切り動かすと、めまいと吐き気がして、先ほど慌てて食べたなでしこさんの料理を吐き出してしまった。

 なでしこさんの言う通りだ。

 僕は情けなくなって、膝を突いて涙を流していた。

 

 心配そうに渚ちゃんが僕を見下ろしている。

 そんな目で見られるのは僕は正直辛かった。


「宗太郎様、ゆっくりと前に進んでいきましょう。焦らずにゆっくりと・・・」


 その後、渚ちゃんは僕を心配して僕の側に寄り添おうと言っていたが、僕はそんな渚ちゃんの優しさが辛くて、「ほっといてくれよ」と突っぱねてしまった。


 

 ******   ******   





 誰もいない部屋、ベットに横たわり、何もやる気が起きない。

 僕は長く引きこもってしまった事で体力的にも精神的にも疲弊してしまった。

 本当になでしこさんの言う通りだ。

 この調子で学校に行ったら、周りからいじめの的となっている僕をもみくちゃにして、また元の木阿弥に戻ってしまっていたのかもしれない。

 それよりも渚ちゃんが優しくしてくれたのに、僕はあんな風に突っぱねてしまった。

 今更ながらにそう言ってしまった事に僕はひどく後悔してしまう。

 でもこうしてぼんやりとベットに入ると、心も体も少しずつ回復してくる。

 しばらくして、起き上がり、窓に飾られてある一輪の真っ赤なアマリリスの水を取り替える。

 そこでなでしこさんの言葉が脳裏によぎる。

 

『焦らず、ゆっくり』


 と。


 僕は今朝本気で学校に行こうとしたが、もしかしたらなでしこさんは、とりあえず外に出られる事だけに焦点を置いていたのかもしれない。

 一番僕の事を理解しているのはなでしこさんかもしれない。

 思えば、今朝僕は外に出るだけでも大変だった。

 なでしこさんはそんな僕を。


 じっと水差しに生けてあるアマリリスをじっと見つめて、なでしこさんを思う。

 なでしこさんはアマリリスのように美しく、心も清らかだ。

 僕はそんななでしこさんの事を・・・。

 何だろう。この気持ち。

 なでしこさんを思うと心臓がドキドキする。


 なでしこさんは今学校にいるけれど、何を学んでいるのだろう?

 それに学校には友達が入るのか?

 ちゃんとエネルギーであるお水をちゃんと飲んでいるのだろうか?


 頭がなでしこさんでいっぱいだ。

 もしかしてこれがドラマやアニメである異性を好きになる気持ち?

 でもなでしこさんはロボットだ。

 でもそんなの関係ない。


「関係ないよ」


 人知れず呟き、アマリリスをじっと見つめる。

 なでしこさんは僕をお手伝い兼お友達としてお母さんに依頼されて派遣されたロボットだと聞いた。

 お手伝いはともかく、お友達と言うと何か気持ちが切なくなる。



 ******   ****** 



 目を覚ますと僕はベットの上で眠っていた。

 どうやら僕はいつの間にか眠ってしまってベットに横たわったようだ。

 耳を澄ますと家事の音が聞こえる。

 その瞬間になでしこさんが帰ってきたのだと思って台所に行く。


「お帰りなさいなでしこさん」


 と言ったら、エプロンに身を包んだ渚ちゃんだった。

 正直僕はがっかりする。


 すると渚ちゃんが不快な顔をして、


「なでしこさんじゃなくて悪かったね」


「そんな事ないよ・・・って言うか、渚ちゃん学校は?」


「今日は早退してきた」


「早退って、もしかして僕の為に?」


「そ、そ、そんな訳ないでしょ。なでしこさんがお昼作ってないから、わ、わ、私が・・・そ、そ、その作りに来て上げたのよ」


「僕の為に・・・」


「だから宗ちゃんの為じゃなーい」


 持っているお玉を振り上げて、投げようとしている渚ちゃんに、そんな物を投げられ当てられたら痛いので「分かった僕の為じゃない」と撤回した。


「とにかくパスタ作って上げるから、それまで待っていてよ」


 渚ちゃんは明らかに僕のためだ。

 でも渚ちゃんはどうして大切な学校を早退してまで、こんなに僕に尽くしてくれるのだろうか?

 気持ちは嬉しいが何か申し訳ない気持ちになる。


 何となく時計を見ると、午前十二時十分前だ。


 そんな時である、玄関からドアが開く音がして、確かめてみると、なでしこさんだった。

 僕はそんななでしこさんを見て空を飛ぶほどの気持ちになり、「お帰りなさいなでしこさん」


「ただいま、今日はちょっと学校を早退して来ました」


「僕の為に」


「まあ、そうなりますかね」


 嬉しい気持ちに染まったその時、何か背後から恐ろしい気配が来ているような気がして、恐る恐る背後を見ると、不快で威圧的な視線を向けている渚ちゃんだった。

 そんな目で見られると僕の心は凍り付いてしまった。


「あら、渚様、学校は?」


「早退してきたのよ。宗ちゃんのご飯用意してなかったでしょ」


 堰を切って怒り出す渚ちゃん。


 きょとんと黙り込むなでしこさん。


 そんななでしこさんとご立腹の渚ちゃんの間で、僕はどうすれば良いのか分からなかった。


 穏やかに微笑んでいるが、渚ちゃんの気持ちに申し訳ないように、視線を俯かせて黙り込んでいるなでしこさん。

 そのなでしこさんを威圧的な視線を向けている渚ちゃん。


 すると渚ちゃんはその瞳から涙を流してしまい、持っているお玉を床に叩きつけて、ランドセルを持って脱兎のごとく、僕となでしこさんを振り切って、出て行ってしまった。


 渚ちゃんの怒りは嵐が起こったかのような心境だ。

 その嵐の後は僕に後ろめたい気持ちを残して去っていった。

 なでしこさんもその嵐にその目を見ると何か、申し訳ない気持ちが垣間見えた感じだった。

 その証拠になでしこさんは言った。


「私は帰ってこない方が良かったのでしょうか」


 と。

 僕はそんな後ろめたい気持ちの表情をしているなでしこさんがいたたまれなくなって、僕は「そんな事ないよ。みんな僕が悪いんだから」


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